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ヒーローズ•オブ•アルメリアス  作者: とりぷるとろわ
第6章 地下に眠る謎
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『目覚めた最後の1人』

37話にてロストマグナが遺跡から去った後のお話です。

 拠点に戻り、ソファにドサリと座るロストマグナ。

 反対のソファにゆっくりとした動作で座るボルドス。


 2人はしばらく無言でいた。

 

 無言の時間が10分続いたそのとき、先に沈黙を破ったのはボルドスであった。


 「どうでしたか? ロストマグナ」


 何にとは言わない。

 ふつうであれば相手は「何にだ」と返す発言であるが、ロストマグナはボルドスの言った言葉の意味を理解していた。

 両者とも同じことを考えていたからである。


 「ありゃ無理だな」

 「ですよね」


 ボルドスが背もたれにかけ、グッタリとする。


 「あいつ、正真正銘のバケモンだろ。

  頭半分吹き飛ばしたってのに、もう治してやがる」

 「私は心臓と左腕を斬ったんですけどね。

  それはもうズタズタに」

 「こりゃあ、()()に勝たせるのは無理かな」

 「いえ、それはないかと。

  確かに彼に与えた傷はすでに治ってますが、おそらくそれは外側だけの話で、内側はまだ治りきっていないかと。 ズタボロにしましたし。

  それにもし内側も治っているのであれば私達も今頃とっく治してますよ」

 「アイツは、俺たちとは存在そのものが違う。

  奇跡みたいなことを起こすのは、あれの得意分野だ。

  もう治してるかもしれん」

 「…まあ、本当かどうか分かってないことを話しても、意味ないですね」

 「だろうな」

 「…ところでロストマグナ」


 ボルドスがソファにかけていた剣を手に取り、立ち上がる。


 「誰か来ます」


 その言葉に反応してロストマグナも立ち上がった。

 耳をすましてみると、先程入った扉の奥からコツン、コツン、と歩く音が聞こえた。

 

 (誰だ…?)


 ロストマグナは考えた。


 (あの男が来たか? いやそれはない。あいつが俺たちの後を追って来る姿は見ていない。気配も感じなかった)

 (それにどうやって入ってきた。入口は何百もの結界で守っている)

 (解除したか? いやそれならアラームが鳴っているはずだ)

(結界を素通りできるのは俺たちしか…ん?俺たち?)


 思考をめぐらせる。

 だが、答えがあと一歩のところで止まり、出てこない。


 足音がどんどんと近くなり、そして止まった。

 ギィと扉が開く。

 その人物の姿を見る前、ロストマグナとボルドスは共に「あっ」という声を出した。


 2人はその人物を見るのはあの戦い以来だった。

 久しぶりに会うせいで、気配すら分からなかった。

 2人はその人物が部屋に入ってくる直前で、ソファに座り直した。


 「おっひさーーーーー!!!」


 入ってきたのは1人の少女であった。

 黒のショートカット、灰色の瞳、ヘソが見えるほどに短い丈の黒い服と黒のショートパンツを着ており、スラッとした体型である。

 身長はロストマグナとボルドスよりも少し下である。

 

 そしてなぜか、彼女は全身がびしょ濡れであった。


 「マシュラ、今の今までどこで何をしていた」


 ロストマグナが少女…マシュラに聞いた。

 マシュラはニヤリと笑い、答える。


 「寝てた」

 「寝てた??」


 思いもよらぬ返答にポカンとするロストマグナ。

 続けてマシュラは言った。


 「うん。深ーい深い海のそこでね。

  おまえと『    』が再び戦うその時まで、寝ながら待ってたの」

 「なるほど。時が来るのを待って深海で寝てたと。

  だから濡れてるんですね風呂行ってください海水臭いです」


 ボルドスはそう言うと、近くあったタンスからタオルと着替えの服を取り出し、それをマシュラに投げ渡した。

 マシュラはそれを見事にキャッチして、感謝の意をウインクで返した。


 「んじゃ風呂行ってくるね〜」

  

 風呂場へ入るマシュラを見送るロストマグナとボルドス。

 彼らは互いに耳を合わせた。


 「深海で眠るって、できるんですかね?」

 「知らん。まぁ、あいつはイカれてるし、何やってもおかしくはない」


 それから10分後。

 マシュラはタオルで髪を拭きながら風呂場から出てきた。


 何故か全裸であった。


 「服着ろ馬鹿たれ」

 「後で着るよ。ところでレディは?

  姿が見えないけど」

 「レディは俺が殺した」

 

 ロストマグナの返答に、マシュラは一瞬だけ硬直した。

 そしてすぐにタオルを放り投げて、ソファに勢いよく乗り上げて、ロストマグナに近づいた。


 「殺した!? 殺したって本当!?

  ねぇねぇ! ()()()()を殺したのってどんな気分!?」

 「ああもう鬱陶しい! 離れろ!」


 グイグイと来るマシュラを足で押しのけるロストマグナ。


 「あいつは戦いの際、急に俺たちを裏切り、その後は『テラス』とかいう名前を使って隠れ住んでいた。だから殺した」

 「テラス…ははっ。

  自分の手で殺した自分の妹の名前を使うとかイカれてるでしょ。

  あいつ、私に散々文句言ってたくせに、人のこと言えないじゃんっ」

 「……ところで、お前もようやく現れて、これで全員揃った。あいつに決戦の連絡を入れようと思うが、いいか?」

 「うーん…いや、やりたいことがあるから、それが終わってからにしてくんない?」

 「やりたいこと?」

 「準備運動だよ。長い間寝過ぎてたせいで、身体が鈍っちゃった。

  ちょっと暴れてきて慣らしてくる」

 「そうかいそうかい勝手にしろ。

  ああ、それと言い忘れてたんだが、例の薬で能力持ちの覚醒者が出たぞ」

 「…マジ?」


 マシュラが驚いた顔でロストマグナを見つめる。


 「マジだ」

 「能力は何?」

 「電気だ」

 「電気!? すごいじゃん!当たりの能力じゃん!

  ねぇねぇそいつ、雷帝よりも強い!?」


 マシュラが再びグイグイと押し寄せる。

 それを先程よりも力強くロストマグナは押しのけた。


 「アホか。あんな怪物と同じ強さを持ったやつがもう一人いてたまるか。雑魚だよ雑魚。

  てか、さっさと行け」

 「はいはーい」

 

 マシュラは着替えの服を着た。

 そして部屋を出ようとドアノブに手をかけたその時、ロストマグナの方を向いた。


 「…ところで、アレはもう完成してる?」

 「ああ、満足させる程度にはできてるぜ」

 「そっ。期待してるよ」


 扉を閉め、拠点から出ていくマシュラ。

 足音が遠くなっていくのを確認すると、ロストマグナはため息を吐いた。


 「それにしてもアレをあいつとあのタコに勝たせるの。

  今思うと無理なんだよなぁ」

 「仕方ないです。あの2人は本当に異常ですから。

  ま、できる事は全部して完成させたアレです。

  これ以上望むのは無理です。

  どうしても勝たせたいというなら、これはもう運に任せるしかないでしょう」

  「運か…。ま、仕方ねぇか」


 ロストマグナはソファに寝転び、目を閉じた。

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