61. 作戦説明
さてさて。
なんだかよく分からない流れで悪人に罰を下す流れになってしまっておりますが、これには当然と申しますか、裏というものがございます。それについて、私の方からご説明致しましょう。
話は少し遡ります。
裕二様が同僚のマネージャーの方が亡くなられたという電話を受けた頃の話となります。
「今しがた死んだというマネージャーの方に転生する事は出来ますかねン?」
ムリナ様がクレア様に尋ねました。
「えーと……岡部真希様ですね。魂の方は別の担当が管理していますが、別世界への転生を希望されているそうですので、一応可能ではあります。飛び降り自殺なので肉体面に問題がありますが、まぁそこは特典無しでも対処は出来ます」
「ではそれで。で、アタシの特典は100万でお願いしますねン。それで作戦が決行出来ますよン」
「作戦、ですか」
ワタクシの問いに、ムリナ様は頷かれました。
「あまり時間がありませんので、テキパキいきましょ。まずクレアちゃん――様の方じゃなくて――は、転生場所は裕二さんのすぐ近くにして下さいナ。で、すぐに裕二さんを捕まえて、ニーチェと説得をお願いしますよン」
「無論です」
「で、その時、カードキーを借りて下さいナ」
「カードキー?」
「例のゲームを開発していた部屋に入る時のカードですよン。言えばわかるはずですよン」
ふむ、と頷きながら、ワタクシはよくわかりませんでした。ムリナ様はどうしようとしているのでしょうか。
「今の問題は、裕二さんが暴走しようとしているところ、プロデューサーとディレクターのクズに罰を与えたいところ、大きくはその二点ですよねン。……真希さんに関しては残念ですが、早々に転生してしまった以上は引き戻す事も出来ないでしょうしねン」
「そこまでは出来ませんよ、やりませんよ絶対に」
クレア様が凄く嫌そうな顔で言いました。本当に嫌なようです。
「ならばそれを利用させていただくというわけです。アタシが彼女に転生し、彼女の立場で出来うる限りのプロデューサーとディレクターの不正の証拠を洗い出す。幸い、ちょうど彼らの会社の社長が視察であのプロジェクトのビルに来ているので、何とかして呼び出したりすればハメられると思いますよン」
「凄く大雑把な計画に思えますが」
「仕方ないのですよン。時間が無いのですからねン。……で、そのためには、裕二さんの証言とかも必要となります。彼を連れてくる事が必要になるわけですねン。それの説得を、転生したクレアちゃんにお願いするという。……正直、こちらの話にクレアちゃんを巻き込むような形になるので、凄く嫌なんですけれどねン」
「構いません」
ワタクシは即答致しました。
「元より失った命です。それを使って誰かを破滅から救えるなら、安いものというものですわ」
「……全く強いですねン」
ムリナ様が呆れたような、感心したような、そんな表情を浮かべました。




