表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
純情と妖艶  作者: カゲリ
3/10

2.囚われ

ライトノベルを書いてみようと書きました。


2.囚われ


 目を開けたみさとは辺りを見回した。金髪の女性が覗き込んで来た。

「気が付いた?」

 トゥルプティーのユキコ王妃だ。

「此処は?」

 ユキコ王妃は白い歯を見せた。

「トゥルプティーのクリスタルよ。あと2、3日で出られるわ。」

 クリスタルとは、トゥルプティーの医療器具で魔法の力を貯め込んだ水晶のカプセルだ。


 3日後、クリスタルから出られたみさとは、改めてユキコ王妃と接見した。

「今回のことは、本当に悪かったと思ってるわ。ラベンダー叔母様の遺産についてはトゥルプティーは今後一切関知しません。娘を助けて呉れて、本当にありがとう。」

「いいえ。」

 ユキコ王妃は窓に近付いて、北の塔の残骸を見下ろした。

「あの爆発では、貴方が抱き締めて呉れなかったら、ランは助かってなかったと思うわ。」

「それなら、日本に帰して下さい。」

 みさとは懇願した。だが、ユキコ王妃は首を横に振った。

「それは出来ないわ。貴方には、完全に回復するまでトゥルプティーで療養して貰うわ。」


 ユキコ王妃との接見が終わったみさとは、トゥルプティーのプティー王との接見に臨んだ。プティー王とは名前ではなく、魔法の王様と云う意味の呼称だ。

「みさとくん、大きくなったねえ。」

 王はみさとを抱き締めた。

「五歳の時、トゥルプティーを訪れた時も、貴方は僕を抱き締めて呉れましたね。」

 みさとは云う。プティー王は涙を浮かべた。

「あの時、君は凄く小さくて華奢で、この子は長生きしないだろうと思われた。よく無事に大きくなって呉れたね。」

「ありがとうございます。」

「私は元々、トゥルプティーの人間ではないからね、ラベンダー様との過去の経緯も余り知らないんだ。だけど、妻と娘は生粋のトゥルプティー人だから、随分と強引なこともしてしまったみたいだ。赦して呉れ給え。」

 みさとは、プティー王の優しい物言いに涙を流した。


 みさとにはトゥルプティー宮の客間の一室があてがわれた。

 金のウェーブの髪の少女がおじぎをした。

「エミリーと申します。普段は、ラン様の側付きの女中ですが、この度、みさと様の身の回りのお世話をすることになりました。」

 みさとも微笑んで頭を下げた。

「よろしく。」

「だけど、ほんとにお綺麗ですわ。」

「ランちゃんだって、綺麗でしょう?」

「そうだけど、みさと様も凄くお綺麗ですわ。魔法も使えるし。」

 みさとは笑った。

「あれは只のESPだよ。」

「それでも凄いですわ。わたしは魔法が使えないから、羨ましいくらいです。」

 みさとは改めてエミリーを見た。

「トゥルプティー人はみんな魔法が使えるんぢゃないの。」

「トゥルプティー人も学校で魔法を習得するんです。大抵のトゥルプティー人は、一生掛けて一つの魔法を習得します。そして、その職業に就きます。ラン様のように魔法を自在に使える方は、稀ですわ。わたしは幼い頃から、宮仕えをしていたので、学校には行けてないんです。」

「そうなんだ。」

 みさとは優しい眸でエミリーを見つめた。

「お召し物はどうしましょう? 何を用意すればいいですか?」

 エミリーが聞いた。みさとはちょっと考える。

「羅衣ってあるぢゃない? あれがいいな。」

「羅衣って、トゥルプティーのあの、伝統的な羅衣ですか?」

「そう。一度着てみたかったんだ。」

 みさとは微笑んだ。


 みさとの部屋にランが訪ねて来た。

「みさとくん、調子はどう? まだ熱があるって聞いたけど。」

「ランちゃん。」

 みさとは、白いワンピースのようなものを着ている。トゥルプティーの羅衣だ。麻で、ほんとはズボンなのだが、裾が広がっているので、ロングスカートのように見える。

「まあ、羅衣なんて着ているの?」

「エミリーが用意して呉れたんだ。」

 ランはみさとを見つめた。みさとは元々華奢なのだが、更に細くなったように見える。小作りな顔がより小さくなったようだ。

「みさとくん、今回のことは、本当に悪かったわ。そして助けて呉れてありがとう。」

「僕の方こそ、北の塔を滅茶苦茶にしてしまって、ごめんなさい。」

 みさとは細い声を出した。

「それよりも、悠弥さんのこと、ごめんなさい。」

 ランは謝ったが、みさとは表情を変えなかった。その様子は、ランの目にも、横で見ていたエミリーの目にも、無理をしているように映った。

「それも僕が悪かったんだ。」

 みさとは、また細い声で応えた。

「どうしてよ。悠弥さんに魔法を掛けたのは、わたしだわ。」

「でも、それでも、」

 みさとは吐き出すように云った。

「僕は気付かなければいけなかったんだ。あんなに大切な人だったのに。」


まだまだつづきます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ