5 ひとときの休憩、新たな仲間
今回は雑談回です。
4人の楽しいお喋りにお付き合いください。
「########」
……ん?
「#我!」
……
「連我!!!」
連我は飛び起きた。
どうやら昼過ぎに差し掛かったようで、
午前中の濃かった霧もすっかりなくなっていた。
「…―そういえば、あの化け物は!?」
洞窟の方を見たが、そこには血溜まりしかなかった。
巨木は再び療大が治してくれたようで、
また空高く伸びている。
「…わかんない。僕もあのあと治癒を使いすぎたらしく気絶しちゃってて起きたらいなくなってて。
けど流石にあの重症でまた襲ってくることはないと思う。僕ら2人がここで倒れてて死んでないのがその証拠だよ。」
…たしかにそうだ。なら、依頼は達成と言えるか。
「…そういえば、あの少女は!?」
「それなら、あそこの岩に」
そう言って療大は指差す。
その先を見ると、先程茂みがあった場所、
あの隠れながら作戦をねった場所にある
平たい岩に少女が仰向けで寝かされており、
療大が羽織っていたマントを布団のようにかけてあった。
「見たところ死にはしない程度に回復したものの疲労もあってか気絶しててね。
気絶者2人じゃどうしようもないんで君を起こしたってわけ。」
「―わかった。一度森を出て村に戻ろうか。」
そう言いながら立ち上がる―と、よろけてしまった。
「大丈夫?あいにく回復はこれ以上使えなくて。
もう少し休憩してからのほうが良いんじゃ…」
「いや、心配ありがと、大丈夫。
それより多分暴れ散らかして音がなったし村の人達に心配かけないように早く戻ろう。」
―思えば、その場その場切り抜けるので精一杯だったけどこの傷ならあれが最善の行動だったのかもしれない。
もし判断が遅れていたら今頃―…
考えるだけで恐ろしい。
「外傷のない僕が彼女を背負って行くよ。
ゆっくり出よう。」
そう言って療大が歩き出す。
…まあとにかく、今こうやって3人とも生きてるんだから良いか。
深呼吸をした後、連我もゆっくりとあとをついて歩き出した。
森を出ると、村の人達が皆集まっていた。
その中に、見覚えある人が走ってくる。
「お前さん、大丈夫か!?
森から木々が倒れる音がしてきた時お前さんをえらいことに巻き込んじまったと…
んで、音が止んだのに戻ってこんから、今こうして心配して集まってたんだ」
「切信さん!大丈夫、このとうり生きてる。」
「けどな…そんなにボロボロだと…」
「とりあえず、もう一度お邪魔させてもらってもいいか…?
ちょっと落ち着きたくて…」
「じゃあ、一度俺の家に行こうか」
―が、ここからが大変だった。
「まさか、倒してくれたのか!?ありがとう!ありがとう!」
「これでこの村も町と繋がりがもてるわい」
「よかったらこれ、貰っていってくれ!」
「ほら、これも!」
…村の人達が、色々と物を差し出してくるのだ。
気持ちはうれしいのだが、流石に受け取れない―…
「…ちょっとまってくれ。俺はただ自分の生活のためにやっただけだ。しかもそんな勇者みたいに…」
「僕も元々依頼ですし!受け取れませんよ!」
そんな様子を見て、切信は振り返って笑いながら言う。
「な?俺の言った通り衣食住困らねぇだろ?
まあなんだ、勇者気分味わって受け取っておけ。
俺からだってなんかあげたいんだ。」
―結局、疲労であんまり色々持ち運べない為断ろうとしたが明日届けに行くと言われてしまった。
流石に切信さんの家を占領できないので、
宿屋を再度借りて一泊させてもらう、という話でまとまったのだった。
…そして帰り際部屋を取るため寄った宿屋は、無料だった。
「帰ってきて早々あんな嵐みたいになってすまなかったな。ま、とりあえずお前さん達が生きて帰ってきてくれてよかった!」
そう言いながら、切信が机にお茶を置いていく。
少女はまだ目を覚まさないためまたしても切信さんのベットを借りて寝かせ、
連我、療大、切信で化け物だの今後についてだの
話しておこうということになった。
療大の自己紹介と少女を連れてきた流れを説明していると、
「あー、そうおやお前さん達、つかぬことを聞くが
神木をいじったりしたか?」
唐突に切信が切り出した。
「俺は見てないんだがな。
早めに森の前に着いた人達が森にある1番の大木の御神木が倒れて起きてまた倒れ…って現象が起きてるのを見たって騒いでてよ。
もしかするとお前さんら…」
「…あっ」
背筋が凍った。
咄嗟に連我と療大は顔を見合わせる。
切信に聞こえないようにヒソヒソと話す。
「化け物が倒したやつ?」
「だね。」
「で、斧突き刺して洞窟から出るために使ったやつ?」
「…だね。」
「で、その後トドメさすのにもう1回へし折って
その結果化け物の血で血まみれにしたやつ?」
「…………だね…」
「化け物がやったことになったり? 」
「…そうしよっか。」
「あー、そそそそれは化け物がへし折ってて療大が治してくれてまして…」
「そ、そうですね僕が2回ほど治しました!!」
「そうだったのか!そりゃあ助かったぜ!」
「うんうんうんうんうん!!」
な、なんとかセーフ。
「あ、これも聞いとこう。
御神木の横の食糧庫の洞窟は無事だったか?」
「「ヒイッッッ!!」 」
再び背筋が凍った。
再度ススススと身を寄せ合い、ヒソヒソ声で話す。
「俺らが崩したとこ…」
「あー…化け物がやったことに…」
「…だな…」
「あ、それも残念ながら化け
「それは2人が壊してたよー」
―2人は凍りついた。
まるで本当に凍っているかのように
少しずつ振り向く。
発言したのは、目が覚め起き上がり、ベットの上で目をこすっている少女だった。
「あのー、切信さん、その…」
「「すいませんでしたッッ!!」」
「まぁ、俺は全然いいよ。
そもそももう数ヶ月化け物のせいで使えてないしな。
中の食料も腐ってらあ。
それに化け物が住処にしてる時点で獣臭で使えたもんじゃねぇよ。」
「ただ村長とかには言わないことをお勧めするぜ。
なんてったってあそこがお気に入りスポットだって前に言ってたからな。
あの涼しさとこの村は食料がこんなにあるって優越感に浸るのが好きなんだとさ。」
「うい…」
「あら、言っちゃダメだった系かー…」
今度はいつの間にかベットから出て真後ろに来ていた少女が、テーブルの横に回り込みながら言う。
「ま、結果許しを貰えたからいいよ。
ところで君の名前は?」
療大が聞く。
「私は柔音。3人の名前は…
冒険者ってのは聞こえたんですが」
おっと。急に敬語になった。
なんとなーく話し合いが始まる気がするぞ。
「俺は連我。記憶ないから名字は知らん。とりあえずよろしく」
「僕は療大っていいます、よろしく」
「俺は切信、この村で木こりやってる。よろしくな」
「連我さんと療大さんが冒険者なんですか。
あの…よければ連れて行ってくれませんか」
「…へ…?」
「私…その…冒険、してみたいんです!
それに2人の戦闘かっこよかったから…」
「待て待て待て!!俺はもうあんなんやりたくないぞ!!
今でもまだちょっと痛いし!!怖かったし!!」
「僕もあんなのはもうごめんだよ…
人食ってたし。逆にあれ見てよく冒険者になろうとか言えるね…」
「あ、あれ人食べてないですよ。
あの人は私が吊るされた時既に首なかったですし。
それにあの牛の人が食べてたのは洞窟の中の腐った肉です」
「そ、そういう問題じゃなくてだな…」
―この子、大丈夫か…?
「あとそれとどちらにせよ君の家族が心配するだろうから無理だよ…」
「私は両親いないので…ここに来たのも彷徨っていたところを拾われてこの村の荷物運び任されて言われたルート通ってたら牛の人に捕まってこれですし」
「…なんとなく、君に度胸がついた理由がわかった気がするよ…なんかなかなか過酷だったんだね…」
―親中お察しします。
「なので!!私を連れて行ってくれませんかっ!!」
「…数日は宿屋に泊まって物資整えるよ?」
「全然大丈夫です!」
「…言っとくけどあそこまでの戦闘はあんまりないよ?」
「承知済みです!」
「ま、いいんじゃないか?仲間と話し相手は多いほうがいい、ってな!」
「連我…ま、わかった。どっちみち断ったらこの子をどこに置いてくんだって話になるしね」
「ありがとうございますっ!!」
「とりあえず、宿屋行くか…!もう夕方だしな!」
「おーっ!」
連我、療大、そして柔音は切信にお礼をした後歩き始める。
午後5時。とても目まぐるしい1日だった。
残された部屋で、切信は1人嘆いた。
「俺も冒険者やってりゃあんな可愛い子と仲間に…
くそうっ!」
今回書いてたら長くなっちゃいました(´・ω・`)
内容薄いしなんかごめんなさい、、
次回からはまた冒険が始まります。
よければブックマーク等してお待ちいただけるとありがたいです。