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純情と妖艶  作者: カゲリ
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7.語らい

ライトノベルを書いてみようと書きました。


7.語らい


 冬也がリオを呼び止めた。

「リオ!」

 振り返ってリオは微笑む。

「こんにちは、トーヤ。」

「よかった、人違いぢゃなくて。君ともう一度逢いたかったんだ。」

 冬也は云う。リオは笑う。

「貴方のお友達とわたしってそんなに似ているの?」

 冬也は眉を顰めた。

「お友達ぢゃなくて知り合い。そうだな、顔だけ見たらそっくり。でも、纏っている雰囲気が違う。リオの方が清純だ。」

 むきになる冬也に対し、リオが笑う。

「性奴なのに?」

「そんなの関係ないよ。」

 冬也が強く云う。

「それに、ランはそんな制度はないって。」

 冬也の言葉に、リオが哀しそうに長い睫毛を伏せた。

「ラン様はご存知ないんだわ。」

 そんなリオを見た冬也が声の調子を明るくする。

「そんなことより、リオ、庭に出てみないか?」

 リオは微笑んだ。

「良いわね。」

 トゥルプティー宮殿の本庭は、みさとに宛がわれている中庭とは違い、見渡す限りの広さに様々な樹木が植わっている。二人は、林檎の樹の下にやって来た。

「わあ、綺麗ね。」

 リオが伸びをしながら、云う。林檎の樹には、白い花が満開に咲いている。

「ほんと綺麗だな。」

 冬也が同意する。

「わたしはこの林檎の樹が好きなの。」

 弾んだ声でリオが云う。

「リオはこの街の生まれなの?」

 冬也が訊く。

「ええ、わたしは宮殿で生まれたの。両親が住み込みの召使いで。でもわたしは、母の子供ぢゃないの。父親が姉を性的に虐待していて、それで生まれた子供がわたしってわけ。母親はそれを知って、自殺したわ。ね、わたし、出生から穢れているでしょ?」

 哀しそうにリオが云う。冬也は頭を振った。

「とんでもない。君が悪いわけぢゃない。」

 真剣な冬也に、リオが微笑む。

「ありがとう。優しいのね、トーヤは。」

「そうだ、今日の記念に髪に林檎の花をつけない?」

 はしゃぐ冬也に対し、リオはきょとんとした顔をする。

「何の記念?」

 茶化すように云ったリオに冬也は真顔で答えた。

「僕とリオとがもっと仲良くなった記念。」

 リオは笑う。

「うふふ、素敵ね。」

 リオが頭を差し出す。冬也が林檎の花を一つ摘んでリオの髪に挿す。



 みさとの部屋でエミリーが片付けをしていた。そこへいきなりみさとが部屋の中央へ現れた。

「みさと様!」

 エミリーが凄く驚いて、大きな声を出す。

「やあ、エミリー、ただいま。」

 みさとが完璧に微笑む。

「みさと様、今、どうやって現れました? わたし、ドアに背を向けて、立っていましたのに。」

 エミリーが云う。

「判んない。」

 みさとが答える。

「まさか、みさと様、スリットが出来るんですか?」

 エミリーが青い眸をクルクルさせながら、訊く。みさとがきょとんとする。

「スリット?」

「瞬間移動のことですわ。」

 エミリーが説明する。

「そうかも知れない。最近、気が点いたら、違う所に居るんだ。」

 みさとが云う。エミリーが眸を耀かせる。

「すごいですわ、みさと様。」

「でも余りいいことぢゃないかも知れない。」

 みさとが複雑な表情で、云う。

「えっ、どうしてですか?」

 エミリーが素直に問う。

「だってその後、酷く躰がだるいんだ。」

 みさとが答える。

「そうなんですか。そう云えば、ラン様が云ってました。みさと様は魔法を使う時生体エネルギーを燃やすって。」

 エミリーが云う。みさとが頷く。

「そう、そんな感じ。」

 何事か云いかけたエミリーがふとみさとの髪に目を留めた。

「まあ、みさと様、髪に花が、」

「うん、そうなんだ。これは林檎の花。」

 みさとは微笑む。 


 みさとの部屋。ベッドにみさととポールが横たわっている。

 ポールの胸にみさとが耳を寄せる。

「なあ、みさと。」

 ポールは云う。

「みさとの叔父さんで雅俊也って云う人居るだろ?」

 ポールが続ける。

「雅エンタープライズを実質的に動かしている、」

 みさとが頷く。

「うん、居るよ。僕は俊叔父さんと呼んでいるけど。」

 ポールがみさとの髪を撫でながら、云う。

「あの人とみさとってどう云う関係?」

「どう云う意味?」

 軽い調子でみさとが訊く。みさとの声は可愛くて耳に心地良く、ポールは眸を閉じた。

「いや、肉体関係あるのかなと思って。」

 ポールが云い淀む。だが、みさとはすんなり認めた。

「あるよ。」

「やっぱり?」

 ポールは色めきたつ。

「叔父さんは僕の初めての相手なんだ。」

 みさとがはにかんだように笑う。

「だってあの人滅茶苦茶カッコイイもんな。」

 ポールの言葉にみさとが首を傾げる。

「そうかな、僕には、ただの変態に思えるけど。最初の時とか酷くて。真夏にエアコンをガンガンに効かせた部屋で、寒い時、人間は肌を重ね合わせるんだって。」

 みさとが云い、ポールが笑う。

「あはは。」

「寒いなら、服を着ようよって話。」

 みさとも笑う。

「それ、いつの話?」

 ポールが訊く。

「僕が、8歳の頃かな。」

 みさとが答える。

「俺、一度だけ、パーティで逢ったこと有るけど、あの人、本当にカッコイイよな。顔立ちは綺麗だし、動作は洗練されてるし。」

 ポールが云う。みさとが苦笑いする。

「そうらしいね。」

「らしいねって、」

 ポールが驚く。

「だって、僕は知らなかったんだ、俊叔父さんが美人だとは。そんなこと気にしたこともなかったし。だけど、ある時、パーティで来ていたおじいさんに云われたんだ。『君は財界の寵児とか云われて、有頂天になってるかも知れないが、君の叔父さんが、少年の頃は君なんか目ぢゃなかった。本当に綺麗で。君みたいにナヨナヨしているのとは違う。本物の紅顔の美少年だった。』って。」

 みさとが云う。

「あはは。」

 ポールが笑う。

「それで初めて叔父さんが美人だって意識したんだ。」

 みさとが云った。


 ランとポールが、ランの部屋のテーブルに腰掛けている。テーブルの上には、青い小さな薔薇が鏤められた、ティーポットとティーカップが二つ、それにココアが市松模様になったクッキーがあった。

「エミリーの報告によると、みさとくんは、スリットが出来るみたいなの。」

 クッキーを頬張りながら、ランが云う。

「スリット?」

 ポールが訊き返す。

「瞬間移動のことよ。」

 ランが説明する。

「うおー、みさとすげえ。」

 ポールが嬉々として叫ぶ。

「あくまでエミリーの報告によれば、の話だけどね。」

 ポールの大袈裟な反応に苦笑しながら、ランが云う。

「それでも凄いよ。」

 ポールがむきになる。

「だからね、今までは、部屋を出た時だけチェックしてたんだけど、それも変更しないといけないと思って。」

 ランが云う。ポールが目を丸くする。

「それは、みさとを監視してるってこと?」

ポールの声が鋭くなった。

「ええ、そうよ。」

 ランはあっさり認めた。

「みさとくんに対する監視体制を強化する必要があるって云ってるの。」

 ランが云い、ポールは顰めっ面のまま、紅茶を飲んだ。


まだまだつづきます。


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