62. 神の手
「なら、私としても一つ手助けをしましょう。先程の特典とは転生とは別に」
カタカタとクレア様はキーボードを打ち始めました。
「転生先は色々と罪を犯しているようです。それに関して無かった事にしましょう」
「無かった事に?」
「ええ。まぁ後で分かります。歴史の改変にはなりますが、そのくらいの事であれば、迷宮入りの事件がまた一つ増えるだけです。どうにでもなります」
「……そう言われると本当に大丈夫なのか不安になるのですが……一旦それはお任せします。ニーチェ様についてもよろしくお願いします」
「勿論。では転生を開始します。二人共、心の準備はよろしいですね?」
クレア様がまっすぐにこちらを見て尋ねました。
ワタクシはムリナ様と顔を見合わせて、はい、と頷きました。
「よろしい。もう一人のクレアさん、貴方はこれから『虎山烈火』という方に転生して頂きます。今より貴方は虎山烈火、その事を常に忘れないように」
「はい」
そう答えた後、……微妙に、微妙にですが、その名前に何となく覚えがあったような気がします。直接知っているわけではないのですが、何故か、何処かで見たような。そんな気が致しました。しかし、今は気にする余裕はございません。一旦捨て置きました。
「ムリナさん、貴方は『岡部真希』という方に転生して頂きます」
「はい、一応、知り合いですので、その辺は抜かり無くやりますよン」
「よろしい。では、転生処理を開始します」
そう言ってもう一人のクレア様が、エンターキーらしきものを押すと、ワタクシ達の魂は光に包まれ、再び地上へと戻っていくのでした。




