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第22話 剣爺の弟子


 読書を再開してから10分後ようやく揺れが収まり、俺は冒険者ギルドへ向かった。

 図書館を出た際、宿を取り終えたアルスさんと合流。

 ギルドに到着したと同時に、入り口からマナとバルザックが出てきた。


 「で、どっちが──


 「こいつ」

 「オレ」


 アルスさんが聞く前に2人が同時に答えた。

 マナは不機嫌そうにバルザックに指を差し、バルザックは首をポキポキ鳴らし、やれやれと言わんばかりのため息を吐いた。


 「5回勝負、4勝1敗でオレの勝ちだ」


 普通5回勝負って3勝した方が勝ちじゃないのか?

 なんで3勝してるのに勝負を続けてるんだ?

 と、ツッコミそうになったが言わないほうが良さそうなのでやめた。


 ま、それは置いておいて。

 勝負はバルザックの勝ち。というわけで今から向かう所はバルザックがオススメする所だ。


 「それじゃあ、行くぜ」


 バルザックは歩き出し、俺たちはその後をついて行く。


 10分後、目的の場所に着いた。

 建物の外観は至って普通だった。

 煙突の着いた三角屋根。壁はレンガでできており、窓のガラスは掃除していないのか埃が目立って見えていた。

 

 「ここだ」

 「思ってたより普通ね。本当に最高級の剣を作ってくれるの?」

 「あったりまえだ、なんせここの店主は剣爺の弟子だからな」


 剣爺の弟子か。

 7人の弟子の1人がこんな普通の店にいるとは、少し想像しにくいな。


 (……ん?)


 ふと、入り口に目をやると『準備中』と書かれた札が貼られていた。

 なんだ準備中か。なら入るのはもう少し後…いや今昼だぞ。

 

 「今昼なのになんで準備中の札が貼られてるのよ」


 マナも同じことを考えていた。

 

 「あー、ゴドウの親父また忘れてやがる」

 

 バルザックは札を外して、入り口の扉を開けた。

 チリンチリン、と扉に付いていた鈴が鳴り響いた。

 部屋に入り、辺りを見回す。

 剣や槍といった武器が棚に並べられおり、カウンターと思われる机の近くには鎧が立てられていた。


 「おーーい、ゴドウの親父!!」

 

 バルザックが奥の部屋に向かって叫んだ。

 すると、1人の男が出てきた。


 ドワーフだ。

 黒く汚れた青色のエプロンをつけていて、ひどい寝癖かと思うくらいボサボサの髪、モサっと長く伸びた鼻の髭は顎まで達していた。

 そしてその男は片手に金槌を持っていた。

 どうやら作業中だったらしい。


 「おお、久しぶりじゃな。バルザック

  何の用じゃ?」

 「何の用って、武器以外にないだろ。

  あと準備中の札、剥がし忘れてたぜ」


 バルザックは先ほど取った札を机に置いた。


 「おお、すまんの

  所で武器って、おまえさんには覇大剣があるじゃろ?

  新しいのに変えるのか?」

 「ちがうちがう、こいつの武器を作ってほしいんだ」

 「初めまして、和泉仁です」


 俺は軽く礼をし、自公紹介をした。


 「礼儀正しい子じゃの

  儂の名前はゴドウじゃ」


 ゴドウさんは金槌を机に置き、机の下で何やらゴソゴソとしていると、辞書のような分厚い本を取り出した。


 「この中から好きな武器を選んでくれ」

 

 俺は本を開いた。

 本には剣、槍、斧といった色んな武器の絵が描かれていた。

 武器のカタログだ。

 

 ロングソード、ハルバード、手斧…。


 「色々あるな〜。もっと見せてくれ」


 バルザックが強引に覗き込んできた。

 本が見えない。邪魔すぎる。

 決め終えたら渡すからどいてほしい。


 「こら、イズミの邪魔しないの」


 マナがバルザックを片手で掴み、グイッと引き離してくれた。

 あの巨体を片手で動かすとは、恐るべきマナの腕力。

 

 それにしても、どの武器にするか迷うな…。


 「なぁバルザック、剣の他に持っておいた方がいい武器とかあるか?」

 「そうだな、槍とかがいいな。剣よりもリーチが広いし」

 「破壊力抜群のメイスとかも持っておいた方がいいんじゃない?」

 「間合いを詰められた時の為に、短剣も持っておいた方がいいと思うな」


 ますます迷う。

 槍にメイスに短剣。

 いっそのこと3つ全部持った方がいいと思うが、荷物がキツくなる。

 短剣とメイスはともかく、槍も持つことになるとなぁ…。

 槍は諦めて、メイスと短剣だけにするか?


 「伸縮可能な槍なら作れるぞい」

 「えっ」


 ゴドウさんが髭をいじりながらそう言った。


 「うん?違ったのか?お前さん、槍の持ち運びはどうしようかな、と言いそうな顔してたぞい」


 どんな顔だ。と俺はツッコミそうになった。

 確かにゴドウさんの言うとおり、伸縮可能な槍ならば持ち運びに困らない。

 なら、槍はそれにするか。


 さて、最後は剣だな。

 さっきの3つの武器がサブウェポンだとすると、剣はメインウェポンだ。

 自分に合う剣にしよう。


 「…ん?」


 本をペラペラと巡っていると、ある武器に目が止まった。

 反った刀身に片刃。

 刀身には刃紋が描かれている。

 そしてこの武器は日本人なら誰もが知っている。



 刀だ。


 

 よし、決めた。


 「ゴドウさん、これと先程言った伸縮可能な槍、短剣とメイスをお願いします。短剣とメイスはあなたのオススメでお願いします」

 「了解じゃ、3日で完成させてやるぞい」


 ゴドウさんは袖を捲ると、金槌を持って奥の部屋へと入った。


 「イズミ、えらく剣は早く決めたな。そんなにこれが良かったのか?」

 「刀は男のロマンなんだよ」

 「そうなのか?オレはよくわかんねぇなぁ」


ーーー


 さて、次の目的地はマナの知り合いの店だ。

 だが、今日はもう宿で休むことになったので行くのは明日。


 マナから聞いた話だと、その知り合いの店は最新の魔道具の他に古い魔道具なども置いているらしく、たまにレアモノがあるそうだ。


 どんな魔道具があるか楽しみだ。

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