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呼び出し

整備工場に向かうが、丁度路面電車が通り、乗り込む。無料なので、使わない理由が無い。

コロッセオ内部が広大な為に、路面電車が各エリア、エリア間、一般用と走っている。

剣闘士たちがコロッセオ内でこうも自由なのは、反逆、脱走は死に直結することがはっきりしていることもある。

同時に人権問題があり、自由保障法が奴隷にも適用されているからである。

奴隷制度に人権と、おかしな話だが、本来、奴隷制度は存在しないのだ。シオンが奴隷剣闘士なのは、いわゆる詐欺にあったからで、商会に引き取られるまでは、田舎で剣闘士をさせられていた。


電車に揺られながら、窓の景色を見る。興行師の暮らすエリアは、剣闘士たちが居るために壁で囲まれており、外の景色は見えない。だが、壁には町並みが映されており、無機質な壁を見るよりはマシに思えた。

「間もなくD地区、整備工場エリア、全てのドアが開きます。お降りの際はお忘れ物の無いよう~」

アナウンスが聞こえ、シオンは下りる準備をした。

結構な客が下りるが、乗る客は少ない。車内にはまだかなりの客が居る。

「よう!シオン」

誰かに呼びかけられて、振り向く。ニコニコと笑顔を見せるボサボサ髪の男が居た。

「なんだ、レオか」

シオンは片手を上げる男の手を叩く。パンっ、といい音がして、何人かが振り向き、シオンたちを見てまた歩き出す。

シオンたちも歩き出しながら話す。

「どうした?整備工場に見学か?転職するのか?」

変わらずニコニコと話すレオ。

「職業選択の自由~って?ねーよ。俺にはな」

ぶっきらぼうに答える。

「ハッハッハッ、だよな。お互い、闘いしかねーわな?」

「つーか、髪をどうにかしろよ!」

シオンはレオの髪を指して言う。

「ん?羨ましいのだろう?この獅子の如き髪型が!」

言いながら、シオンの背中をバンバン叩く。

「ぐっ!お前、加減を覚えろって言ったろーが!大体、何が獅子だ?」

片腕で防御し、手を下げさせる。

「おお、すまんな!で、整備工場エリアに居るって事は、マシンでも持ったか?」

「貧乏奴隷剣闘士にそんな金有るかよ?多分、バイトだ」

「あ~ナルホド、指名依頼か!流石は無敗の新星だな」

「やめろよ、そのバカな呼び方」

「良いじゃないか?本当の事だろう?」

「お前とは引き分けだろう?そもそも、数回しか競技に出てねぇよ」

「競技の回数は仕方なかろうよ。それに引き分けと言っても、商会メンバーとして、チーム戦で同数討伐だっただけだろう」

「引き分けは引き分けだろうが?」

「お前はレンタ君で、俺はグラム社のスーパーマッシーンだぞ?引き分け時点で俺の負けじゃねーか?」

「お前のそういう所、腹立つが好きだぜ?」

「お?告白されても困るぞ?」

大笑いしながら返すレオ。

「コレだからお前は……」

「ハッハッハッ…」

「そういや、そのスーパーマシンのローンはどうなんだ?整備費用とか」

「先は長いな。ま、稼ぎはあるからな」

「跡地か?」

「お?知ってるのか」

「まぁな。どっちが良いんだろうな?跡地製と購入品と」

「無料は魅力的だが、武装すら無いからな?最初の戦闘で、良い武器ゲット出来るかだが、下手すると、命が無くなるぜ?」

「あ、やっぱり?グラム社製が落ちてれば無理が利くかね?」

「それか、エクス社だな。防御機能は段違いだからな。買えば金額は10億超えるが、安定性が違う」

「けど、合わないんだよなぁ。金ねーし」

「だな。お前の闘い方なら、ファティマかジョンソンだろうが、ジョンソンはピーキー過ぎるわな」

「違いない。合わせにしても、ファティマとジョンソン、グラムとエクスの組み合わせとかしかないだろうしな。ま、機体無いんだがな」

「安定性ならな。っと、着いちまったな!俺は上に用事があるんだ。ゲットしたら、教えてくれや!」

「そうか、またなレオ」

「おう、またな」

レオと別れ、受け付けに向かう。

「ん?そういやあいつ、用事は何だったんだ?」

振り返るも、レオはエレベーターに乗って行ったようだった。

「ようこそ、ワークス商会コロッセオ整備工場へ。御用件は?」

「整備班のダナーさんに呼ばれた。シオンが来たと伝えてくれ」

「ダナー班長は、3階の事務所にいらっしゃいます。シオン様は左手側の直通エレベーターをお使い下さい」

「そう、ありがとう」

手を挙げ、シオンはエレベーターを呼び、乗り込む。ドアが閉まり、エレベーターが地下3階に下りる。

ドアが開き、ホールに出て事務所に向かい、ノックをし、返事を貰わずにドアを開ける。

「よ、ダンナ!」

シオンは相手を確認せず挨拶ともいえない挨拶をする。相手は机の上でPC操作をしながら、片手を挙げて返事としたようだ。

「相変わらず忙しいんだな、ダンナ。勝手に座るぞ」

シオンは入り口付近のソファに座る。

奥から女性が現れ、紅茶をテーブルに置く。

「ようこそ、シオンさん。ダナー工場長はしばらく手が離せませんので、こちらを飲みながらお待ち下さい」

「ああ、ありがとう。ミラーさん、待つのは慣れてるんで、このお菓子、頂きますよ?」

「ええ、どうぞ」

「他の方は?ダンナ以外、出てるの?」

「整備班は整備のお仕事よ?」

「そりゃそうだね。ミラーさん、以外とお茶目?」

「さあ?どうかしら。シオンさんは、最近の調子はどうなの?」

「あー、社長に怒られてますね。やっと2級に上がったみたいですが」

「そうなのね。シオンさんの活躍なら、もう一つか二つは上でも良さそうなのにね?」

「そうですかね?まだ数回しか闘ってないですから、2級でも十分じゃないですかね?」

「そうだったわね。整備班の仕事手伝って貰ってばかりなせいか、結構競技に出てるイメージだったわね」

「競技より、整備班の仕事が多いのは確かですが、お蔭様で各社の機体に乗れますからね。俺としては、ありがたい話ですよ」

「シオンさんは、次の競技はどこの機体を使う予定?何時も通り、ファティマ社?」

「そうですね。ファティマが1番合うんですよね。ただ……」

「進級審査試験、受けるんだろ?」

ダナーさんがミラーさんの隣に座りながら言う。

「ダンナ!終わったのか」

「お前だけだぞ?ダンナなんて呼ぶのは、俺の嫁さんかお前は」

「ええ?二人はそんな関係?あら、いやだわ、私ったら!」

「ちょおい、ミラーさん、あんた……腐った方?」

シオンがドン引きしながらミラーにツッコむ。

「ホホホ…」

笑ってごまかすミラーを見て、シオンは腐った趣味の人かと思った。

「なんか知らんが、ミラー、何処か悪いのか?腐ったとか、早く病院行かないとな」

ダナーが普通に心配して言うが、ミラーもシオンも返答に困る。

「……あ、大丈夫ですよ。違うお話ですから。私もやる事やらないといけませんからね、あちらで仕事してますわ」

中々早口で言い、そそくさと奥に引っ込むミラーであった。

「なんだ?アイツは?」

「さぁ?で、ダンナ今日の要件はなんだい?」

「おう、社長に聞いたが、昇級審査試験受けるんだろ?教えられる事を教えろって言われてな」

「ハゲ、マメですよね。でも、整備班から教わる事って、機体整備ですか?」

「いや、跡地の話だ。跡地製のマシンはな?理想的騎士道人類抹殺プログラムってのが組み込まれている」

「なんだそりゃ?」

「そのままさ、人類抹殺プログラム、人類に対して抹殺しますってな?」

「理想的騎士道は?」

「誰の理想か知らんが、負けた相手には全てを与えるんだ。負けた時点で、人類抹殺プログラムが消失して、服従するプログラムに変わる」

「何でそんなアホなプログラムを………」

「知るかよ。だが、そのおかげでお前らは無料でマシンをゲット出来るんだよ」

「いやー、無料か死かだろう?で、落ちてるマシンは人類抹殺プログラムは組み込まれているのか?」

「いや、ノーマルだ。心配なら、店売りでも買うか?」

「まぁ、手に入れてからだな」

「で、だ。お前、何が落ちてると思う?」

「マシン?ファティマ社のが有ればありがたいが、その後も考えれば、グラム社のかね」

「ほぅ、一応考えてんのか。ただなぁ、落ちてねぇ事もあるんだよ」

「そうなのか?」

「そうなれば、大変だな。レンタ君での試験は、失敗の可能性しかないからな」

「そりゃなぁ。レンタ君は俺ら下級用と同義だしな。買うしか無いのか?」

「落ちているときに行くしか無いな。まぁ、大量に落ちてる場合もあるんだが、選んだ時点で、周りは敵だらけだがな」

「罰ゲームかよ?」

「ファイターマシンなら良いが、ワークマシンだったら爆笑だな」

「いや、それはネタだろう?ダンナ」

「さあな?が、最悪の事態も想定しとけよ?って話よ」

「入手した場合の手続きとかは?」

「最初から回収班がついて行くから、連中に任せれば良い。武装なんかもそうだな」

「ナルホド、回収班が一緒なら、グラディウスを持ってきて貰うのは有りか?」

「有りだが、跡地にマシンいなけりゃ赤字だな。しかも、持ち出しの手続きが面倒くさい」

「はぁ、今から気が重いな」

シオンが溜息をつき、天井を見上げる。

「なんにせよ、明日か明後日には出るんだろ?」

「そうだなぁ。早い方がいいしな。社長次第だろうかね。で、今日はそれだけかい、ダンナ?」

「話だけでも気が滅入ると思ってな、グラム社の新型のテストを頼む」

「へぇ、商会用?買ったの?」

「いや、グラム社からの正規依頼よ!昼からだから、ここでメシ食って、一緒に行くぞ?」

「了解だ」

グラム社だけではなく、マシン製作メーカーの大手4社、ファティマ社、グラム社、ジョンソン社、エクス社は、新型開発のみでは無く、旧型のアップデート等も行っている。

この4社以外にもマシン製作メーカーは幾つかあるが、剣闘士用は開発していない。対野良マシン、つまり戦争用の開発がメインとなる。

旧型に関しては大半が製造終了しているが、戦争時に開発、製造されたモノの中には、最新の下級剣闘士用の機体よりも性能が高い機体が存在する。

剣闘士用最新式に関しては、政府より性能の制限が設けられており、下級用剣闘士機は、武装も接近戦闘用のみ許可されている。但し、下級用でも高価な上、レンタル品が多く、ほぼ旧型がメインとなる。

中級から、跡地製、購入品が増え、レンタル品が減るが、勝つ猛者も居る。又、銃等の射撃武器の許可が出るが、威力は当然控え目である。

上級からは、跡地製、購入品、カスタム機体がメインとなり、レンタル品はいない。専用機が大半となるため、機体毎にギミックを搭載可能で、銃等も高威力にはなるが、コロッセオ内のバリアは破れない威力である。

最上級剣闘士になり、大型兵器と呼べる武装を使用可能となり、搭乗機体はメーカー各社と契約を結び、最新鋭パーツ構成機も出てくる。大型兵器は、チーム戦、個人戦のみとなる。

話が逸れたが、跡地製の機体が出始め、政府により跡地製の使用許可が出てからは、各社共通で売れ行きが落ち込み、旧型のアップデート、機体改造が好調となっている。

販売相手である興行師側には、パイロットの剣闘士が居るため、テストパイロットを務めてもらうことで、剣闘士用に調整し易いという利点で、依頼がくる。

因みに、操縦方法が2種類あり、操縦型、パイロットの動きをトレースする追従型がある。

その為に、機体費用の無い最下級剣闘士は、生身で闘わされる事も少なくない。だが、肉体的な損傷が無いように武器は危険な物は使わず、防具は全身を覆うものである。また、この時の戦闘で適性を確認し、操縦型か追従型に分けられる。

シオンは両方に適性有りの評価だが、操縦型を選んでいる。2カ月、数回しか競技に出場していないが、エキシビションマッチで上級剣闘士に勝ってからは、マシンのテストパイロットの指名依頼が来るようになった。

テストパイロットと言っても、剣闘士として闘いレポートを提出するまでが基本的な仕事となる。そこそこ長期間であったり、1日程度だったりとまちまちである。



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