第40話 いざ遺跡へ
翌日。朝食を済ませて魔術学院へ向かう。
学院に着くと、ラウラスが馬車を用意してくれていた。
ラウラスの隣には昨日の青年がいた。
「皆さん、おはようございます。それでは良い旅を」
ラウラスは軽い挨拶だけをしてその場を立ち去った。
「皆さん! 今日はよろしくお願いします!」
青年が大きな声で挨拶をした。
青年の名前はハリス•デチャルメン。
魔術学院の歴史研究部に所属する生徒で、平凡なのが特徴の男だとマナが言っていた。
俺からすると見た目は平凡とは思えない。青い天然パーマにスラッとした体型。顔つきもイケメンの部類に入るほどシャキっとしている。身長は俺より上…大体170ぐらいだろうか。
これで平凡とは少し無理があるだろうと心の中でツッコんだ。
ハリスは今から3年前に魔術学院に入学して、さまざまな国の歴史を研究しているそうだ。最近は大昔の国…ミラマレスなどを研究しているらしい。泣いてでもついて行きたかったのはそういう事らしい。
ところで話は変わるが、魔術学院にはいろいろな部があるそうだ。ハリスの所属している歴史研究部、新たな魔術を生み出す魔術開発部、エンタメ専門のエンタメ魔術師部(どんな部だよと思った)などなど色々なものがある。
ちなみにマナが学院に在籍していた時の所属部は戦闘魔術師部だそうだ。その名の通り、戦い専門の魔術師が集まる部だ。
ーーー
出発してから数時間後、ようやくミラマレスに入るための関所についた。
マナが門番に許可証を渡し、門番がそれを確認すると通行の許可を出した。
「ふと思ったんだけどよ、大昔に無くなった国を学院なんかが管理してるなんて不思議だな」
バルザックがあぐらをかきながら言った。
「それについては私が説明しましょう!」
すると突然、ハリスが応援団顔負けの声量で説明を始めた。
「実を言うと最初にミラマレスを管理していたのは学院ではなく、ミラマレスと友好国だったユコラス自身なのですよ。
けど、滅んだとはいえ国が他国を管理するのはどうなのだ、という声が多くなってしまってですね、ユコラス国はミラマレスの管理をやめてしまったんです。
しかしその後、管理するものがいなくなったので犯罪組織がミラマレスにある国の遺産などを盗むという問題が起こったのです。
そこで立ち上がったのが初代魔術学院の学院長なのです。
彼は、ミラマレスは我々学院が管理すると高らかに宣言し、全てとはいきませんでしたが、犯罪組織が盗んだ物の8割を取り返す事に成功したのです。
その後は色々あって、今でも学院がミラマレスを管理しているのです」
ほほう。そんな歴史があったとは。
「そろそろ着くわよ」
そう言いながらマナが降りる準備を始めた。
気がつくと目的地のミラマレス遺跡がもうすぐという距離まで来ていた。
ーーー
馬車から降りて、遺跡の中へと入る。
中は砂だらけで、歩くたびに靴の中に砂粒が少し入ってくる。
「ここは一説によると、ミラマレスの国王が保有していた遺跡という話があるのです」
ハリスがニコニコしながら語り始めた。
「この遺跡は今いる1階と、そして地下1階から5階までの全部で6つの階層で作られています。
現時点で学院が調査できているのは今いる地上1階から地下4階まで。5階はまだ半分までしか行けていないのです」
歩きながらハリスの話を聞いていると、マナが先程から進んでは止まって、進んでは止まってを繰り返していた。
どうした?と思って見ると、地図を読んでいた。
どうやらルートの確認をしていたようだ。
すると突然、バルザックがマナの肩をポンと叩いた。
「こういうのはな、勘でいった方が案外早いんだよ。罠とかが仕掛けられてるとかあるめぇし」
そういいながらバルザックが走り出した。
そして数秒後、ドスンという音が奥から聞こえた。
音の正体を確認しにいくと、通路のど真ん中に大きな穴が空いていた。
中を見るとバルザックが地下1階まで落ちていた。
「助けて」という声がかすかに聞こえた。
「見なさいイズミ。老朽化の可能性を考えなかった馬鹿の姿よ」
「ああ、おもしろいな」




