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3. 朝起きて慟哭する

「なんでですのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!??????」

 叫びながら起き上がりますと、そこはあたたか~い寝室、ベッドの上。

 ……んんん?

 ワタクシは眼前の光景が信じられず、キョロキョロと辺りを見渡しますと、記憶に残っているワタクシの家の寝室そのものでございました。本棚、机、ベッドの掛け布団の模様、あらゆるものに見覚えがございます。窓からは光が差し、チュンチュンと鳥の声が外から聞こえてまいります。

「どうされましたお嬢様!!」

 メイドのカエがバタバタと部屋に入ってきます。

「い、いえ、えっと、何でもありませんの。へ、変な夢を見てしまいまして」

 そう言うとカエは慈愛の笑みを浮かべて、ワタクシの頭をそっと抱え込むようにその暖かな――いや言うほど暖かくは無い――手で抱きかかえました。

「ああ可愛そうなクレアお嬢様。落ち着いて下さい、大丈夫、カエは此処におりますので」

 そういって彼女のその結構大きめな二つのお山にギュウギュウとワタクシの頭を押し付けます。いい匂いですが息が出来ません。

「むぐーっ!!むぐーっ!!」

 離してくださいましと慌てて手でぐいぐいとそれを押し込みますと、漸くカエは気付いたようです。

「あら失礼、つい」

 そう言って手を離しました。

「げほげほ。焦りすぎですわ。ワタクシは平気です。夢なんてパパパッと忘れてしまえば良いのですから」

 そう言って胸を張りましたが、如何せん忘れることの出来ない夢でございました。しっかりと記憶には刻まれております。

「良かったです。お食事の用意は出来ておりますので、着替え終りましたらどうぞ。お父上とお母上は相変わらずお忙しいということですので、先にお済ませになられました」

「わかりました。では少し出ていて下さいまし」

 カエはその言葉に深く頷くと、部屋をトトトと出ていきました。

「はぁ」

 ワタクシは深い溜息を吐きました。

 今のは本当に夢だったのでしょうか?ワタクシには到底そうは思えませんでした。鮮明に残るあのボロ舟の揺れ心地や、シグニ王子の冷ややかな視線。あれは夢ではなく記憶、過去の経験以外の何者でもないように思えます。

 ですが過去の経験だとすれば、当然別の疑問が生じます。何故この屋敷は、この土地は、何よりワタクシは無事なのでしょうか?

 着替えながら窓の外を覗くと、平穏無事で穏やかな風景が広がっております。木々、山々、川の流れに至るまで、隕石のいの字も無かったかのようになっております。

「……本当に夢だったか、あるいは……」

 胸元のリボンを留めて、考えをまとめる。

「あるいはループ?本当にゲームの世界にでも入り込んだとか?」

 馬鹿げた発想ではございます。普段のワタクシなら愚か者めと高笑いで聞き流すところですが、しかし自分で体感した一連の事象と現状を踏まえますと、それ以外考えようがないと思えるのです。

 ではどうするべきでしょうか。

 カレンダー(この世界にもあるのですね)を見ますと、ワタクシが追放された日の二日前でした。明日には父母が逮捕され、明後日にはワタクシが追放されるというタイミングです。

 えっ、ここから入れる保険があるんですの?

 いやあるわけないじゃありませんか!!どう取り繕うにしたって年がかり、まずゼシカに対する元のワタクシの行動を改めるところからせねばなりませんのに!!二日間で何をしろと!!いやそもそも、隕石の落下なんて事象にどう対応しろと言うのですか!!

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