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ヒーローズ•オブ•アルメリアス  作者: とりぷるとろわ
第6章 地下に眠る謎
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第46話 範囲攻撃

 腰を深く落とし、剣を構える。

 ヘブンはまだ痺れている。

 まともに動ける状態ではない。

 今がチャンス。

 首、もしくは胴を斬る。

 なんでもいい。壊せれば俺の勝ちだ。


 ヘブン目掛けて大きく走る。


 距離からして間合いに入るまで7、8秒。

 麻痺状態が解ける前に斬る!


 その時だった。


 『機体損傷30% 炎機モードに移行』


 ヘブンの身体がいきなり燃え出した


 『炎上領域を発動します』


 火が広範囲に広がった。

 周りは草原で、火の移りがとても速い。

 所々で灰色の煙が立っている。

 一瞬にして辺りが灼熱の火と灰色の煙で満たされた。


 (くそ…!)


 慌てて鼻を服で覆い、体勢を低くする。

 低い姿勢であれば、煙を吸う危険性はあまりない。

 だがどうする。煙のせいでヘブンの姿を見失った。

 それにこの高温度だと、体は長く持たない。

 

 (どうする…!?)

 

 じっとしながら考える。

 だが悠長に考えている時間はない。


 煙の中を走り回って、ヘブンを見つけて攻撃するか…?

 いや、危険だ。どのタイミングで見つけられるか分からないし、麻痺状態も今頃解けているかもしれない。


 この体勢のまま、ヘブンに当たることを願って電撃を撃ち続けるか…?

 いや、これも危険だ。

 闇雲に撃ってしまえば、こっちの位置がバレる。

 

 なら、まだ燃え移っていない場所まで走るか…?

 その場所がどこまでかは煙のせいで見えないが、1番安全そうなのはこれだ。


 …よし。走ろう。

 とにかくここから離れるのが1番だ。

 

 「……!」


 突然、俺の右斜め方向の煙が、僅かに動くのが見えた。

 次に見えたのは人影、…まさか!


 慌てて刀を抜く。

 

 次の瞬間、煙の中から剣を高く振り上げるヘブンが、勢いよく現れた。

 その勢いのまま、振り下ろされる鋼の刃。


 剣の軌道上に刀を割り込ませる。


 ガキィンという音が間近で響く。

 間一髪の所で、防御が間に合った。


 刀でヘブンの剣を押し返そうとしたが、どんどんと押し込まれていく。


 (重い! このままじゃ!)

 

 咄嗟に刀を傾け、剣を逸らす。

 ヘブンの剣はそのまま地面を斬った。

 体勢が崩れたヘブンの隙を見て、俺は力強く右足で奴の腹を蹴る。


 ヘブンがよろめきながら後ろに後退する。


 すかさず追い討ち。

 電撃を撃つ。

 1秒にも満たない時間で溜められた電撃の威力は弱い。射程も短い。

 だがこの距離なら当たる。僅かだが麻痺させることもできる。

 

 バチッ!!!


 紫電が一瞬でヘブンの全身を駆け巡った。

 ヘブンの身体が痙攣する。


 刀を思い切り振り上げる。

 頭部を破壊する。

 一撃で。

 今度こそ斬る!


 『炎放出 出力50%』


 まただ!

 先程と同じように、ヘブンの身体が燃え出した!

 いや、先程よりも炎の勢いが強い!


 慌てて背後に跳ぶ。

 またチャンスを逃してしまった。


 「熱っ!」


 左手に激痛が起きた。

 見ると俺の左手の指が燃えていた。

 火がどんどんと燃え、手首まで到達した。


 「嘘だろ!?」

 

 このままでは火が左手から全身へと巡り、火だるまとなってしまう。


 (…迷っている暇はない!)


 刀を振り上げ、まだ燃えていない箇所を斬った。

 ボトリと左手が落ち、そのまま燃えて灰になった。

 

 なんて火力だ。

 全身に燃え移れば火だるまどころじゃ済まなかった。


 視線をヘブンに向ける。

 奴自身から出ていた炎は消えていた。

 奴はただじっとして、俺を見つめていた。


 『次の攻撃で終わらせよう。 これで負ければ君には退場してもらう』

 

 聞こえたのは青年の声。

 手紙の主だ。


 ヘブンが後退し、煙の中へと消えた。


 次だ。 次で終わる。

 どうにかして倒さねば負ける。


 「ゴホッ、ゲホッ!」


 それに、煙も濃くなっている。

 呼吸が苦しい。

 …くそ! こんな視界じゃ奴の姿は捉えられない!

 辺り一面を吹き飛ばす事ができれば…!


 ……。

 …吹き飛ばす?


 そうだ。 あれだ。

 ロストマグナの技『破滅(カタストロフ・)衝撃(インパクト)

 

 見たところあれは、拳に何かを溜めて、拳を振ると共に一気に放つ広範囲技だ。

 あの技と似たような事をすれば、狙って撃たなくて済む。

 左手はもうすでに再生している。

 一か八かだ。


 (…こんな感じか?)


 力を全力で左手に溜める。

 いつヘブンが来るかは分からない以上、急いで貯める必要がある。


 精一杯、力を溜める。

 無理をしているせいか、左手から激痛が疾っている。

 

 もしかすれば、この技を撃てば何か反動が来るかもしれない。

 だが、そんな事で撃つのを躊躇するわけにはいかない。

 勝たなければならない。


 (今は無理をしてでも、勝たなければならない!!!)


 左手を高く上げる。

 

 今から撃つこの技は、ロストマグナの『破滅(カタストロフ・)衝撃(インパクト)』を真似た物。

 けど、ひとつ違うものがある。


 これは前方ではなく、全方位に向けて撃つ。

 

 前方から、背後から、上空から来ようが当ててやる。


 左手に溜めた力を一気に放出する。

 辺り一面を紫電が駆け巡る。

 その衝撃で煙がブワッと舞い上がる。

 

 見えた。

 ヘブンが。

 俺の左横方向に居た。

 身体が痺れている。

 当たった。


 俺はすぐさま体の向きを奴に向け、そして左手を向ける。

 さっきの攻撃で、左手に激痛が起きているが、関係ない。

 今がチャンスだ。


 電撃を放つ。

 だが銃のように"撃つ"のではなく、火炎放射器のように電気を"放射"し続ける。

 長く、長く、長くヘブンの体に当て続ける。


 …最初からこうしておけば良かったな。

 

 俺はヘブンに電気を当て続ける。

 左手から伸びる紫電が奴の胸中心に当たり、そのまま全身へ巡っている。


 このまま続ければ、おそらく奴の身体は耐え切れず壊れる。 ていうか壊れてほしい。


 10秒か15秒たったその時、ヘブンの身体から煙が上がり、その後爆散した。

 ガシャンと砕け散ったパーツが地面に落ちる。


 俺は思わず電撃を止めた。

 …やったのか?


 『おめでとう』


 ヘブンの残骸から手紙の主の声が聞こえた。


 『雑な攻撃方法だったが、まあ倒せただけ良しとしよう。

  彼女たちに伝えてくれ。

  "天空塔で待つ。 ショートカットは椅子の後ろにある"と』


 視界が真っ白になり、一瞬だけ空中に浮かぶような感覚が起きた。


 そして今度は、尻に衝撃を受けた。


 気づけば尻餅をついた状態で、巨像のいた地下室へと戻っていた。


 目の前にマナ達が驚いた表情で俺を見つめていた。


 「ビックリした…オマエどこに行ってたんだ?

  急にあの変な人型の野郎といなくなるから、慌てて探したんだぜ?」


 バルザックがそう言った。

 俺は笑いながらこう答えた。


 「勝てた!」

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