29. 何を言っているのか分かりませんわ!!
「やはり此処に居たのか、フラッド卿、アクティ夫人」
シグニ王子がキッと目を細めてお父様とお母様を睨みつけました。
「ええ居りました。そして貴方の大きな声で此処が突き止められているのを知りました。踏み込んでも無駄です。既に脱出しております」
シグニ王子が「しまった」という目で口を塞ぎました。遅い!!
「なるほど我々が国家転覆。確かにその通り。良く分かったものだ」
父フラッドが目を瞑りながら感心そうに言いました。
「しかし!!」
目を見開きました。
「その理由が!!我が娘クレアとの結婚破棄とはどういう事だ!!こんな良い娘と婚約しておいて、一目惚れした相手と結婚したいだと!?冗談にも程があるわ!!」
『そこかよ』
「う、そ、その点に関しては、何とも、返す言葉も無い……ッ!!」
『言い返しなさいよ』
天の声がツッコミを入れますが誰も聞いちゃいません。
「ドロッドロの光景というかもはやギャグですねン」
遠くでムリナ様がおっしゃいました。そうですわね、これはもはや笑うしかありません。乾いた笑いですが。
本人達は至って真面目な顔で真面目にやり取りしてらっしゃいます。
「やはりこの国は腐っている!!このような王子が跡継ぎである事もそうだが!!現国王の治世に関しても不満が溜まっている事に君は気が付かないのか!!」
父がシグニ王子を指さしながら言いました。
「そ、それは……」
「食糧難!!長引く他国との戦争!!現れ続ける魔獣達!!我が国を取り巻く環境は最悪だ!!しかしどうだ!?現国王は何の手も打たずのんべんだらりと過ごしている!!王子に至ってはこの様だ!!既に相手が決まっているはずの婚約を破棄してまで恋愛などに現を抜かそうとしている!!この国はどうかしている!!」
「そうよ!!」
母アクティが相槌を打ちました。
「だから我らは決めたのだ!!この国を滅ぼし、一から全てをやり直す!!そのための儀式は先程完成した!!」
「えっ」
「本来であれば明日実行する予定だったが……もう我慢がならん!!アクティ!!」
「はい、アナタ」
そう言って母は何かの杖を父に手渡しました。
「マズイ気がする」
シグニ王子は汗をだらだら垂らしながら言いました。ええ、マズイです、多分。
父はこちらの様子に目も暮れず、杖を天に掲げて叫びました。
「繝。繧ソ繝ォ繧ケ繝・ヰ繝サ繝イ繝サ繝溘ち繝サ繝翫き繝ュ繧ェ繝サ繝吶Ο繝帙・繧、繧ォ繧サ繝サ繧イ繧ス繧ス繝ェ繝輔・繝ャ繝輔・繝ィ繝サ繧キ繝」
「えっ、なんて言いましたン?」
ムリナ様の問いかけには誰も答えず、その代わりに上空に何かが現れ、ワタクシ達に影を落としました。
「空を見ろ!!」
シグニ王子が空を指して叫びました。そちらを見ると、巨大な影の正体が分かりました。予想通り、と言えばその通りではあるのですが。
隕石でした。
巨大な隕石が空を包み込んでいます。そして、それはどんどん近くなってきているのです。
「縺薙・譚悶r菴ソ縺医・逾槭・險隱槭↓繧「繧ッ繧サ繧ケ縺悟・譚・繧九ゅ%繧後r菴ソ縺医・縲∽ク也阜繧呈サ・⊂縺咎ュ疲ウ輔b菴ソ縺医k縺ョ縺!!」
「もう何を言っているのかわからないのですが!?」
何かこうバグというか、文字化けみたいな言葉を発しています。段々怖くなってきます。いや!!既に隕石が落ちているという事実の時点で怖いのですが!!
「お父様止めてください!!」
ワタクシは叫びました。ですが、もはやお父様にワタクシの言葉は届いていないようです。
「縺輔=螟ゥ鄂ー繧域擂縺溘l!!縺薙・諢壹°縺ェ蝗ス縺ォ!!蝗ス繧定ェ阪a邯壹¢繧区ー代↓陬√″繧・!」
「蝗ス繧定ェ阪a邯壹¢繧区ー代↓陬√″繧・!」
とか言っていたらお母様まで同じような言語を喋り始めました。
「な、なんなんですのおおおおおおおおおお!?」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
ワタクシの絶叫と共に、隕石は落下しました。
そして、また、意識が薄れていきます。




