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40. 対話の刻

「さて、聞こうじゃないか」

 私は研究を進めるようフレッドとアクティに機材の類を渡して指示した。二人は静かに頷き、部下達に指示を始めた。二人の顔は相変わらず曇っている。この世界の構造に絶望しているためであるが、それも致し方ない事である。

 それらを横目に奥へ進み、リラを連れて会議室の椅子に腰掛けた。会議室入口の護衛には、フレッドとアクティに従うように言い、人を払った。これから話す内容は、彼女次第ではあるが、何となく他の者には聞かれない方が良い気がした。クレアの件というのは、私の考えうる限り、他人にとっては良い話にはならないように思えたのだ。

「さて」

 私は切り出した。

「クレアの何の話だ」

「その前にお聞きしたいことがありましてねン」

「うむ?」

 突然切り返された事には少し驚いたが、そのまま聞くことにした。

「ニーチェ様は……この世界についてどう思われていますか」

 随分と漠然とした質問である。だが私は確たる回答を持っている。彼女はそれを知って聞いてきたのだろうか。だとすれば、注意せねばならない。同士となり得るか、それとも。

「……ゴミみたいな世界だ」

 しかし私は、自らの心に嘘を吐く事は出来なかった。

「と申しますのは……クレア様の、”今後”について、でしょうかァ」

 そこでクレアの名が出てくるというのは。

「それは、その事を知っている、という意味に捉えて良いか」

「はい。そしてェ、ご安心頂きたいのですが、アタシはそれを変えたいと思っている人間でしてェ」

「ふむ?」

「アタシはクレア様の未来を知り、そしてこの三日間を繰り返し経験している者でもあります。ニーチェ様にお声がけしましたのはァ、ニーチェ様もそうなのでは無いか?と思いましてねン」

「……」

 方便、嘘、偽り、そう捉えることも出来る。だが、はっきり言って、こんな嘘を吐く理由は無いはずだ。となれば……。

「ああ、そうだ」

 認めて、仲間に引き込むのが一番良いだろう。

「私は何れ訪れる未来を変えるために行動している。そのためにここの連中に色々と吹き込んであの杖を作らせた」

「何れ来る未来とは、やはりクレア様の――」

「そうだ。……彼女の追放だ」

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