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64. おまけのおまけ
「自己犠牲の精神がお強い方ですねえ」
地へと戻っていく魂を見送って、魂の管理者の方のクレアはポツリと呟いた。
全く理解は出来ないし、真似も出来ない考え方だ、そう思っていた。
だがだからといって否定はしない。ああいう気高い魂があると、むしろ自分としては、ああ、私の管理する世界も捨てたものではないな、と思う。
「ノブレス・オブリージュとか言うんでしたっけ」
彼女達が属する、人間と呼ばれる種族、その中でも貴族と呼ばれる立場の者達の考え方として、『位が高いものはそれに見合った義務を負うべきである』といったものだったと思う。クレアもそこまで詳しく覚えてはいないが、人の社会とは中々面白いものだと思ってみていたのは覚えている。
そういう意味で言えば、私もその義務を果たすべきだろうか。
「……まぁ、おまけのおまけくらいは」
自分――本当は全てストレア先輩のせいだと言いたいところだが――にも責任がある。短時間とはいえおかしな転生体験をさせてしまった責任が。なればと彼女は再びキーボードを叩く。義務を果たすために。




