65. ワタクシの名前
「ああああああああああ…………あれ?」
ワタクシが気づきますと、写真の人物の顔が変わっていきます。まるで、つい先刻までワタクシであったクレア・シャフィーレがこう……現実に存在して、かつ日本人だとしたらこんな顔かな、という感じに。
「なんです、なんですのこれは!!」
そう言いながら、何やらワタクシの顔が光っております。前が見えなくなりました。なんですかコレは!!
『おまけです』
天から声が聞こえてきました。他の方はワタクシの顔を見て、或いは指を差してあんぐりと口を開けています。
『自分を殺した人間と同じ顔では流石に生きづらいでしょう。私からのご迷惑をおかけしたお詫び、という事で、顔と名前は変えておきます』
「ありがとうございますクレア様ッ」
ワタクシは思わず叫びました。既に転生したこの身体の持ち主――眠子様には申し訳ありませんが、流石にワタクシとしましても、居眠り運転は擁護出来ませんし、受け入れる事も難しいところでございました。
『その代わり、これで貸し借り無しです。それでは』
そう言って、声は消えていきました。
ワタクシの顔から発せられているらしい光も、スッと落ち着いていきました。
「……あー、その、クレア、君の顔、なんだが」
リト様がなんと言えばいいのか苦心しながら言葉を紡ぎます。
「あ、ああ、あのー、クレア様からのご褒美みたいなものです」
ワタクシはそう答え、懐のスマホで自分の顔を見ました。先程見た、運転免許証の通り、どこか見覚えのある顔です。
「ふむ、ご褒美、か」
「まぁそんくらいは欲しいよな。……俺はどうなるかわからんが」
裕二様がポツリと呟きました。
「クビになったら会社でも開きましょう。もし先輩がクビなら、まとめてどうせ私もクビでしょうから」
トントンと肩を叩く梨花様。
「アタシの方でも出来る事はしますから、そう悲観しちゃダメですよン」
ムリナ様、いえ、真希様もそうフォローしました。
「……そうだな。諦めなければ道は開ける、はずだな」
理都様がふっと笑みを浮かべました。
そう、諦めなければ、どんな状況でも乗り越える道が見つかるはずです。ワタクシが紆余曲折を経て此処に至ったのと同様に。
「そうだ、クレア。君の名前は?」
リト様の質問に、ワタクシは手元の運転免許証を見ながら言いました。
「ワタクシの名前は諦条紅亜。クレアとお呼びくださいませ」




