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14. 一日目を改めて見てみますわ

 一日目。

 ワタクシは普通に過ごしました。特にやる事はございません。学期末の試験に向けた準備くらいでしょうか。

 一応自分なりに何が出来るかを探るべく、行動可能な範囲の調査を行いました。

 まず、シグニ王子との面会は叶いませんでした。どうもこの時点でワタクシに対する好感度はかなり低くなっているようです。詰みでは?

 ゼシカとも顔合わせをしてみましたが、なんというかフツーの会話しか出来ませんでした。AIにしては極めて自然な会話でした。設計者の優秀さが、プログラムのプの字も分からない門外漢のワタクシにも理解出来るというものです。

 他の方々とも会話したものの、大した反応は無く、というか殆どの方々が目を合わせるだけで逃げていきます。オオ元のワタクシよ、どれだけ嫌われていたというのでしょうか。

 父と母とは顔を合わせる事が出来ませんでした。忙しいからと朝どころか数日前からずっと家を空けています。

 二、三度兵士の方々が父母を訪ねて参りました。この時点で既に目を付けられていたようです。詰んでるようですね、あの方々。いやワタクシも含むのか。というか何を考えて国家転覆なんて企んでいるのでしょうか。ワタクシには全く理解が及びません。流石に兵士の方々も、ワタクシが無関係である事は察してくださっているのか、温かい目で優しく対応して下さいます。ちょっと惨めになるからやめろっ!!と言いたくなりましたが、グッと堪えました。人の善意……善意?は大人しく受け取るべきです。

 父母に関してはともかく……。得られた情報はございませんでした。何たること。情報収集を主にして行動してもこれではどうにも困ってしまいます。トホホのホ。


***************************


 こちらの方でクレアの動きを見つつ、各NPCやプレイヤーキャラクターの好感度(最大100、最低0)の動きを見てみる。なおクレアの数値については文字化けして見えない。人の心は数値化出来ないという事だろうか。改めて思うが本当になんでこんな事になっているやら。

 シグニ王子――最初に攻略対象となるNPCの好感度(最大値100)は、この時点でゼシカに対し80あり、クレアに対しては30しか無い。負け確定ヒロインみたいな設定だ。元々メインルートで、かつどちらかというと恋人になってから様々な波乱万丈に見舞われるシナリオなので、好感度の数値が極端な設定になるのも当然ではあるのだが、ここまで脈が無いと見ていて可哀想になってくる。

 ゼシカからクレアに対する評価は50。中央値であり初期値だ。ゼシカ=プレイヤーキャラクターの挙動にバグは無いらしい。ゼシカとクレアの会話にも、特に違和感は無い。その他のNPCの挙動も同様だ。

 父母に関して調べてみる。一応NPCとしては存在しているらしい。

 父はフラッド・シャフィーレ。革命志向が強いキャラクターとして設計されていて、今の体制を変える事だけを夢見ている男というのが設定である。それが人を惹きつけるという設定で、特に平民NPCからの好感度が高い。

 考えは分からんでもない。俺も今の体制については不満がある。

 俺は不在のPMの席、その横の無能なディレクターの方を見た。プロデューサーの指示を聞いて頷くだけ、後は全部PMにお任せ、それでもスタッフロールの先頭に配置される、それがあの脂ぎったデブだ。いつか下剋上して(ぶん殴って)やりたいが、そんな勇気は今のところ無い。実行に移すだけこのゲームのキャラクターが少しばかり羨ましく思う。


 俺はここで頭を振って思考を巻き戻す。今は現実で革命を起こす話ではない。


 母はアクティ・シャフィーレ。簡単に言えばミーハーな性格で、かつ惚れれば一直線。フラッドの演説を聞いて格好良いと判断し惚れ込んで結婚したという設定になっている。彼女の父親が資産家で、父親もまたフラッドに惚れ込んでいるので、莫大な資金を提供しているという事になっている。

 この辺りの設定を考えたのはムリナなわけだが、なんでこんな設定にしたのか、これだけは彼女のメモが残っていた。なんでも、「悪役のクレアを徹底的に叩きのめすために救いようのない設定にしておいた」との事である。これは彼女には見せられない。

 ともかく――二人はゲーム開始と同時に既に行動=王政打破のためのクーデターの準備を開始しており、そのせいでクレアは父母に会う事が出来ないようになっているようだ。何処に居るのかについては設定資料がない。ムリナが残しそびれたのだろう。彼女はちょうどここ数日、AIを取り込んだ事などの方針転換を踏まえ、設定資料の修正をしていた。直しきってくれればと思わなくもないが、こんな事態は予想出来ない、仕方ない。

 ともかく、二人の去就が今後に影響するとはあまり思えない。一旦置いておこう。

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