26. 父母を尋ねて
洋風の港町の街中を歩き、ワタクシは改めて父母を探しに探しました。潮風がワタクシの鼻にこうツンときます。何度も体験している事ではあるのですが、改めてこう街の中をキョロキョロと見回して人を探すとなると余計に気になってくるのです。
「ゲームの世界とは思えませんわね」
『頑張って作ったからね』
梨花様が胸を張りました。
「加えて言えば――人にとって世界とはある意味、五感による電気信号で認識されるものですからねン。しっかり出来ていれば本物の世界として認識出来るという事なのかもしれませんねン。プログラムの世界もまた所詮電気信号ですからァ、精巧に出来た電気信号により、アタシ達にとっては実在する世界という認識になっているんでしょうかねン。脳がそういうものであると認識しているというかァ」
「??????????????????????????」
ワタクシの頭の上にクエスチョンマークが数え切れない程上がったような気が致します。
「或いはワタクシ達の居た世界もまた作られた世界なのか。いやはや可能性は色々ありますねン。シミュレーション仮説なんていうのも興味深いものがありますしン」
『何言ってるのかわからんからとりあえずさっさと探してくれ』
空から声が聞こえ、裕二様が何かを見せてきました。
『これ。この二人』
設定資料か何かのようです。鋭くピョンと伸びたヒゲが特徴的な紳士的男性と、幾つもロールを巻かれた金髪の貴族的女性の絵です。ワタクシの記憶が訴えております、この二人こそが、今回の捜索対象にして、この三日間のループの中で一度も遭遇した事のない不可思議生命体、ワタクシことクレア・シャフィーレの父母、フラッド・シャフィーレとアクティ・シャフィーレだと。
『確か、街外れの倉庫で色々と画策しているはずだが、AIの教育のせいで実際は別の所にいるかもしれない』
「なんと面倒な設定を。まるで本物の人間のようでございますね」
「そういうのを目指せって言われましたからねン。文句はディレクターのポケカスタコゴミとプロデューサーのクズアホバカブタに言ってほしいですねン」
『言ってる』
「知ってますよン」
どうも向こうの世界の、裕二様やムリナ様の置かれている/いた状況というのは、それはそれは大変なようで御座います。そういうのを夢と希望あふれるゲーム世界に持ち込まないで頂きたいという気持ちが御座いますが、ワタクシも世の中色々あるのは存じ上げておりますので、口を噤むことに致しました。
街は広く、『街外れの倉庫』という場所に着くときには、既に夕刻となっておりました。
倉庫らしき場所の前に立つと、中の音が薄っすらと聞こえてまいります。
「メ……スッバ…ミカ・ナ…」
「…セ・ゲ…リフ……ヨ・シ……」
怪しげな呪文が唱えられているように聞こえます。
「ここでしょうか?」
「恐らくそうですねン」
ムリナ様が頷き、
「ん、クレア?なんでこんな所に?」
後ろのシグニ王子が尋ねて来ました。
……シグニ王子?




