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ラブコメ・恋愛

クラスで三番目に可愛い君に決めた


 一番、高嶺の花すぎる。

 二番、いい感じのイケメンがゴーゴーしている均衡。

 三番、うん、いい感じに、そろそろランキングの空気へと消えていく順位。


「だから、君に告白しました。金メッキも銀メッキもしていない銅メダルな君が好きだ」


 はい、振られる予定です。

 いやね、やっぱり、ほら、クラスで一番可愛い子に告白なんて悪目立ちするし、二番目は陽キャ集団にリンチされそうじゃん。固定ファンの少なそうな子にいくぐらいがちょうどいいんだって。

 ソースはない。わたしの感想ですね。

 個人的にはクラスで六番目ぐらいの子が意外とドストライクなんだけど、本当の好きは隠しておくものなのだよ。


 この時、俺は知らなかった。クラスで三番目も十分にすごい人気がある美少女だということに。そして、なぜ彼女に男子が近づこうとしていなかったのかを。インキャくん、クラス内人事を知らなかった。

 平たく、率直にいよう。マンガ的な引き伸ばしはいらない。

 要するに、うん、彼女の家、警察のお偉いさんだったわ。


「ごめんなさい」


 よかった、ちゃんと振られーー。


「告白されたら、お父さんが連れてくるようにって言っていて、俺の目で判断するって」


 ん、付き合う段階で、娘さんをくださいレベルの話が始まっている件について。時代錯誤、カッコよく言えば、アナクロニズムさんでは。


「ちょっと電話して、予定を確認するね」


 あばばばばばばば、やばいぜ、この告白、振られるだけでは終われない。いい感じに振られないと。お父様に挨拶って、ハードルが高いよ。潜り抜けたい、今すぐにでも。じゃないと、やな感じになってしまう。





 純和風な門構えの家だった。いい感じですね。

 俺はこのときは思った。三番目少女の家はヤーさんだと。

 映画で勉強して知っている。今時、こんな純和風な家に住むのはヤクザと決まっていると。見ろよ、柱の傷とか日本刀でできたような傷があるぜ。


 やたらガタイのいい人たちがお出迎えしてくれて、風流な庭を通り抜けて、大きな広間に案内された。

 うん、掛け軸が飾ってある。いいね、そばに日本刀がおいてあったり、槍が天上から吊るされてなければ。取ってすぐに投げれるようにしてあるね。

 畳の上に自動的に正座した僕。

 罰ゲームの告白でした、なんて言えない。しかも、ネットゲーム対戦での売り言葉買い言葉が原因なんて。まさか負けるなんて思ってなかったんだ。FPSは得意な方だと思ったのに。

 カチコチと固まりながら、頭だけをぐるぐると回していると、奥の引き戸が開けられた。三番目の少女とその父親。


「君が娘に交際を挑んだという少年か、言わなくても分かると思うが、彼女の父だ」


 交際を申し込んだのです。挑むって何、いったい真剣交際は真剣を交えてからとかですか。

 お父さん、それにしても貫禄がございますね。修羅場を潜り抜けた男のような剣呑な雰囲気が隠せてませんよ。

 その頬の傷は何が原因ですか。夫婦喧嘩ですか。違いますか。そうですよね。


「ここに来るまでに、君の調査をした。これが、その資料なんだが。なぜ、このレベルでうちの娘に告白を考えたのかな」


 うぉーい、圧迫面接もビックリ。

 娘にふさわしくないと、ザックリといきなり突っ込んできた。

 しかし、ここで、そうですね、諦めます、というわけにはいかない。軽い男が近づいたと思われて東京湾に沈みたくない。本気の告白として見なされてから振られたい。


「君は銅メダルだって告白されちゃいました」


 あはっ。何、顔を赤らめているのかな。

 これは殺される。

 導線に着火しているのか、殺気がヤバい。


「うちの娘は、金ではないと」


 にゃばい、ばびゃいよー。


「いえいえいえいえいえいえいえいえ、お嬢様は一番です。それは、言葉のアヤであって、メッキのない素晴らしい人物だということを伝えるために言ったものです。金メダルも銀メダルもメッキというごまかしをしているなか、銅だけが堂々としていると」


「クスッ。銅だけに」


 やめろ。三番目。俺の胴体が首とおさらばして、メダルがかけられなくなるじゃないか。


「それで、君は、娘に釣り合うために、今後、どういう将来を想定しているのかな」


「け、剣林弾雨の中でも駆け走る所存でございーー」


「そういう精神論を聞いたわけではないが、よかろう。では、少しマシンガンを準備しーー」


「お父さん、死んじゃうって、さすがに」


 ナイス。

 君の優しさに感動した。命大事に。


「仕方ない。100キロマラソンから始めようか」


 ん、マラソンとな。

 付き合うためには、100キロマラソンぐらい走れよ、と。

 スパルタな結婚試練ですね。


「その後、ウルトラマントライアスロンをして、晴れて特別訓練を課そう」


 スパルタも、アテネに帰る勢いだった。

 僕、死ぬんじゃない。

 かぐや姫様、無理な難題をお取り下げください。


「グッドラック〜」


 三番目の少女はニコニコだった。

 筋肉ムキムキになるぞ、いいのか、今の儚げな美少年な僕が。

 僕を助けてよ〜。優しさにコロッと膝枕希望。






 試練を抜けた俺は、もうあの頃の俺はじゃない。

 俺の肉体は、FPSをリアルで実践できるゴリゴリな肉体に進化した。

 三番目女子を片手で持ち上げられるぜ。

 

 恋愛、なんて過酷でデンジャラスなレースなんだ。これを勝ち抜かないといけないなんて恋愛離れする若者がたえないわけだ。

 もう喫煙と酒で軟弱ヤクザの時代は終わりました。今は、己の肉体美を追求するヤクザの時代です。不良なんて、ただの貧弱ボディだし。

 悪カッコいい男には、いつも美女がいるものだ。そう、俺は彼女にふさわしい肉体美を作り上げたのだ。

 あれ、でも軟弱だって振られた方が良かったのでは……。

 

「ああ、俺も悪の花道を歩く一匹の獣」


 少女と一緒にいる広間でポツリと呟く。


「うち、警察だよ」


 人生の正道だった。いや……


「……パワハラにあいました」


「罰ゲームで告白したってバラすよ」


「な、なぜ知って……はっ脅迫罪だっ」


「唐突に元気になったね。それにしても、まだまだFPSが下手なんじゃないかな」


 バキュンと、両手で拳銃のポーズ。

 何それ、可愛い。人生で三番目ぐらいに。


「お前、まさかっ」


「さぁ、射撃訓練に、ちょっと海外に行こうか」


「いやだー、殉職したくなーいっ」


「大丈夫。それはまだ先だよ」


 生き残ったものが、娘の夫とか、そんなデスゲームじゃないよね。マフィアのアジトに突っ込んでこいとか言わないよね。現実はゲームじゃないんだよ。命は一つしかないんだよ。


「銅より鉛の弾丸だよね」


「ん、ということは告白は振られたということで」


「そういえば、銀メダルはちゃんと銀なんだけどね」


 やめろ。今さら昔の間違いを指摘するんじゃない。いいじゃないか、人は間違って成長するものなのだ。だから、告白も間違いでした。


「シルバーブレッドがご所望で」


「銀のパンって、クスッ。パンをくわえて、ぶつかるの?」


 やめろ、さっそく、地雷を踏み抜いてくるな。間違いをスルーせよ。


「もっとマシなラブコメ展開が欲しかった」


「わたしの弾丸があなたのハートを射抜いたじゃない、ゲームで」


「なんで三番目にしてしまったんだ。正直に、六番目に行けば良かった」


 俺は、不意に、そんな言葉を呟いてしまった。


「誰かな、それ」


「銃を下ろせ」


 どこに持っているんですか。銃刀法って知ってますか。


「やだなー。エアガンだよ。本物じゃない。それで六番目って何かな。クラスの女子のランキングかな。その子に戦闘力があるといいんだけど」


「た、ただ、ただ、ロシアンルーレット気分で、グルグルとダーツを回して、6に当たっただけです。つまり告白するのは、六番目という」


「なんのランキングかな」


「ろ、6番目に目があった人ですよ」


 考えろ。六番目の少女が地球上から抹殺されないように。


「それでなんで三番目、んんっ、銅メダルなのかな」


 あっ、終わってそう。僕の言い訳が伝わってナイアシン。

 正直になろう。


「いいます。いいます。これはクラス内美少女ランキングの順番です。あくまで客観的な容姿だけで男子が面白半分で作ったものです」


「それで、君は何番目が、一番なのかな」


 銃口を、コメカミに当ててする質問ではないよね。

 俺のハートがヘッドショットされるよ。


「も、もも、もちろん、三番目です。三番サイコー。三番しか勝たん」


「うん、信じてあげる」


 少女がそう言うと、重量感あるものが机に置かれた音がした。

 モデルガンだったら嬉しいなぁ。


「ロシアンルーレットで弾が出なければね」


「実弾が出たりしないよね」


「やだなー。本物なわけないでしょ。さっ、持って。銃を自分の頭に」


 リボルバーって、もうこのための銃だよね。

 ロシア人は何を考えて、こんなルーレットを回そうと思うのか。


「クラスで三番目に可愛い子が、僕の中では一番好きな女の子です。はい、それともイエス?」


「……はい」


 引き金をひき、カチリっと音が鳴る。


「ふーん、そうなんだ。セーフだね。じゃあ、もう一回」


 えっ、一回じゃないの。2回攻撃は禁止じゃないですか。

 まだ俺のバトルフェイズが終わらない自傷。


「クラスで六番目に可愛い女の子が、僕の中では一番好みのタイプだ。はい、それとも、いいえ」


「い、いいえ…あっ、ぐがぁっ!」


 銃から突然、電気が走ってきた。

 電気の痛みでとっさに放した銃が床に落ちる。


「どう?銃型の嘘発見器なんだけど。バッテリーがあるから本物みたいに重いでしょ。まっ、一番愛してるのはわたしみたいだし、いいかな。許してあげる」


「首の皮がつながったようで良かった」


「浮気は死刑だからね」


「法律が重すぎませ、んっ!!」


 重すぎませんか、と聞こうとしたけど、三番目女子のニッコリとした睨みつけるに屈しました。

 

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[良い点] 6番目の彼女、逃げてえっ!!
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