表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/66

第52話 魔王

 マシュラが放った破滅(カタストロフ)衝撃(・インパクト)により魔王城は半壊した。


 破壊の中心にいたマシュラは瓦礫の山に立っていた。

 そして周囲を見渡し、「あちゃー」という言葉を出しながら、頭をかいた。

 

 「ちょっとやりすぎちゃったかな」


 少し肩をガクンと落とした。

 彼らの強さに期待しすぎたかな、と思いながらマシュラはため息を吐いた。


 その後、瓦礫で踏み外さないよう、慎重に歩いた。

 しかし、4、5歩ほど歩いた後、すぐに立ち止まった。


 背後から、ぬるりと、巨大な影が自身に覆いかぶさるのが見えたからだ。


 クルリと振り向くマシュラ。

 彼女の後ろに立っていたのは魔王ホーエム・ルス・マーダハ・グルバルタであった。


 この時、ホーエムは怒りという言葉では言い表せないほどの表情をしていた。

 鬼、悪魔、化け物、それらに近い顔の表情であった。


 「…ハハ」


 ホーエムを見たマシュラは歓喜の表情をした。


 目の前にいるこの男は、ロストマグナとボルドス、そして()を除けば、世界で1番強いと分かった。

 十分楽しめる相手だと考えた。

 

 「貴様、何用でここへ無断で入り、そして我が城、我が部下を襲った?」


 ホーエムは怒りの表情のまま、マシュラを見下ろしながら言った。


 マシュラは臆することなく、笑顔でホーエムを見上げている。


 「あのさ、ここっていちいち侵入者に入ってきた理由を聞いてからでないと戦い始めないの?」


 相手を馬鹿にするような笑いの混じった声で、マシュラは言い返した。


 「…」


 グルバルタはそれを聞くと、腕を下ろしたまま両手を広げ、魔力を溜めた。


 その時。


 「ぶは…! はぁ…はぁ…」


 少し離れた所の瓦礫が浮き上がり、中からスキャルが現れた。

 先程の衝撃波で目が覚めたのである。


 スキャルは頭を振りながら、瓦礫の粉を落とした。

 そして周囲の確認の為と、目線を上げた。

 

 スキャルの視界にホーエムとマシュラが入った。


 「…魔王様」

 

 この時、スキャルは自身を恥いた。

 侵入者を入れてしまい、挙句には気絶させられ、そして王に仕え、守護する身でありながら、王を危険なこの場まで来させてしまったという事に。


 「魔王様! その者は危険です…!

  お下がりを!」


 スキャルは魔王剣を抜き、足を動かした。

 だが、強烈な一撃を喰らったせいか、まだ意識が朦朧としていた。

 ガクリと倒れかけ、膝をついた。


 「スキャル」


 そんな彼を心配するような目で見つめ、ホーエムは言った。


 「この場は任せた」


 次の瞬間、ホーエムはマシュラを蹴り上げた。


 マシュラは天高く宙へ吹き飛んだ。

 そしてそれを追いかけるように、ホーエムは地面を強く踏み抜き、ミサイルのように跳んだ。


 「…魔王様!」


 スキャルが叫んだ時にはもう遅かった。

 ホーエムとマシュラはすでに見えない距離まで行ってしまった。


 スキャルは拳を強く握り、足元にあった瓦礫を強く叩いた。


 それと同時に、遠くから武装した魔王軍の兵士たちが彼に駆け寄った。


 「スキャル様…これはいったい何事ですか!?」


 兵士たちは慌てている様子だった。

 

 スキャルはもう一度、瓦礫を強く叩き、そして深呼吸をした。


 「各部隊の隊員に、警戒状態に入れと伝えろ。

  侵入者が入ってきたとな。今は魔王様が侵入者の相手をしている」

 「なっ!? …りょ、了解しました!!」

 「それと、今この城にいる魔騎士団の団員達をすぐに集めろ。魔王様の後を追う。

  …あと、この瓦礫の山をすぐにどかせ。

  客人とバルザックが埋まっている」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ