6.リオ
ライトノベルを書いてみようと書きました。
6.リオ
ポールは相変わらずみさとの部屋に入り浸っていた。
二人でベッドに横たわりながら、ポールが感心したようにみさとを見詰める。
「しかし、ほんと綺麗だな、みさと。」
ポールの言葉にみさとが微笑む。
「傷が残りにくい体質だから余り目立たないけど、でも実は、傷だらけなんだよ。」
みさとが云う。ポールはみさとの体を眺めた。そのすべらかな肌は驚く程白く、傷などないようだが、よく見ると、細かい傷が無数にあるのが判る。
「でも綺麗だよ、みさと。それに毛並みもいいしさ。」
「毛並み?」
ポールが云い、みさとが首を傾げた。
「ほら、何と云うか、血統みたいなもの。みさとはその美しさで雅エンタープライズの御曹子だろ?」
ポールが云う。みさとが微笑む。
「ポールは僕の出生の秘密を知らないから、そんな風に云えるんだよ。」
「出生の秘密 ?」
ポールが訊き返す。
「僕も中学生の時に知ったんだけど、僕は姉の子供なんだ。雅家の当主夫妻には、子供がなかった。そこで雅家では養女を貰うことにした。それが僕の姉。」
みさとは微笑む。ポールが云う。
「みさと、お姉さんがいるんだ。」
みさとは頷く。
「うん。大体想像がついたと思うけど、夫人は世界を飛び回るジャーナリストで、留守がちだった。そこに悲劇が起きる。父親によるレイプ。少女は身篭る。雅家の宗教上の理由から、中絶は出来なかった。それで産まれたのが僕ってわけ。」
みさとはそこまで一気に云った。ポールは相槌を打つ。
「そうなんだ。」
みさとは頷く。
「うん、母である姉が僕を産んだのが、12歳の時だった。そのことを知った夫人は、水が苦手だったのに入水自殺をしたらしい。僕はそう云う呪われた子供なんだよ。」
「そんなの関係ないよ。だってみさとはこんなに綺麗なんだもの。」
「そう云う問題?」
ポールの言葉にみさとは笑う。
「でも、これで俺達、秘密を一つずつ共有したことになるな。」
ポールはみさとにキスをした。
トゥルプティー宮殿の廊下で冬也はみさとの姿を見掛けた。
「やあ、みさとくん。久しぶりだね。」
冬也はみさとに声を掛けた。しかし、振り向いたみさとはきょとんとしている。みさとは白いワンピースのような羅衣を身に纏っている。真っ直ぐな黒髪は背中まで波打ち、みさとをより一層華奢に見せている。みさとは何事かを云う。
「みさとくん、どうしたんだよ。トゥルプティー語なんか喋って。」
みさとはなおも何事か云う。そこで冬也もトゥルプティー語に切り換えた。
「どうしたんだよ、みさとくん。僕、トゥルプティー語はカタコトしか話せないんだよ。」
「貴方、人違いをしているんぢゃない? わたしはリオよ。」
リオと名乗った少女はくりくりした眸で冬也の眸を覗き込んだ。
「リオ?」
冬也は顔が熱くなるのを感じた。
「そう、リオ。貴方はだあれ?」
リオは小首を傾げる。
「僕は冬也。」
冬也の言葉にリオは不思議そうに目を瞬かせた。
「トーヤ? 変わった名前ね。」
「トゥルプティー人ぢゃないからな。」
冬也は云う。
「ぢゃあ、貴方、何人なの?」
リオが訊く。
「日本って判る? 僕はその日本からやって来たランの客なんだ。」
冬也は云った。リオは目を白黒させる。
「まあ、貴方、ラン様のお客様なの? ぢゃあ、偉いのね。」
「そんなことないよ。リオは宮殿のメイドさんか何か?」
冬也が訊いた。
「いいえ、わたしは性奴なの。」
リオが云う。
「せいど?」
冬也が訊き返す。
「性的な奉仕をする奴隷のことよ。」
リオは冷静に答えた。冬也は驚きを隠せない。
「まさか!」
「本当よ。わたしの相手は主に貴族等の偉い人なの。」
冬也は反駁する。
「でも、トゥルプティーにそんな制度があるなんて聞いたことないよ。」
「貴方はお客様だから、トゥルプティーの影の顔は知らないんだわ。」
リオは云う。
まだまだつづきます。