第36話 敗北
5人は感じ取った。
ボルドスの持つ異質な剣。
それが発する不気味な圧を。
この時、マナとバルザックはすぐに理解した。
こいつは、ロストマグナよりも強いと。
アルスとリエナは異質な剣に警戒していた。
和泉仁は無意識に足が震えていた。
ーーー
最初に動いたのはバルザックだった。
彼は大剣を両手に構え、そのままボルドスに向かって走ろうとした。
だが次の瞬間、彼は意識を失ったかのようにガクンと地面に倒れた。
足元を見るとバルザックの左足首が斬られていた
俺はそれがボルドスの攻撃によるものだとすぐに理解した。
「次はどなたが来ますか?」
ボルドスはそういいながら、祭壇上へ上がった。
「くっ…」
バルザックが起きあがろうとしている。
ふと彼の斬られた足首を見ると、肉がボコボコと膨れ上がっていた。
その後膨れ上がった肉はすぐに元通りとなり、バルザックの足は何事もなかったのように治っていた。
彼は呼吸を整えながら立ち上がった。
ボルドスはそれを見ると、「ああ」と呟き、
「魔族には再生能力とやらがありましたね。忘れていました。
確か…心臓か頭を潰せば殺せるんでしたかね」
剣をクルクルと回しながら、こちらへと向かってくる。
「リエナ…とアルス、手伝え」
バルザックはそう言うと、ボルドスに向かって走った。
続いてリエナが走り、少し遅れてアルスさんも向かった。
「イズミ! よそ見しないで!」
マナがそう言った。
俺はマナの方へ向くと、すでに彼女はロストマグナと戦っていた。
俺はすぐに電撃を再び溜め始めた。
今度は慎重にやる必要はない。
力一杯込めた。
電撃は一瞬で溜まった。
しかし、一発目の効果がなかった以上、ダメージを与えることはできない。
だが、ロストマグナへの妨害はできる。
このまま何もしないよりマシだ。
それに刀を持って、マナと一緒に近接戦闘を仕掛けても、奴の動きについていける自信がないし、おそらく一撃でやられる。
狙いを定める。
次に狙うのは胴体だ。
その時だった。
「邪魔くせぇな」
ロストマグナが一瞬で俺の目の前に現れた。
右拳に紫のオーラを纏っていた。
まずい、と思った。
避けなければと思った。
だがやってしまった。
恐怖のあまり、目を瞑ってしまった。
来る。強烈な一撃が。
完全に目を瞑る前に、見えた。
マナが、俺とロストマグナの間に割って入るのを。
ーーー
目覚めると、全身に酷い痛みが起きていた。
その痛みを我慢しながら、起き上がる。
「起きたか」
目の前に、ロストマグナが立っていた。
「あの女が守ってなければ、今頃あの世にいっていたな」
あの時、マナは俺を守るために割って入ったのだった。
生きているだろうか。…生きていてほしい。
だが、この状況は。
…バルザック達はどうなった?
「こちらは終わりましたよ」
血濡れた剣を持ちながら、1人の男が近づいてきた。
ボルドスだ。
彼の後ろを見ると、バルザック、リエナ、アルスさんが死んでいた。
バルザックは身体を縦に真っ二つ。リエナは首を斬られていた。
アルスさんは胸…心臓の位置から血が流れていた。
負けた。
こうもあっさりと。
俺もこの後すぐに殺される。
「もう一度やれ」
するとロストマグナがそう言った。
指で胸をトントンと叩いていた。
「お前の技だよ」
どうゆう事かと考えていた俺に対し、イラつきの声で言った。
電撃で俺を攻撃しろ…と?
一体何を考えているのか分からなかった。
「……」
俺は無言で電撃を溜めた。
なぜわざわざこいつの言うことを聞いたのか自分でも分からない。
仮にこの電撃でこいつを倒せても、次はボルドスの相手をしなきゃならないというのに。
そして。
ズドン!!
電撃を放った。
……。
案の定、ダメージはなかった。
ロストマグナはため息をつくと、呆れたような目で俺を見た。
「お前はその力の使い方が下手だ。
ただ強くぶつければいいと思っている。
工夫をしようという考えを持っていない。
だから負ける」
ロストマグナの拳にオーラが纏っていく。
「じゃあな」




