第29話 黄金剣の斬撃
リエナとドリックの戦いはもうすぐ終わろうとしていた。
戦況はリエナが有利であった。
距離を詰めながら、黄金剣に溜めた魔力を斬撃として放つリエナ。
その斬撃を、後退しながら攻撃魔術で相殺するドリック。だがいくつかの斬撃は対処が間に合わず、回避をした。
黄金剣の斬撃はドリックの魔術よりも2秒ほど発動が早かった。
たった2秒。それだけでドリックは防戦一方を強いられていた。
(いかん! このままでは…!)
徐々に斬撃の猛攻に追いつけなくなるドリック。
一瞬の隙を作り反撃する。なんてことをできる状況ではなかった。
ついにドリックは斬撃を喰らった。
斬撃は右足に命中した。
足を斬られ、バランスを崩し、倒れるドリック。
リエナは黄金剣をドリックに向けて言った。
「ロストマグナの情報を教えろ」
リエナはロストマグナとはなんの因縁もないが、バルザック達の為になにか情報を聞き出しておこうと思った。
情報を教えろ。その言葉を聞いた瞬間、ドリックの全身に寒気が走った。言えばケマガとドラハママのようになる。死にたくはない。だが、答えなくてもこの女に殺される。
その時、ドリックの腹部に激痛が走った。自身に向けられた剣が腹に突き刺さっていた。
「一応言っておくが、長くは待たない」
冷たい視線を向けるリエナ。
ドリックはただただ震えた。答えるか黙秘するか、どちらを選んでも結果は同じだった。
「アア、アァアア、アァアァアァ!!!!!」
ドリックはリエナに襲いかかった。自暴自棄の攻撃だった。
それを彼女が喰らう訳がなかった。
リエナは黄金剣を振り、ドリックの首を斬った。
ストンと首が落ち、首の無くなった身体はどさりと倒れた。
「……」
リエナは無言で剣についた血を落とした。
そして念の為ドリックが死んでいることを確認すると、リエナバルザック達を探しに森の中を走った。
 




