第50話 資料室
その後俺たちは、キャラの濃い五大魔将軍たちと自己紹介をし、終わった後は各自別行動を始めた。
マナはリリスと一緒に、魔術戦闘と支援を主とする部隊の『魔術師部隊』のところへ。
アルスさんとリエナは、アズライルとゴーダと一緒に城下町へ行った。
俺は特に用事がないので、バルザックとスキャルと一緒に資料室へ。
そしてここで、バルザックから聞いた五大魔将軍(スキャルを除く)の紹介をしよう
『ゴーダ』
荒っぽい人物のように見えるが、部下の面倒見は良く、また任務は真面目に遂行する。
バットサイズの金棒を武器にしており、全力の一撃をモロに当たれば、頭蓋骨と脳みそを砕けるそう。
『アズライル』
隠密と情報収集を得意とする男。
自身の影を操る『闇影操魔術』が得意。
2本の短剣が武器で、奇襲戦法を主とする。
顔つきは美少年らしく、密かにファンクラブがいるらしい。
『リリス』
五大魔将軍の中で最年少の女の子。
貴族の出身らしく、親の反対を押しのけて(物理的に)魔王軍に加入。
操人形魔術で最大8体の鎧を操ることができる(熟練の魔術師でも5体が限度らしい。マナは6体までしか無理と言っていた)
鎧は通常サイズやずんぐりむっくりしたもの等、色々な形の物を使っているそうだ。
ーーー
資料室への扉はいたって普通だった。
材質は木で、形は長方形。
ただ、扉のサイズは若干デカかった。体型が大きい人への配慮だろうか。
部屋の中は驚くほど広かった。
大量の本棚がズラリと並んでおり、棚には国語辞典ぐらいの分厚さの本や、一般的なマンガぐらいの厚さの本などが置かれていた。
「オマエら、ちょっとそこで待っててくれ」
バルザックが指したのは、半径3〜4メートルぐらいはある丸型のテーブルだった。
椅子は4つあった。
スキャルさんが椅子に座ったので、俺も座ることにした。
彼から見て左斜めの位置にある椅子に、俺は座った。
「…」
「…」
無言の時間。
バルザックがいつ戻って来るかは分からないし、お互い無言でいるのは少々落ち着かないな。
何か会話を振ろう…。何がいいだろうか…。
そうだ。
「この部屋って随分と広いんですね。
資料室っていうと、何かいろんな情報を纏めたものがおかれてるんですか?」
相手が答えられる質問を聞く。
これなら問題なく彼と会話できる。
「ええ、資料室ではこの国の歴史や事件などを記録したものを置いているのです。
あちらに扉があるでしょう」
スキャルさんが視線を動かす。
俺はスキャルさんが向いた方向を見ると、奥の部屋に入口とは違う扉があった。
「資料室には今私たちがいるレベル0、そしてレベル1と2の3つの部屋に別れています。
あそこがレベル1の部屋の扉、レベル2の部屋はレベル1の先にあります」
「レベルごとに分けているのには何か理由でも?」
「重要な物とそうでない物を分けていると思っていただければ。
レベル0は一般人が閲覧しても問題ないもの、レベル1は魔王軍の者のみが閲覧が可能なもの、レベル2は魔王様と五大魔将軍と司令部と情報管理部のみ閲覧が可能なもの、です」
「なるほど。ちなみに魔王軍の役職……部隊?、五大魔将軍とか、先ほど言った司令部と情報管理部の他にどんなものが?」
「えーとですね」
スキャルは鎧の隙間からメモ帳のような物とペンを取り出した(どこに入れてるんだとツッコミそうになった)
メモ帳のページを1枚ビリッと破き、それにスラスラと何かを書いた。
「こうですね」
スキャルは紙を机に起き、俺の方に差し出した。
その紙にはこう書かれていた。
『・五大魔将軍 司令部 情報管理部 司法部 外交部
・魔騎士団
・剣魔隊 魔術師隊 弓魔隊 大守護隊 後方支援隊 救護隊 ヤミマトイ隊
※それぞれの隊に隊長1名、副隊長2名
魔騎士団には団長1名、副団長1名
司法部に裁判官5名と弁護士10名と検察官11名
外交部には外交官長3名と副外交官4名
情報管理部には管理長1名と副管理長3名
司令部には司令長1名と副司令長2名』
…思ってたよりめっちゃ書いてた。
いろんなのがあるな。
てかヤミマトイって…ひとつだけ厨二病的なのがあるな。
他に気になるのは…。
「軍なのに外交とか裁判をやる部隊あるんですね」
「昔は軍と別れてたのですけどね。
今は合併しています」
色々と管理がめんどくさくなったから、合併しようということになったのだろうか。
ま、これは聞かないでおこう。
「待たせたな」
その時バルザックが2冊の本を手に持ち、ドスンと椅子に座った。
本の背表紙には
『神隠し事件被害者リスト た〜は行』
『神隠し事件被害者リスト ま〜わ行』
と書かれていた。
そして『た〜は行』の方をペラペラとめくり、あるページを俺とスキャルに見せてきた。
そのページに書かれていた人物は『シジュウノスケ・ダンゾウ』という名前だ。
少し髭の生えた若干強面の男性の肖像画が、名前の横にあった。
そして次にバルザックは、ポケットからあるものを取り出した。
それはバッジのようなもので、名前が刻まれていた。
『シジュウノスケ・ダンゾウ』と。
「バルザック…これをどこで?」
やや驚いた声でスキャルが聞いた。
バルザックはスキャルに説明した。
これは、以前俺たちを襲ったロトスの転移で飛ばされた場所で、バルザックに襲いかかってきた人物が持っていた物であると。
「それとこれ」
バルザックは次に『ま〜わ行』のあるページを見せてきた。
そこに書かれていた人物の名前は。
『ロトス・マムルーク』
「ここにロトスの名前がある。
マナから聞いたのは『ロトス』のほうだけだがな。
1人は被害者が所持していた物を、もう1人は被害者と同じ名前…つまり」
「ロストマグナが神隠し事件の犯人ということ?」
「確信はまだない…がな」
その時。
「なるほど。アレの材料はこれっていうことか」
女の声がした。
振り向くと、俺の向かい側にある椅子に、いつからいたのか、黒の短髪にやや露出度の高い服の女が座っていた。
誰だ?
「見ない顔だな。スキャル誰だこいつ?服装的に兵士じゃなそうだし。こいつも…」
バルザックの言葉が途中で切れた。
何だ?と思ってみると、スキャルが剣を抜いていた。
魔王剣グルバルタを。
そして剣を黒髪の女に向けてこう言った。
「誰だ貴様。どこから入ってきた」




