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51. もう一人のクレア

 目の前に突然現れた、白髪のサイドテールという髪型で、大体二十代後半の若い外見をして、天女のような羽衣を着た女性の方が、ワタクシに語りかけます。

「この度はお騒がせ致しました。私はクレア・スピリット。魂の管理者。魂の輪廻転生その他諸々、世界の調整を行っている者です」

「たま、しい……。……あれ!?」

 突然自分が喋れた事に驚いてしまいました。しかし視界を動かしても自分らしきものはありませぬ。どういう事なのか全くわかりません。

「ああ、まずはそこからですね。……貴方は()()死にました。ご愁傷さまです。死んでから随分早かったような気はします」

 こんなやり取りを少し前にした気が致します。クレアに転生前にも会って、それから今のクレアになったような……。

「あ、あのときのクレア様ですわね……クレアって名前が被っているではありませんか!!」

「驚くべきポイントが違う気がしますが。……まぁ事実そうなので何とも申せません。一旦私の事は神とでも呼んでください。役割としては似たようなものですので」

 仮の呼び方としては随分と過褒な気も致しますが、一旦置いておきます。今色々言っても詮無きことというかややこしいだけです。

「ともかく事情をご説明致しましょう。率直に申し上げれば、貴方は死にました」

 随分と率直に仰っしゃられるものです。魂と聞いた時点で、といいますか、空に昇っていくあたりで大凡の当たりは付いておりましたが、改めて聞くとズン……と心に落ちるものがあります。そして、そうかワタクシ死んだのか、という実感と、なんでやねんという疑問の二つが浮かびます。

「疑問をお持ちでしょう。何故死んだのかと」

「はい、そりゃ勿論」

「AIの死についてどのように定義すべきかは微妙なところですが。貴方の魂が入っていたキャラクターが動作するサーバが停止された事、そして、そのデータが完全に削除された事、加えて、バックアップも取られていない事から、貴方がたは死んだものとしてこの世界のシステムに判定されたのです」

「……サーバが、停止?」

「その辺りの事情に関しては私も深く介入は出来ませんが、どうやら貴方とやり取りしていた人間の上司に当たる存在が、貴方がたの活動していたサーバを売却したようです。それだけならば、サーバの再起動により貴方がたの生命活動が再開される可能性はあったのですが、その方々は電源停止後、既存のデータを全て削除したようで、それにより貴方がたの再起動は叶わない事となりました。これを以って、この世界を管理するシステムは、貴方がたの魂を『再生可能性なし』と判断しました」

「は、はぁ」

 世界を管理するシステム、というのもなかなかのパワーワードのように思われます。ワタクシには全く理解出来ませんが、どうやらワタクシが死んだという事はわかりました。

「……貴方、がた?」

「はい。後ろを御覧ください」

 ワタクシが後ろを振り向くと、そこには。

「また此処に来てしまいましたねン。しかしまぁ、なんというか、まさか一緒に来る事になろうとは思わなかったですねン」

 ムリナ様らしき魂もまたそこに居りました。

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