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「黄金騎士、おつかいに行く」


ーーエルフの国『ユリスレア』 パーシズム宅ーー


 「リエナー!リエナー!!」


 大広間であぐらをかき、孫の名前を呼ぶ老人。

 名をシリウス・パーシズム。

 彼は昔、黄金騎士と呼ばれていた。

 黄金騎士というのは彼の父であるロス・パーシズムが造った黄金鎧と、剣爺のシマバキが造った黄金剣『極』を使い、世界中を旅していた時に付けられた異名である。

 現在の彼は歳のせいで剣を振ることが難しくなった為、鎧と剣は孫であるリエナ・パーシズムに譲っている。

 今はそのリエナが黄金騎士と呼ばれている。


 「そんなに大声出さなくても聞こえていますよ、お祖父様」


 襖からひょこりと顔を出すリエナ。

 彼女はあぐらをかいてるシリウスを見て、少しため息を吐いた。

 彼がこの体勢の時、大抵はめんどくさいおつかいを頼んでくるのだ。

 だが、断りでもすれば駄々をこねてくるので彼女はそのままシリウスの前に座る。


 「何の用ですか?」

 「買ってきてほしいものがあるんじゃが」

 「何ですか?」

 「『超人魔大決戦』じゃ」

 「それ、あと数週間すればこっちでも発売されますよね?

  我慢してください」

 「嫌じゃ!はよ読みたいのじゃ!」

 「前までは1人で行ってたじゃないですか」

 「歳のせいで腰がのう…」


 超人魔大決戦。

 それは小説家クレス・アマンダの作品の一つである、1000万部を越える超人気小説だ。

 その小説の最新刊が先日発売されたのだ。

 が、この先日発売というのは人族の国での話であり、大森林を抜けた先にあるこの国では最新刊の入荷がまだであり発売されてないのである。

 つまりシリウスはリエナに「人族の国に行って買ってきて」と言っているのである。


 「飛竜宅配便とか頼んでないのですか?」

 「あれは配送料が高い!」

 「…だから私が直接買いにいく…ですか」

 「そうじゃ」


 リエナはため息をついた。

 昔は尊敬していた祖父であるが、今ではこのぐーたらな人だ。

 尊敬など無くなり、めんどくさい人と考えている。

 

 「…分かりました。今から行ってきます。

  けど、もしかしたらどこも売り切れで、買えない可能性もあるので、その時は我慢してくださいよ」

 「すまんな」

 「それと、次からは父に頼んでください」


 リエナはスッと立ちあがり、自身の部屋へと戻った。

 部屋で財布と鞄を取ると玄関に行き、靴を履いて外へ出る。


 「おいでピピ、出かけるよ」


 彼女は玄関の前で寝ていたグリフォンを起こした。

 このグリフォンの名前はピピ。

 ピピは数十年前、人間に襲われ怪我をしていたところを、リエナの父、タガト・パーシズムに拾われた。

 怪我を治してくれた彼に懐き、そのままパーシズム家に住むことになったのだ。


 「それじゃあ行くよ」


 ピピに乗り、彼の頭をポンポンと叩く。

 それを合図にピピは翼を羽ばたかせ、空へ飛んだ。


 (ま、たまには外に出るのもいいか)


 リエナはそう思い、ユリスレアを出て人族の国へと向かった。

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