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新型の性能試験

シオンはダナーたちと昼食を食べ、試験場へ向かう。

整備工場エリアには、共用の機体テスト用のエリアがある。その為、実際の機体テストは宣伝を兼ねてもいるし、今回もグラム社が他の興行師に声掛けをしていたからか、見学者が集まってきていた。

シオンがダナーたちと受付に向かうと、受付で長身の女性が居り、ダナーを見るや笑顔を浮かべ、大仰な一礼をし歓迎を表した。

「ようこそ、ワークス商会の皆様。本日は依頼を受けて頂き、ありがとうございます。私、グラム社グラディエーター系マシン製作企画開発営業部門のカトリーナ・フジワラと申します」

「初めまして、ワークス商会、コロッセオ整備班のダナー・オルクスです。隣の男がご指名のシオン・カークスです」

ダナーがシオンをカトリーナに紹介する。

「初めまして、シオン・カークスです。本日はこの様な機会を頂き、ありがとうございます」

シオンは、カトリーナに一礼をし下がろうとするが、カトリーナが一歩出て、右手を差し出す。

「宜しくお願い致しますね。シオン・カークスさん」

ダナーに肘で脇を突かれ、慌ててカトリーナの手を握る。

「宜しくお願いします」

その後、互いのスタッフ紹介をし、シオンはマシンの元へ案内される。

途中、マシンの話をされるが、専門的な話であり、シオンには内容の大半が理解出来なかった。そして、マシンの元へ到着する。

「こちらが新型となるNG-001N、ポーンです」カトリーナが右手を大きく振り上げ、鎮座するマシンを紹介する。シオンは目を見開き、指差して思わず言った。

「何、コレ?」

カトリーナがシオンを見、商会メンバーを見て反応がおかしいと思い、ポーンを見る。カトリーナはポーンを見つめる。

「ああ!」

カトリーナは手を叩き、商会メンバー側に思い切り振り返る。

「なんだ?」

シオンはちょっと驚く。

「シオンさんはマシンの素の状態を見るのは初めてですね。ダナーさん達は見慣れていると思いますが?」

「いや、今からスキン、パーツをセットするとなると…とね?」

ダナーが返答する。

「成る程成る程、ご安心下さい。ポーンは新機軸のマシンであり、それらを含めての御紹介ですので」

「ほう、それは楽しみだな」

ダナーが先を促す。

「政府主導による各社の共同開発による新スキンの話は御存知と思いますが、NG-001N、ポーンはその新スキンを使用しております」

「完成していたのか。しかし、マシン用スキンは何処に?見当たらないようですが」

ダナーが周りを見渡す。

スキンとは、マシン用の外皮となり見た目を人間の様に見せるパーツであり、スキンの上から装甲板、つまり防具を取り付ける。

外傷を負う事でダメージを目に見せ、マシン本体の機能を外傷に合わせる。

今までは、基本的にマシン本体にスキンを装備した状態で保管されている。整備班ならば、機体の整備や修理等でフレーム状態のマシンを見ているが、剣闘士が見ることはほとんど無く、スキン装備はかなり面倒くさい。

「先ずは、シオンさんにコックピットに搭乗して頂きます。ヤルハ、シオンさんをコックピットに」

ヤルハと呼ばれた少年がシオンの前に立ち、一礼してコックピットへ案内する。

「ヤルハ・リーです。シオンさん、此方へどうぞ」

搭乗用昇降機にシオンと乗り、コックピットへとシオンを送り、座らせる。

「基本的な操作は旧式と一緒だな。変更点は?」

コックピット内を見渡し、ヤルハに問う。

「ポーンは最下級から、最上級まで使用可能なマシンです。ですので、オプション装備は階級毎に簡単に取り付けられます。機体性能に関しては、コックピット内からも操作出来ますが、コロッセオでの戦闘中ですとスタッフの許可が必要となります」

「機体の負担が凄そうだな。機体性能が自在なら、不正もし放題なんじゃ?」

「スタッフ、ああ、スミマセン。シオンさんの場合ですと、商会スタッフと、コロッセオの運営スタッフの許可、認可があれば可能となります」

「成る程。で、この後は?」

「起動させてお待ちください。その後の指示は工程毎に行います」

「ふーん、了解だ。宜しく頼む」

ヤルハが離れ、合図を送る。シオンはポーンを起動させる。静かにエンジンが起動し、モニターにポーンのデータベースが出る。シオンはデータを確認しながら、ポーンを立たせる。

モニターを見ながら、ポーンが中級レベルに設定されている事に驚く。

「シオンさん、モニターを見ていますか?」

ヤルハの声が聞こえる。

「ああ、見ている。それで?」

「右下にスキンマークが出ていませんか?あればタッチして下さい」

「スキン、スキンマーク…右下…コレ?」

スキンマークをタッチすると、コックピット内で全身を照らされて、ポーンの足下から透明度の高い液体が出て来てポーンの全身を包み込む。

「落ち着いて下さいね。それがスキンです」

「お、おう。了解だ」

数秒後ヤルハから連絡が入る。

「シオンさん、完成です」

「へぇ、早いんだな………って、なんじゃこりゃ?」

機体操作で手や足を見たシオンは、何度目かの驚きを口にした。

「どうしました?大丈夫ですか?」

ヤルハはシオンの声で驚いたようだ

「手に皺が有るんだが?いや、見たことのある傷もある」

「シオン!」

ダナーの声だ。

「ダンナ、どうしたんだ?」

「マシンの顔!顔を見ろ」

「は?マシンの顔?どうやって見るんだ?」

「モニターを確認して下さい。此方からの映像を送ります」

ヤルハから連絡が入り、シオンはモニターを見て、思わず言葉を失う。

「見たかシオン?新スキン、凄ぇな!」

ダナーの声に我に返る。

「ちょっと待て、下は?下!」

「あ、安心して下さい。そういうモノの再現はしておりません」

カトリーナが慌てて言う。

「あ、そ、そう?安心していいのか?」

「しっかし、新スキン、早いわ顔や傷も再現するとか、やるなぁ」

「これが新スキン、スライムスキンです。剣闘士の顔に似せ、傷等の再現をし、かつ修復不要のスキンです。早くて安くて上手い」

「成る程、で、装甲は?」

シオンが急かす。アレが無いとはいえ、裸の自分が嫌なのだ。

「ポーン用中級装備を取り付けます。モニター右下スキンマークがあった上にアーマーのマークが出ていませんか?あれば、タッチして下さい」

「OKコイツだな」

後ろからアームが出て来る。各アームには装甲、防具があり、ポーンに取り付けていった。

「これはこれは…ずいぶん高そうな装置だな」

ダナーがカトリーナに言う。

「これは、政府……いえ、呪皇陛下の主導によるモノです。」

「政府主導よりも大物だな?で、この設備も必須なのか?」

「いずれは、そうなりますね。新スキンは3年後には統一規格となります」

「跡地製はダメになるか………」

「いえ、最上級の剣闘には用いても良いらしいですし、規格外剣闘等のクラスが出来るそうですよ」

「このタイミングとは、シオンも運が無いな。ランクアップするまでは、メーカー製マシンか……ああ、メーカー製に問題があるわけじゃないですよ」

ダナーはカトリーナに言い訳とも言えない言い訳をする。

「分かりますよ。メーカー製は高価ですからね。その為に、各社新製品開発をしたわけなんですよ。下級剣闘士から上級剣闘士まで使用可能にして、マシンの購入費用対効果を上げています」

「まぁ、10億Gとか、生涯かけても払えるもんじゃないしな」

「政府、いえ、呪皇陛下の開発機関からの新素材提供で、各社共通で大幅な値下げがされます」

「新素材?陛下の開発機関とは、話に聞いたことしか無いが、存在していたのか」

「ええ、元々陛下がマシンを開発して剣闘士を始めて以来、パイロット養成にも、マシンの開発にも、野良マシン討伐にも各地の防衛にも凄まじい効果があります。経済効果もありますからね、政府がやっていたらどうなっていたか」

「そうですな。お、準備出来たようですな」

マシンが動き出した。

ヤルハがシオンに指示を出している。シオンは指示通り、訓練場に向かっている。


「シオンさん、先ずは軽く適当に動いて下さい。武器の使用も大丈夫です」

「適当って、ヤルハ君?まぁ、良いか」

シオンは言われた通りに適当にポーンを動かした。グラディウスと盾を構え、前後左右に動き、軽く跳ぶ。

「これは凄いな!グラム社製でこの動き、パワーか?装甲か?」

「今は中級用のパワーに合わせています。新スキンも軽いのですが、装甲自体もかなり軽量化していますから、今までよりは動けるはずです」

シオンは話を聞きながら、グラディウスを振り、手応えを確認して動作を剣闘用に合わせていく。徐々に動作が激しいものとなる。

ヤルハは側で見て驚嘆していた。

「凄いですよ!シオンさん!社のテストパイロットよりも、マシンを動かせています!」

グラム社のテストパイロットも、元剣闘士だったり傭兵だったりと、マシンは十分に動かせていた。

ヤルハもポーンの担当の1人として、テストを何度も見ていたし、何人もパイロットを見て勉強していた。だが、シオンの操縦はテストパイロットよりも遥かにポーンの性能を引き出している様に見えた。

「そうか?ハハハ」

シオンは気持ち良く操縦していたが、ヤルハの言葉を聞き、照れてしまう。

「調子は良さそうだな?では、試験を始める。ヤルハ、第1試験だ」

カトリーナの声が響き渡り、序でヤルハが説明をする。

「では、シオンさん。案山子を出しますので、グラディウスのみで、全て撃破して下さい」

「了解だ」

同時に、案山子と呼ばれる動かないが、防具を付けた人形が地面から出てくる。シオンはそれを躊躇わずに斬り捨てていく。とはいえ、案山子の防具は隙間が少なく、グラディウスの刃は厚めであり、片っ端から斬り捨てていくシオンの技量にグラム社のテストチームは驚いた。

「では、このまま2次試験を行います。案山子からマリオットとなり、回避します。同じように、撃破して下さい」

ヤルハがいきなり2次試験を開始した。

「1次試験終了?で、2次試験?急だなヤルハ君、だが!」

のらりくらりと動き回るマリオットが相手でも、シオンは問題無く撃破していった。ヤルハもカトリーナも驚きの表情を浮かべる。

更にカトリーナはヤルハに指示を出す。

「3次試験を開始します。マリオットが、攻撃と防御を行います」

シオンは楽しいのか、笑顔を浮かべヤルハに返答する。

「おいおい!忙しないぞ?」

武器を持つマリオットが数十体地面から出てくる。

シオンはマリオットの位置、動きを見定める様に立ち止まる。

マリオット数体がポーンを目掛け襲い掛かる。微妙にタイミングをずらし、自分の動きを抑制しようとしたようにシオンは感じたが、ポーンの動きが良くなってきたと感じた事、マリオットの動きをある程度理解したために、正面のマリオットに狙いを定め、一気に間合いを詰め横一文字に叩き切る。そのまま勢いを殺さずに右斜めと後部に迫るマリオットを回転斬りする。

「どんどん来い!」

言いながら、シオンは他のマリオットに迫り、2体3体と斬り捨てていく。

ヤルハがマリオットに指示を出すが、シオンのポーンの動きが早く、的確な指示が間に合わない。マリオットの自動攻撃システムがシオンに対し、何とか闘っている状況だが、間もなく全滅するだろうと、全員が感じていた。

カトリーナは冷静に、ヤルハと他の人物に連絡を取っている様に見える。カトリーナがダナーの視線に気づき、笑顔を見せる。

「素晴らしい出来ですね。シオンさん次第ですが、4次、最終テストをしたいのですが?」

「ああ、上級設定ですな?武器、防具の変更も?」

「そうですね。次の相手は上級剣闘士となりますし、上級設定にしますから、ポーンの装備も変更したいと思います」

「成るほど、3次試験も終了ですな」

ダナーが訓練場のシオンを見ながらカトリーナに言う。

「シオンさん、4次試験の準備をするので戻って下さい。設定と装備の変更をします」

「ああ、このままってワケにはいかないか」

シオンはヤルハの言葉に従い戻る。

直ぐに設定変更、装備変更をされるポーン。別機体にしか見えないが、顔はシオンのままである。

シオンは機体に乗ったままで、備え付けの冷蔵庫から飲料水を取り出し、飲み込む。

「さーて、次は対人戦か!」

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