『ゲーム好き』
デライトとカームは床に座ってテレビゲームをしていた。
プレイしているのは対戦型ターン制ストラテジーゲーム。
つい最近デライトがある世界から購入した物だった。
24インチのモニターを床に起き、モニターの近くにはゲーム機本体。
コントローラーのボタンをカチャカチャと押しながら、2人は順番に自身のキャラクターを操作していた。
『デライトは中央の勢力を動かし、カームに攻撃をしかける』
「そういえば、和泉くんをまた呼んだそうだね」
デライトはゲームを操作しながら、カームに話しかけた。
カームも、ゲームを操作しながら答えた。
「何か悪いですか?」
『カームは守りの勢力を出し、デライトの攻撃を防ぐ』
「いや別に。
ただ、私を呼んでほしかったなぁ、と」
「あなた、前にロルカトスを観賞すると言っていたので、邪魔しちゃ悪いと思いましてね。
ところで移動要塞惑星はどうなりました?
目覚めましたか?」
『デライトは追加の勢力を出し、攻撃の勢いを上げる』
「いや、どうやら封印の期間を伸ばしたようだ。
封印の術式をうまいこと改造してね」
「へぇそれはそれは。
残念でしたね。ロルカトスの決戦が先延ばしにされてしまって」
「いやむしろ、その方が私的には嬉しいかな。
彼らはまだ、移動要塞惑星に対抗する戦力を十分に集めきれてない。
第三と十二番の隊長は未だに決まってないし、対移動要塞惑星用の兵器は、何個かまだ未完成だ。
それに…彼女もまだ目覚めていないからね。
そんな状態で戦っても、つまらない戦いになるだけだ」
「そうですか。
あと攻撃に集中しすぎて左右の守りが疎かになってますよ」
『カームは伏兵を出し、デライトの軍の両側面を突いた』
「おっとやってしまった。
間に…あわないか」
『デライトの軍が各個撃破されていく』
『カーム WINという文字がデカデカと画面に表示された』
「また負けてしまった」
デライトはコントローラーを置いた。
「あなたの戦い方は戦術のせの字もありません。
だから負けるんですよ」
「気にしないさ。
私は、自分が楽しければそれでいいというプレイスタイルを好むからね」
「そんなんじゃ、勝てる戦いも勝てませんよ」
「別にいいさ。ゲームだからね」
「そうですか。それで、もう一回戦いますか?」
「いや、そろそろ自分の好きなゲームをやるよ。
対戦に付き合ってくれてありがとう」
デライトはホームボタンを押し、その後ゲーム機本体からソフトを抜いた。
ソフトを元のパッケージに戻した後、今度は違うパッケージを開け、中からソフトを取り出して本体に差し込んだ。
「そういえば珍しいですね。
あなたが対戦ゲーをやるなんて。
いつもはストーリー重視のRPGやサウンドノベルゲームをやってませんでしたっけ?
ストーリーが面白いゲームを好んでましたよね」
「たまには気分転換もいいと思ってね」
カームは立ち上がり、服についた床の埃をはたいた。
「では、わたしは休んできます」
「うん、分かった」
カームがその場を立ち去り、この場所にはモニターを見つめながらゲームをプレイするデライトだけが残った。
コントローラーをカチャカチャする音と、ゲームの音楽が鳴った。




