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転生者

「転生管理人:フィオラム」の続きです!


〜前話までのあらすじ〜

人々の転生を司る「転生管理人」で日本を担当しているのフィオラムは気分で人の転生先を決めるとんでもない女神だった!

そんな彼女の元に、事故死した江坂智弘がやってくる。

だが、フィオラムはその彼の態度が気に食わなかった……!

 フィオラムはペンを取り出し転生管理記に智弘の転生先を書き始める。


“転生先:ゴブリン

 名前:特になし

 Lv:3

 スキル:なし

 Lvスキル:

 経歴:人を3人喰い殺しており、駆除対象に指定されている。

 転生場所:そこら辺の森の中”


 こんなもんでいいか、とフィオラムは思った。

 Lvスキルの欄は空白にしたが、LvスキルはLvが高くならないと解放されない。

 どうせ早く死ぬだろと思っているため、書く必要はないと判断したのだ。

 その気になれば後から書き足すこともできる。


 そこら辺の森の中というのはどこかの森にランダムに、という意味である。


「はい、君の転生先が決まったよ」とフィオラムは智弘にわざとらしく笑いながら管理記の中身を見せる。


 智弘はまじまじとそれを見つめ、すぐに口を開いた。

「……は?転生先がゴブリン!?どういうことだよこれ!さらに人を3人喰い殺し駆除対象!?ふざけるなよ!」と智弘は怒りを露わにし、唾を飛ばすほどの勢いで捲し立てようとしてくる。


 フィオラムはそれを無視し、わざとらしい笑顔で「いってらっしゃい!」と言い。指を鳴らした。


 その瞬間彼女の眼前から智弘が消えた。

 そしてたった今転送されたばかりの彼の滑稽な怒った顔を思い出し1人で笑い転げるのだった。


     ◇      ◇      ◇      ◇


 ——木漏れ日が眩しい。智弘は瞼を開け、ゆっくりと体を起こす。そして自分の姿を確認した。

 緑色の皮膚、細い手足、浮いた肋骨、それと対照的に中年の男性のように張り出た腹をした貧弱な体躯がそこにあった。


 なんなんだよ、これ!と声に出そうとしたが出て来たのは「ヴヴアァ!」と猛獣のような濁った叫び声だった。


 涙が頬を伝う。あそこでスマホを弄りながら歩いていなければ……と自分を責めようとしたが、ある人物に対しての憎しみでその悲しみは塗り替えられた。


 あの女だ。あの転生管理人とか言ったフィオラムという女。あいつが転生先をゴブリンなんかにしなければこんな事は起きなかった。


 そうフィオラムに憎しみを抱いていた時、「こいつか、3人喰ったゴブリンってのは」と若い男の声が聞こえた。


 その声にギョッとして振り返ると3人の人間が立っていた。各々剣やら杖やらを持ち武装している。


「ホントにこいつなの?なんか弱そうなんですけどぉ」と杖を持った女が耳障りな甲高い声を上げる。


「バカ言うな、報告書通りだろう」と眼鏡をかけ、本を片手に持った男が返す。


「まあ殺るか」とリーダー格の剣と盾を持った男が言った。


 智弘は慌てて辺りを見回した。地面に太い枝が落ちている。

 それを拾い上げ、構えた。


「こいつまさか私らと戦うつもりらしいですよぉ、ウケる〜」と杖を持った女が笑う。


 その時、リーダー格の男が斬りかかってきた。鈍い鉄色の剣が空を切る。


 智弘は間一髪でそれを避け太い枝でリーダーの手に一撃を喰らわせる。

 太い枝に衝撃が走り、ささくれが少し智弘の手に刺さる。


 だが、その一撃は効いたようだ。「ぐあっ」と声を出しながらリーダーは手を押さえ蹲った。その際、剣が地面にカランと音をたてて落ちるのを智弘は見逃さなかった。


「大丈夫!?」と杖を持った女がリーダーに駆け寄る。


 智弘はその女に持っていた棒を投げつけ、落ちていた剣を拾う。


 投げた棒は女の顔に直撃し、女の額からは血が流れる。女は「痛っ!」と声をあげ顔を抑えている。


 その隙を見逃さず、智弘は剣を女に向け、振り下ろす。

「ルカっ」と眼鏡の男が叫ぶ声が響いた。


 ザクりという感触が智弘の手に伝わる。

 嫌な感触だ。

 手の先を見れば、ルカと呼ばれた女の顔に剣が食い込んでいる。


 智弘は剣を女の顔から抜いた。その途端、顔の裂け目から血が迸る。

 返り血がリーダーと智弘を紅く染め上げた。


「貴様ァ!」とリーダーが激昂して殴りかかってきた。

 怒りに任せた粗雑な行動だ。

 智弘は剣を振り、その腕を落とした。その後切り返しでリーダーの胸を大きく抉った。


 大量の鮮血を辺りに飛び散らしながらリーダーは倒れた。


 残った眼鏡の男は本を地面に落とし震えている。

 智弘はその男に近寄り、剣を胸に突き立てた。


 眼鏡の男ははっ、としたような顔をした後ゆっくりと崩れ落ちた。


 智弘は自分の手を見た。謎の達成感があった。


 今まで喧嘩すらしたことがなかった。だが、目の前に転がっているのは自らの手で殺めた3つの死体だ。


 これは所詮ゲームのような世界なのだ。人を殺したところが何だ?ゲームの中ならいいじゃないか。


 そうやって智弘は自分に無理矢理言い聞かせる。


 そんな3人の亡骸と紅く染まった智弘を木漏れ日が優しく照らしていた。

面白かったら評価お願いします!

次話は明日公開します!

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