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第一話 異世界転生したらやることは婚約破棄だよな!?

俺は平凡な日本の男子高校生、永谷慎司……だった。

なのになぜ、癖のある明るい栗色の髪で、ごわごわした布の服を着て、膝上まであるロングブーツをはいて、ヨーロッパ系の男女がたむろする部屋にいるのだろうか?

混乱する頭を押さえ、これまでのことを思い出してみた。


俺は両親、中学生の妹の穂香とともに、北関東にある某所に観光に行った。

まず訪れたのは、古いヨーロッパの城をそっくり移築したという城だ。

穂香は近くで売っている地方限定のソフトクリームが食べたいと言い、あまり興味なさそうだった。

俺は最初あまり興味なかったが、ゲームに出てくるような城の内部が意外と楽しく、あちこち見て回っていたら、いつの間にか家族とはぐれてしまった。

まあ建物の中だからどうってことないだろうと好き勝手に歩き回り、ある部屋に入った。

背もたれがある椅子がぽつんと置いてあったので、一休みしようと腰かけた。

目を閉じると、まるで当時の人々のざわめきが聞こえるような気がした……。


目を開いたら、思わず叫び出しそうになった。

さっきまで誰もいなかったのに、いきなり大勢の人が出現していたのだ。

それも、全員外国人で、服装はなんかドレスとか、何と呼ぶのかわからないけど絵本の挿絵に出てくる昔のヨーロッパの王子みたいなのとか、そんなのばかりだ。

最初に思ったのは(外国人のコスプレイベントに紛れ込んでしまったのか!?)だった。

うっかり眠り込んでしまい、その間にイベントが始まって、人が集まってきたのだろうと。

慌てて立ち上がると、目の前にいたお姫様っぽい服装の子が話しかけてきた。


「ルドルフ様、どうなさいましたの?」


ルドルフ様って、俺のことか?

俺、コスプレイベントの参加者だと思われてるのか?

いや服装見ればわかるだろ。こんな普段着の……ってあれ!?

俺はシャツにデニム、上にパーカーを羽織り、スニーカーを履いていたはずだ。

なのに何で革のブーツを履いて、なんかごわごわした布の服を着て、ごつい革のベルトを締めているんだ? 椅子で寝ている隙に着替えさせられたのか? 気付かないなんてありえるか?


「いや、俺は……」


ルドルフ・フォン・マルデブルク。

唐突にその名前が頭に浮かんだ。

俺はこの城の持ち主のオットー・フォン・マルデブルクの長男だ。

俺は永谷慎司だ。なのに、頭の中にルドルフの記憶がある。

……いや、逆で、ルドルフが永谷慎司の夢を見ていたのではないか?

そんなはずはない、父親の運転する車でここに来て、歴史好きの母はテンションが上がっていて、穂香はあまり興味がなくて俺の後ろからブラブラとついてきていたのを覚えている。


「ルドルフ様?」


目の前のお姫様が首をかしげる。年はたぶん俺と同じくらいで、豪華な金髪に青い瞳、典型的な「金髪碧眼美少女」だ。

ルドルフの記憶は、彼女がアーデルハイトという名前だと告げている。さらに記憶をさぐると、アーデルハイトはルドルフの婚約者で、ラウエンベルク候の娘だとわかった。


周囲を見回すと、ルドルフの記憶によって、ここがどこなのかはわかった。マルデブルク家の居城だ。そして今は、ルドルフとアーデルハイトの婚礼のために人が集まっているのだ。

けどこれは……一体なんなんだ。夢か現実か。いわゆる異世界転生というやつか。けど俺はトラックにひかれたりしてないし、やったことといえばちょっと椅子に座って目をつむっただけだ。座っただけで死ぬ椅子なんてないと思う。

それとも頭の中にルドルフの記憶があるということは、転生ではなく憑依ってやつか?


「あ、えっと、何でもない」


アーデルハイトに愛想笑いをして、俺は再び椅子に腰を下ろした。

ふと、視界の片隅にある人物が入ってきた。そちらを見ると、栗色の髪をした、アーデルハイトに比べるとずいぶん質素な雰囲気の少女がいる。ルドルフの記憶が素早く、恋人のゲルトルートだと告げる。婚約者がいるのに恋人がいるのか、ルドルフ。


てゆーかこれってもしかして「乙女ゲームの悪役令嬢もの」ってやつ? 広告でしか見たことないけど、こういうのって王子が清純ヒロイン(実は腹黒い)に入れ込んで、公爵令嬢を婚約破棄するところから話が始まるんだよな。公爵と侯爵は違うけどちょっと階級が違うだけだよな。そっかー俺は乙女ゲームの悪役令嬢ならぬ王子様に転生(?)しちゃったのかー。となればやることは決まってるな。


「アーデルハイト、今日は君に言わねばならないことがあるのだ」


俺は立ち上がると、重々しく告げた。

アーデルハイトは一瞬困惑した表情を見せたものの、すぐに期待に満ちた目でこちらを見つめた。たぶん愛の告白と結婚の宣言が来ると思っているのだろう。



「この私ルドルフは、アーデルハイト嬢との婚約を破棄する!」


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