11. 世界間通信の確立
空に何か顔、人の頭部のようなものが浮かび、ワタクシと同時に叫んだものだからワタクシびっくりしてしまいました。叫びたくなりましたが、その前に天の顔が「「ぎゃぁぁぁぁっ!!」」っと叫び声を上げて、ワタクシギョッとなってしまいました。ですが不思議な事に、カエが飛び込んで来たりはしません。窓の外にいる他のメイド達も何の反応もしておりません。
なんで?
ワタクシはさささっと着替えて廊下に出て、カエに尋ねました。
「ねぇ先程大声しませんでしたこと?」
「いいえ?お嬢様の声しか聞こえませんでしたが。神様がなにやらと」
「……そう。ならいいです。今から食事参りますので先に行っていて下さいまし」
「承知致しました」
カエはサササッと廊下を歩いて行きます。ワタクシはそれを見届けて一度部屋に戻り、天に向かって囁きました。
「少し待っていて下さいまし。後程お話しましょう」
天の二人は頷きました。
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「俺の頬抓ってくれる?」
「マゾの自己申告ですか?」
梨花はそう言いながらも思い切り俺の頬を抓った。
「痛ったたたたたたたたっ!!もう少し加減しろ!!」
「抓ってくれっていうから」
「抓りすぎだしマゾじゃねぇよ!!漫画みたいな対応しやがって!!」
だが今起きている事は漫画のような出来事である。
やはりクレアのAIにバグがあるのだろうか。いや、そうだとしても、こんな事が起きるとは思えない。マスターロムでプレイしていて、ちょうどAIの話になったのでクレアに画面を合わせていたせいだろうか。声は俺のディスプレイからしか聞こえない。梨花はコピーデータを弄っている。が、同じ事は起きない。どうやら俺の、いや、マスターロムに限って発生する状況のようだ。
夢じゃないことを確認して、俺は改めてディスプレイを覗き込んだ。
『少し待っていて下さいまし。後程お話しましょう』
とテキスト欄に表示されたし、そういう囁き声もしっかり聞こえた。
「……どうなってんだ」
「私が分かると思います?」
「分からないと思ってるからお前には聞いてない、これはただのボヤキだ」
適当に流しながら考える。
わからん。
とりあえず尋常ではない、異常事態が起きている事だけは分かる。
「……お前これどうする?」
「どうするって……とにかく話をしてみるしか無いんじゃないです?」
「そうだなぁ……」
梨花に聞いてはみたが、元よりそれ以外考えていなかった。それくらいしか思いつかないともいう。
仕方ないので、彼女の言う通り、少し待つことにした。