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第23話 知り合いの店


 「おいおい、ほんとにこんな所に店建ててんのか?お前の知り合いは」

 

 バルザックが疲れ果てた声でマナに言う。

 俺たちは今、マナの知り合いの店へ向かっている。

 向かっていると思いたい。


 そう思う理由は、こんな所に店なんかあるのか?だ。

 

 ウートル港に着いた時はそれはもう色んな店や露店が立っていた。

 たくさんの人が買い物をし、たくさんの商人が物を売っていた。

 例えるとデパートみたいな所だ。


 けど、マナはそんな賑やかな場所には向かわず、路地裏へと向かった。


 何度も何度も曲がり角を曲がっては歩き、遠くから聞こえてた賑やかな声はもう聞こえなくなった。


 普通、店を建てるのならさっきの場所が1番だ。

 人が沢山いるし、色んな人が商品を買ってくれる。

 ここじゃあ、誰も来ないし誰も買ってくれない。


 「もしかして、なんか危険な物とか取り扱ってるんじゃねぇのか?お前の知り合いは。

  だからこんな誰も寄らねえ所に店建ててんのか?」

 「流石にそんな物は取り扱ってないわ。

  単に賑やかな所が嫌いなだけよ。あいつは。

  と、喋ってるうちに着いたわよ」


 マナがある建物の前で立ち止まった。

 どうやらこの建物が知り合いの店らしい。

 ゴドウさんの店とあまり変わらない建物だな。


 「ミシキ、入るわよ」


 マナが店の扉を開けた。

 後に続いて、俺たちも店へと入った。


 店の中には魔道具らしき物が沢山、棚に置かれていた。

 どろりとした液体が入った小さなガラスの瓶、赤や緑といった宝石がはめ込まれた五つの指輪、豪華な装飾が施されたローブ、カウンターの奥にある棚には『修理品』と札が貼られた籠手のようなものが置いてあった。


 「家じゃあるまいし、『入るわよ』なんて言わずに普通に入らんかい」


 カウンターの下から女性の老人が現れた。

 この人がマナの知り合いで名前はミシキさんか。


 「何の用…かは聞かなくてもええか。

  アルテメトなら修理は終わったぞ」

 「ありがとね

  用はそれだけじゃないわ。魔道具を買いにきたのと、これ要らないから返すわ」


 マナは自身が使っていた腕輪と杖をミシキさんに渡した。


 「合わんかったか?」

 「えぇ、やっぱり私にはこっちの方が合ってるわ」


 マナはさっき俺が見た籠手を棚から取り出し、それを腕に装着した。

 手をグーパーと動かし、腕を伸ばして手首を上下に動かした。

 その後、小声で「よし」と言い、籠手取り外した。


 「なんだその武器」

 

 バルザックが疑問の顔をしながらマナに聞いた。


 「私の武器よ。

  ちょっと前に壊れちゃってね。修理に出してたの」

 「それでマナギスタ。

  どんな魔道具を買いにきたのか?」

 「自動で魔力を回復する魔道具あるかしら?

  この子に持たせたいの」

 「ん〜?」


 ミシキさんはこちらをジロリと見る。

 ギョロリとした目が少し怖い。

 いかんいかん、自己紹介だ。


 「初めまして、和泉仁で…す…?」


 ミシキさんは俺の自己紹介を聞こうとせず、俺の身体をジロジロと見る。

 なんか服についてたか?

 それとも何か気に触るようなことでも。


 「お主、魔力がないな」


 すると、ミシキさんは驚きの言葉を発した


 「なんでそれを…?」

 「わしには『魔力眼』がある。

  どんな奴かと見てみれば魔力無しとはお主一体何者じゃ?」



ーーー



 「なるほどなるほど、異世界人か」

 「信じるんですね」

 「半信半疑じゃがな」

 「それで、ミシキ。

  さっき言った魔道具はあるの?」


 ミシキさんは頭をポリポリとかき、ため息を吐いた。


 「すまんがない。そんな誰も買ってくれん古いもんなぞ置くわけない」

 「役立たずね」


 マナが冷たい声で言い放つ。

 俺に言っているわけではないのに、何故か背筋が凍った。


 ミシキさんは眉をひそめ、マナに鋭い眼光を向ける。


 「黙れ幼女老婆。

  中身は老婆のくせに、喋りは若い時なんぞ気持ち悪い」

 「今それ関係ないでしょ。折るわよ」


 危険な空気を感じ、その場から離れる。

 バルザックとアルスさんも俺と同じように2人から離れていた。


 「怖えな。あの2人」

 

 バルザックは腕を組み、ドン引きしているような顔をしながらそう言った。


 確かに怖い。今あの2人に近づけれるのは怖いもの知らずの…ん?


 ふと俺はある発言を思い出した。


 ミシキさんがマナに向けて言った『中身が老婆』。

 あれはどう言う意味だ?

 中身が老婆?中身が…あ。


 次に俺はある事を思い出した。


 テラスさんが召喚の魔法陣を作ろうとした時の会話。

 確かあの時テラスさんは30年前に作り始めたと言っていた。

 つまりマナはあの見た目に対して30歳…いや先程の言葉を考えると80から90歳以上ということか?


 考えるとますます分からん。

 こういう時は。


 「アルスさん、マナの年齢って知ってます?」

 「マナの年齢? 確か今年で135だったね」

 

 マジかよ。

 まさか異世界で本物のロリバ…いややめとこう。

 何か事情があるのかもしれない。

 例えば何かの呪いで肉体の成長が止まったとか、病気でそういう状態になったとか。


 「マナってもしかして魔族?」

 「いや、人間だよ。昔彼女、若返りの薬を作ってたんだけど、薬の量を間違えたらしくて。

  一応若返ったんだけど、肉体の成長がストップしたそうなんだ」


 まさかの薬か。

 それにしても魔術の天才と言われているマナでも、そんなおっちょこちょいのミスをするのか。


 「もういいわ。諦める」


 先程まで何やら言い争っていた2人だが、ついにマナが諦め、帰ろうとした。

 

 「待てマナギスタ。

  テラスに伝えといてくれ、たまには顔を出してくれとな」

 「テラスは死んだわ」


 ミシキさんの目がカッと開いた。

 その後2、3秒ほどなにやら考え込むとミシキさんはマナを見つめた。


 「事情は聞かん。

  めんどくさい事に巻き込まれそうだからの」

 「それが良いわ」

 

 マナは店を出た。

 俺はミシキさんに礼をしてから店を出た。



ーーー



 もう少しで宿に着く。

 早く着きたい。

 なぜかって? 


 場の空気が重いのだ。

 

 あの後、マナは一言も喋らず暗い顔をしていた。

 何か言葉をかけようとしたけど、アルスさんに「そっとしておこう」と言われた。


 無言で歩き続けて1時間経つ、しかし感覚的には3時間は経っているかのようだ。


 「いつまで無言でいるんだ。

  気持ちの整理ぐらいはキチンとしろ」

 「そうね、貴方に言われたくないけどね」


 我慢に耐えかねたのか、バルザックはマナにそう言った。

 マナはそれを怒るでもなく適当にあしらった。

 

 「…」


 すると、マナは無言のまま俺の隣まで移動してきた


 「イズミ、私の歳知らなかったのね。

  てっきりテラスから聞かされていると思ってたわ」


 マナは正面を向いたまま、落ち込んでいる気分のままそう言った。

 てか、会話聞かれていたのか。


 「ああ、年齢聞くのはちょっと失礼だと思って」

 「…ねぇイズミちょっといい?テラスは何歳だと思う?」


 ?。

 テラスさんの歳か。見た目からして20代…違う違う、えーとさっきのことを考えると最低でも…


 「50…くらい?」

 「……」


 マナが突然無言になった。

 もしかして歳間違えた?

 実は80でしたーとか?

 

 「私もテラスの年齢、知らないの」

 「?」


 問題出してきた本人も知らないのか?

 マナなら知っていると思ったが。


 「彼女、初めて会った時から何十年経っても見た目が一切変わらなかったの。

  最初は魔族と人のハーフだと思ってたんだけど、魔族の特徴が一つも無かったの。角とか翼とか。

  それで、あまりにも気になってある日聞こうとしたんだけど、やめたの」

 「どうして?」

 「さぁ…分からないわ。何故か…危険と感じたの」


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