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25. 二人目が居るとあと一人くらい居そうで怖い

「なんでだよ!!」

 思わず俺は叫んだ。

 周りの開発者がジッと睨んでくるが知ったことではない。

「なーんでお前もゲームに転生したんだよ!!」

『お前もってなんですかっ、失礼でございますねン。他に誰が転生するというのですねン?』

「した人がいるのよ、さっき見てたでしょ」

『……え、クレア?クレアの事を言ってますかァ?』

 相変わらず変な口調である。

「うん」

『うひぇぇぇぇっ!!なんでそんな事にぃぃぃぃっ!?』

「俺が聞きたい」

「そもそもアンタマジで死んだの?」

『ええ。考え事してたらトラックに轢かれて。その後トラックも壁にぶつかって爆発炎上してましたよン。空から見てうひぃってなってましたよン』

「ひでぇ事故だ」

『んでっでででっでー、気づいたらこちらにいましてねン。それでこっちに来たらそらやる事は一つってことで、クレアちゃんを見張っていたんですよン』

「話が繋がってない気がするんだが」

『いやいやいや、アタクシがこっちに来たら当然クレアちゃんを見張ってあげるというものですよン。シナリオ書いてたらクレアちゃんが可愛そうになっちゃいましてねン。事故の時も、どうにか助けてあげられないかずっと模索していたくらいなんですよン』

 彼女がカタカタとキーボードを打ち込んでいる時、たまに考え事したりおんおん泣き出したりしていたが、それは全部そのせいだったか。

「わかるわかる……。悪役だからって可愛そうよねぇ」

 梨花の目にまた涙が浮かび始めた。

「落ち着け。ともかく、その、えーとなんだ、もう少し事情を説明しよう」

『んにゃその心配は御無用ですよン。今の話で大体の事は把握してるんですよン』

 そう言うとリラ……ムリナの顔が急にキッと真剣な目つきになった。

『問題は二つ。

 そもそもアタクシやクレアちゃんのように、この世界に転生している事が一つ。

 そのせいで多分AIの思考ルーチンにバグが出てるんじゃないですかァ?

 二つ目、クレアちゃんの追放を契機にループが発生してると思うんですよねン。

 全然日にちが進まないから多分そう。で、その原因が分からず皆困惑状態。

 ……という感じでどうですかねン?』

「……」

 死んでもムリナ、『無理』の無い女、口調は兎も角状況に対する理解は完璧である。

「まぁ、そう」

『ですよねン。それでアタクシも困っていたのですよン。何せ手掛かりも何もないのですからねン』

「まさかとは思うが、お前がやってるとかじゃないのか」

『アタクシはそんなヘマしませんよン。このNPCは元々何の力も無いモブですしねン。

 そう、アタクシが関係しているわけでもなく、さりとてクレアちゃんが悪さしている――これはバグ的な意味で――という事もないわけですねン。

 となると他に要因があるはずなのですがン、そこに関してはアタクシも困り果てているところなのですよねン』

 リラ=ムリナは考え込みながら言った。

『そもそも滅亡のデータはァ……お察しかと思いますが、前ゲームのデータをそのまんま参照しちゃってるものと思うのですよねン。そんな事出来るのはこの世界の構造、即ちプログラムやエンジンに関して精通している人間に限られると思いますゥ。そんな奴他にいるのかと。そういう問題があるわけでございますよねン』

「お前じゃないとすれば全く心当たりが無い」

『ですよねン。アタクシも裕二さんの立場だったらそう思ってますものォ』

 そう言うとリラ=ムリナ……もうムリナでいいや。ムリナはまたうーんと唸り始めた。

『そもそもそんな世界滅亡なんて悪さをするキャラクターを用意した覚えがないのですよねン。強いて言えばクレアちゃんのお父ちゃんお母ちゃんは物騒な事してますけどもォ』

「国家転覆の話?」

『そうソレ。でもあれは……その、特に決めてないんですよねン』

「決めてない?」

 よく意味が分からない。

『あー、悪く言いますとですねン?あれはもう、そういう事が起きる!!としか決めてなかったんですよン。ぶっちゃけ過程がどうあれ、クレアちゃんが追放されれば、クレアちゃんとシグニ王子との婚姻が解消されればそれでいいと思ったので、そういう疑惑が上がってクレアちゃんが追放される、という流れだけを決めてたんですよン』

「じゃあ父親と母親は何をやっているんだ?」

『さぁ。とりあえず町外れで引き籠もっている事にしてます。見てみます?』

「……関係あるかなぁ」

『分かりませんねン。でも手掛かりは得られるかもしれませんよン』

「ならクレアも呼ぼう。クレアも父母には会ったことが無いから」

『えっ、クレアちゃんと一緒に行動出来るんですかァ!?すごーい!!』

 きゃっきゃと喜ぶムリナを後目に、俺は何かが頭に引っ掛かって離れなかった。

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