「ルーバス第2支部襲撃作戦前日」
珈琲の入ったカップを左手に持ち、グリスクリムからもらった書類を脇に挟んで、リビングに入った。
部屋の真ん中にある2つのソファー。その内の1つにボルドスとマシュラが座っていた。2人は書類を読んでいた。
ボルドスは俺が部屋に入ったのに気づくと、書類を膝に置いた。
「ロストマグナ、書類はもう読みましたか?」
俺は向かい側のソファーに座り、テーブルにカップを置いた。
「いや、これからするところだ」
書類を手に持ち、1ページ目を読む。
『ルーバス第2支部襲撃作戦の内容』と書かれている。
ルーバス第2支部はキットス砂漠にある施設だ。
明日、この施設に保管されている神物を奪うのが俺たちの目的だ。
神物とは強大な力を秘めた物。
神物には、100年続いた戦争を一瞬で終わらせた。国が滅ぶ程の大災害を防いだ。死んだ者を生き返らせた。などと言った話がある。
俺たちは現在、4つの神物を持っている。
だが、この戦争に勝つには、より多くの神物が必要だ。
そのため、この施設を襲撃するのだ。
2ページ目を開いた。
各メンバーの役割が記載されていた。
入口門襲撃班『ロストマグナ、ボルドス、レディ、ヨヨニピト』
神物奪取班『マーセイム、コルコル、ノノト』
好き勝手暴れろ担当『マシュラ』
待機組『アビス、グリスクリム、ギメトリス』
予想通りの組み分けだが…。
「この組み分け、少し不安だな。
あの施設には豪船、愚泥、ウルフ兄弟がいるんだろ?
ギメトリスも襲撃班に加えた方がいいんじゃないか?」
「豪船はいないってさ。
今朝偵察に行ったノノトから、豪船が『聖門』に向かったって報告が来た」
俺がさっき入れてきた珈琲を飲みながらマシュラはそう言った。
こいつ、勝手に人の飲み物を…。
「聖門に何かあったのか?」
「そこまでは知らない」
マシュラがカップをテーブルに置いた。
カップの中は空になっていた。
すると突然、扉が開いた。
「あら、明日のことでお話し中だったかしら?」
入ってきたのはテラスだった。
……。
いや誰だ?
こいつの名前はレディだ。テラスとはいったい…誰のことだ?
「どうしたの?」
レディが隣に座った。
「なんでもない。すこしぼうっとしてただけさ」
「そう。ならいいわ」
レディも書類を読み始めた。少しして、彼女はため息をつき、呟いた。
「2人とも、足を引っ張らないでちょうだいね」
俺とボルドスが反応した。
マシュラは気にせず書類を読んでいる。
「引っ張らないさ。何年一緒に戦ってきたと思ってるんだ?」
「同感です」
「ふふ、そうね。ま、頑張りましょう」
ーーー
目覚めると見慣れた天井が見えた。
周りを見ると床に沢山の本が無造作に置かれていた。
どうやら夢を見ていたようだ。
俺は体を起こし、腕を伸ばした。
「起きましたか」
ふと向かいのソファーを見ると、ボルドスが座っていた。
手には本を持っていた。読者中だったらしい。
ボルドスは本を閉じて、机に置いた。
「悪いニュースとバッドなニュース。どっちから聞きたいですか?」
「どっちも同じじゃねぇか。
で? どうした?」
「ロトス達が負けました」
「そうか……よし、行くぞ」
「もう出発ですか?」
「行動するなら早めにしたほうがいい。とにかく行くぞ」




