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ヒーローズ•オブ•アルメリアス  作者: とりぷるとろわ
第6章 地下に眠る謎
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第44話 記憶から役立つ物


 「お前はあれだな。普通すぎるな」


 訓練が終わり、ギルドの休憩室で休んでいると、バルザックがそう言った。


 「普通…?」

 「ああ、剣術も力も普通。

  まあ、魔王軍でいう所の新米兵士だな」


 失礼な、とは思ったが否定はできない。


 けど、日本じゃ普通に暮らしてたら戦いなんてのはまずないからな。

 身体を鍛えるのなんて、体力作りの運動をする時しかない。

 剣術も…剣道なんてやりたい人しかやらないだろう。


 まあでも、これでも頑張ってる方なのだが、実際に言われると傷つくな。


 「じゃあさ、なんかいい方法ないかな?強くなれる方法。

 バルザックって強いだろ?なにか教えれることあるんじゃないか?」

 「そうだなぁ」


 バルザックは首を傾げて悩んだ。


 「分かんねえや」


 諦めの早すぎる答えだった。


 「分かんないって…。バルザックって元五大魔将軍だろ?部下の指導とか、そういうのやってなかったのか?」

 「オレ、大抵の相手は力任せのゴリ押しで戦ってたからな。誰かに戦いを教えるのは苦手だったから、そういうのは当時オレの補佐役だった、ガンダスに任してたな」


 おいおい。補佐役に任してたって…。

 それに力任せのゴリ押しとは。いやまあ、バルザックみたいなガタイが良くて、力もある奴がゴリ押し戦法するなんてのは、相手にとって1番怖いかもしれない。


 「お前が魔術とか使えたら、戦い方の幅が広くなって、ギリ教えられるかもしれなかったが、お前魔力ないからな」

 「バルザックはあるのか?」

 「あるぜ。というか、この世界で魔力なしは聞いたことないな。0に近いぐらいの魔力を持ってる奴がいるって話は、何回か聞いたことあるが」

 「ふーん。じゃあ魔術は使える?」

 「火球と白煙と、あとは簡単な治癒魔術だな。

  治癒魔術の方は習得の時以外で使ったことはないがな。

  再生能力があるし」


 再生能力か。

 確か、以前本で読んだな。

 魔族と、魔族の血を引く混血には、生まれつき再生能力があると。

 再生能力の性能には個人差があり、擦り傷や切り傷などの、軽症だけしか治せない者や、骨折、腕や足などの欠損をも治せる者などがいる。

 

 しかしこの再生能力は万能というわけではない。

 再生時には体力を消費する為、本人の体力が全く無い場合、再生はできないという。

 その他にも、脳か心臓を潰された場合、再生能力はできないそうだ。


 「まあ、今オレから言えることは、実戦を繰り返して、自分に合った戦い方を見つけることだな」



───



 以前バルザックと話した内容から、何か戦闘に役立つものがあるのではないかと思いだしてみたが、全くないな。

 こういう話は、アルスさんに聞いておいた方がよかったかな。


 俺は目の前にいる機械…『ヘブン』を見る。


 右手には剣。左手には何も持っていない。

 全身には、全体的に尖っている(物理的に)見た目のパワードスーツ…みたいな鎧。


 あいつは巨像から出てきた…つまりスピードタイプだ。

 ゲームとかでよくある。デカいボスが、第二形態で小さくなって、スピードタイプになるやつ。


 いや、まだ戦ってないから、あいつがスピードタイプかどうか分かんないが。

 もしかしたら、パワーとスピード、両方を兼ね備えたタイプの可能性もある。もしそうなら、ちょっと厄介だ。


 くそ。相手の情報なんも分かんねぇから、どう攻略すればいいのか分かんねぇ。

 攻略サイトなんてもんある訳ないし、死にゲーとかでよくやる、コンティニューを繰り返して、相手の動きとか、技を繰り出す順番とかを覚えてボスを倒すなんてことも出来ない。

 命は1つだけ。やり直しはない。


 …別のことを思い出せ。何か他にあるはずだ。

 何か戦いに役立てそうなものが。



───



 「イズミくん。ちょっと見てくれるかしら」


 テラスさんが居間に入ってくるなり、そう言った。

 ソファーに座って読書をしていた俺は、本を閉じた。


 テラスさんは、どすんと、勢いよくソファーに座った。

 そして、両手を前に出した。


 「私の手のひらを見てて」


 そう言われ、俺はテラスさんの手に注目した。


 すると、テラスさんの右手から、野球ボールぐらいの大きさの水球が現れた。


 「次に…こう」


 テラスは空いている左手を、水球に近づけた。

 すると、水球は形を変え、球体から長方形へとなっていく。

 そしてさらに形を変えて、最終的に短剣の形になった。


 「どう?」

 「……?」


 どう。と言われても、いまテラスさんがやった事が、どれくらい凄いことなのかは俺には分からん。

 どういうリアクションを取ればいいのか、どういう感想を言えばいいのか、思いつかない。


 なので。


 「今やった事の解説を…お願いします」


 質問することにした。

 こうすれば、無言という気まずい雰囲気にならなくて済む。


 「まず最初から説明するわ。

  私は今、水魔術の基本中の基本の技、『水球』を使ったわ。

  水球はその名の通り、水の球を作り出す魔術」

 「短剣の形にしたのは?」

 「そこを今から話します。

  魔術はね、一度作り出した物の形を変える為には、術式に刻まれてる、形状制御っていうものを解除しなくちゃいけないの。

 えーと、例えば、私が火魔術の『火槍』を発動した時、魔力を消費して火を作り出すの。その後は術式が、火が槍の形になるように、自動的に制御してくれるの。

 さっき発動した水球も同じ。魔力を消費して、水を作り出し、術式が水を球体にしてくれた。

 けど、私はその後、水球を短剣の形にした。

 術式の形状制御を解除してね。

 そうすると、水を制御するのは術式じゃなくて、術を発動した本人がやらなければならないの。

 本人が制御をやめたら…こうなる」


 次の瞬間、短剣の形になっていた水は、バシャン、という音と共に崩れて、机に飛び散った。


 「この、術師本人がやる形状制御って、キツいのよね。

  常に意識してないとダメだし、戦闘中の話になると、相手と戦いながら制御しなきゃならないし」

 「…それなら、最初からその形にしたい魔術を発動すれば良いのでは?」

 「それもそうだけど、これができる人は一流って呼ばれるから、皆やりたがるのよね。私もだけど」

 「…マナギスタさんはできるんですか?」

 「そりゃあもちろんできるわ。それも高度な形状制御をね。

  以前師匠ね。巨大な火球を作り出してそれを大剣の形にしたと思ったら、1日中そのままの形で維持したのよ」

 「…すごいですね」

 「ほんとにね。あの人息をするように形状制御してるのよ。

  私もまだまだ修行が足りないと思ったわ」


 マナギスタさんはそんなに凄い人なのか。

 会うのが楽しみになってきた。


 「ところで、マナギスタさんってけっこう強い方なんですかね?

 戦ったら、瞬殺されるほど?」

 「……今の私じゃ勝てないわね」



───



 これだ。

 テラスさんから教えてもらった、魔術の形状制御。

 これを使えば、紫電の剣とか作れそうだ。

 この力が魔術といえるか怪しいが、やってみたらできるのではないか。

 まだ時間はある。試してみ…。


 …。

 ……。

 ………。


 電気ってどう制御するんだ?

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