18. とりあえずの方針は決めましたわ
『何故クレアが追放されると世界が滅亡するのか?誰が何故そんな事をしているのか?誰、というのはNPCだと仮定して、何故、の部分にフォーカスすると、可能性としては大きく二つがあるんじゃないかとは思う。
1つ目はクレアが追放されたから。
『クレアの追放』というイベントを契機に世界の滅亡イベントが発生しているという考え方だが、こっちは正直考え辛いとは思っている』
「どうしてですの」
『そんなイベントが無いのが一つ。もう一つは、言い方は悪いが、クレアは悪役であり、薄々気づいていると思うが、殆どのNPCとの好感度が低く設定されている。一応は初期値だが、二日目の親の没落イベントでガッと下がる。そんなキャラクターの去就で世界の滅亡なんて起きるだろうか』
「……起きない気がしますわね」
ワタクシはこの流れに不満は抱いておりますが、それでもその点に関しては肯定せざるを得ませんでした。
『勿論可能性としてはあるので排除はしないが、ちょっと考え辛いとも思っている。なのでこれは一旦置いておく。
2つ目はゼシカとシグニ王子との結婚の確定がこのタイミングだから。こちらの方が可能性としてはある』
「ゼシカが主人公だからですか?」
『その通り。ゼシカとシグニはここで婚約となり、そこからシグニ王子のルートへと突入する。シグニルートが正規ルートで、他のキャラクターのルートに突入するには、この二日間でゼシカ=プレイヤーがフラグを立てなければならない。
つまりクレアが追放された時点で、シグニルートがほぼほぼ確定するわけだ。
それをよく思わない者がリセットを掛けている。
そう考える方が自然なような気がする』
「確かに、それは納得出来る内容です」
『NPCがリセットを掛けるという時点で狂った話な気もするけどね』
梨花様が口を挟みました。
『そりゃまぁ、そうなんだが、そこについてはもう仕方ないと考えよう。それもバグだ、潰すしかない。潰すためにも一旦この仮説を提唱したい』
「とすると、二日の間に他の攻略キャラの思考を観察すると?」
『そうだな。三日目はもうほぼほぼ行動が固定される。二日の間に各攻略キャラの思考や好感度の動きを見て、何かおかしな挙動をしていないか確かめよう』
そこまで言って、裕二様は口をつぐみ、恐る恐る開きました。
『……君には不快な思いをさせる事になるだろうが』
「ワタクシは結構です、もう慣れましたわ。それ以上に、このままループが続く方が不快でございます。ループしなければ再起の道もございましょうが、この三日間に閉じ込められては、再起も何もあったものではございません。ループを突破するためならば、バグを解消するためならば、ワタクシは何でもやる覚悟ですわ」
“何でも”なんて、随分と軽々しく言ってしまった気も致しますが、今のところのワタクシの本心です。他人に蔑まれるよりも、ただただ不毛な三日間を過ごす事の方が不快なのです。
『ありがとう、ありがとう、ウチの方で作り込んだバグのせいで酷い目に合っているというのに……』
梨花様が何やら泣いております。どうやら彼女は涙もろいようでございます。
『それじゃあ……各キャラについて見ていくとしようか』
その様子を横目に流しつつ、裕二様が提案するので、ワタクシは頷きました。