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ヒーローズ•オブ•アルメリアス  作者: とりぷるとろわ
最終章 ヒーローズ•オブ•アルメリアス
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『なぜ奴だけ強いのか』

 ーロストマグナの拠点ー


 マシュラはある物を見ていた。

 それは幅3メートル、高さ10メートルという巨大な培養カプセルであった。


 そのカプセルにはある生物が入れられていた。


 それは人間…正しく言えば、人間に近い形の怪物であった。


 がっしりとした体格。

 胸の筋肉はまるで岩のように大きい。

 大木のような巨大な腕と脚、しかも腕は4本ある。

 その内の2本は肩から生えている。

 身長は3メートルほど。


 「…ふふ」


 怪物を見てマシュラは笑った。

 

 マシュラはこの怪物に近い姿をしていた者を()()()()()

 忘れるはずがない。

 雷帝、死神、勇者。

 『三強』と呼ばれる超人を超えた強者達に最も近い実力を持っており、その3人のうち誰かが死んだ時、その後釜になるのは絶対に彼であると、その者は言われていた。


 「…ねぇ。これのモチーフは誰?」


 隣で何やら大量の紙を弄っているロストマグナに向けてマシュラは聞いた。

 ロストマグナは、マシュラの方を向かずに質問に答えた。


 「聞かなくても分かるだろうに。

  大王だ」


 「やっぱりね」と言いながら笑い、マシュラはカプセルの方に視線を戻した。

 そして怪物を舐め回すように眺め、また笑った。


 忘れるはずがない。

 大王と戦った時の記憶。

 

 あの戦いでは、自分とロストマグナ、そしてヨヨニピトが前衛で、グリスクリムとレディが後衛。

 残りのメンバーは確か、『騎馬王』の相手をしていたっけか。

 強かったなぁ、大王は。

 2日間にも及ぶ戦い。しかも不眠不休ときた。

 最初のうちは楽しかったけど、後半になってくるとそろそろ終われという気持ちしかなかったな。


 とマシュラは心の中で思った。

 

 その時だった。

 ガチャ、っと遠くにある扉が開いた。

 入ってきたのはボルドスであった。


 「…うわ」


 ボルドスはマシュラを見た瞬間、身体をびくつかせた。

 それを見た彼女はプクーと、頬を膨らませた。


 「何その反応。まるで幽霊を見たときみたいな」

 「…まさかここに戻ってくるとは思わなかったんですよ」

 「いいじゃんべつに。決戦の日まで暇だし」

 「まあ、構いませんけど。

  ところでロストマグナ。あの者に連絡は入れましたか?」


 ロストマグナは、手に持っていた数枚の紙を重ね、それを両手でしっかりと持ちトントンと机に叩いて揃えた。

 そして一呼吸置き、ボルドスの質問に答える。


 「入れた。こっちの準備は出来たとな」

 「返事は?」

 「今朝来た所だ。あと2週間ほど待ってほしいとな」

 「…念の為聞きますが、それを了承したのですか?」

 「もちろんだ」


 ボルドスはそれを聞くと、「そうですか」と呟いて近くにあった椅子に座った。


 「ええーなんで? 待つ必要ある?

  奇襲とかすればいいのに」


 するとマシュラが、首を傾げながら言った。


 「あいつに奇襲の類は効かん。

  する前に気づかれるのがオチだ」

 「…あっそ」


 面白くない。と言いたげそうな感じのマシュラ。

 

 (グリスクリムが居てくれたら、よかったんだけどなぁ…)


 そう考えながら、マシュラは部屋をうろちょろする。

 それを気にせず、ロストマグナが言った。


 「マシュラ、ボルドス…前から気になったことがあるんだが…言っていいか?」

 「なにー?」

 「突然どうしましたか?」


 2人は返事をする。

 ロストマグナは、自身が今使っている机の隣にある棚からある物を取り出した。

 

 それは、蓋の付いた棒状のガラス瓶であった。

 瓶の中には翠玉色の液体が入っていた。


 「この薬についてなんだが、ある事が気になってな」

 「あること…ですか?」

 「そうだ。

  ボルドスはもう知ってるが、この世界に来てからこの薬を飲ませたのは25人。死んだのが11人、能力なしが13人…その内すぐ俺に歯向かってきて死んだ馬鹿が6人いるから、実質能力なしは7人だがな。最後に能力持ちが1人だ」

 

 ロストマグナの言葉に、マシュラが「おかしい」と言った。


 「25人中能力持ちがたったの1人?

  少なすぎない? もっといてもいいのに」

 「そうだマシュラ。その通りだ。

  おかしいんだ。能力持ちがたったの1人なんてのは。あと7、8人いてもおかしくはないんだ」


 マシュラの疑問に、ロストマグナが返す。

 続け様にロストマグナが言う。


 「もう一つおかしいのは、覚醒者になった者たちの身体能力及び筋力の向上、そして再生能力だ。

  覚醒者になった14人中13人が、俺の予想を下回るほどに弱かったんだ。

  覚醒者になった場合、超人的な力と再生能力が手に入る。だが、結果はどうだ。

  ある者は覚醒者になる前と変わらないレベルの力だった。

  ある者は再生能力を持っていなかった。

  ある者は逆に弱体化していた。

  …何人かは自分が強くなったと思っていたがな」

 「14人中13人がね…あとの1人は?」

 「イズミジンだ」

 「誰それ?」

 「さっき言った能力持ちの1人のやつだ。

  俺はイズミが能力持ちだと知った後、『  』に気づかれないように監視していた。

  そして見た。イズミが機械人形と戦う所を。

  そして気づいた。イズミは残りの13人よりも遥かに上回るほどの身体能力を待っている。再生能力も俺たちと同レベルの速度だ。

  本人の戦闘技術はまあ…高いとは言えんがな」


 ロストマグナが一呼吸置き、さらに話す。


 「なぜイズミだけ、あれほどまで強くなっていたのか疑問に思っていた。

  なぜ奴だけ強くて、あとの14人は弱かったのか。

  …ある日俺は気づいた。

  14人はこの世界の者で、イズミは別世界から来た人間だと」

 「別世界から来た人間?

  私たちと同じで黒海を突破してきたってこと?」

 「いや、あいつはレディが『トラベル』の仕組みを応用して作った転移陣で呼び寄せられた人間だ。

  話を戻すぞ。

  失敗した14人はこの世界の者、超人の力と再生能力と電気の能力を得たイズミは別世界の人間。

  俺はある一つの仮説が浮かび上がった」



 「この世界は何らかの理由で覚醒者を拒否、又は拒否しようとしている」



 ロトスマグナの言葉にボルドスが驚き、マシュラが「はぁ?」と言わんばかりのムカついた顔をした。


 「なにそれ。何の理由があって覚醒者を拒否してるの? そもそも拒否できるの?」

 

 マシュラが疑問の声で言った。

 そしてロストマグナがすぐさま言葉を返した。


 「自分で言っておいてなんだが、俺にもよく分からん! だが、この仮説が1番しっくりと来る」

 「バカみたいな仮説。笑っちゃいそう。

  ね、ボルドス」


 マシュラはそう言いながらボルドスの方を向く。

 だが、ボルドスは「ええ」とも「そうですね」とも言わず、顎に指を当てて考え事をしていた。


 「なに? もしかしてロストマグナの言う事に一理あるとでも?」


 マシュラがボルドスの顔を覗き込みながら言った。

 ボルドスは、視線をチラリとマシュラに向けて答える。


 「いえ。 ただ、そういう考え方もあるのか…と」

 「ボルドスは何だと思ってたの?」

 「単にロストマグナが作った薬の出来が悪かったと思っていました」

 「おいおい」


 ボルドスの言葉に突っ込むロストマグナ。

 そしてため息をつき、2人に再び話しかける。


 「別に出来は悪くない。

  『腐れ知識の学者』から教わった製作方法で作ったやつだしな」

 「あの性格ゴミクズのハゲジジイから?

  よく教わろうと思ったね」


 マシュラが呆れたように言った。


 「…それが自分にとって有益な物なら別に構わん。

  ちなみに、あれも学者から教わったものだ」


 ロストマグナは、先程マシュラが眺めていた培養カプセルの中にある怪物に、指を差した。

 マシュラはそれを見て、笑った。


 「ハハハ! なんだ、あれも学者から教わったやつか。

  そうならそうと早く言ってよ! ハハハ!!!」


 大きな笑い声を出すマシュラ。

 彼女の声が、部屋中にこだました。

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