第20話 元部下
ドラハママの戦闘後、俺たちは情報整理と休憩の為、休める場所まで移動した。
「五大魔将軍の1人を倒した、ねぇ…」
マナがポツリと呟いた。
「魔王軍の最高戦力…だっけか?」
「そうよ。
ロストマグナがその内の1人を倒してるとはね」
五大魔将軍の強さがどれくらいなのかは俺は分からない。
バルザックが元五大魔将軍だったから、おそらく全員がバルザック並みの強さなのだろう。
「五体魔将軍の1人が倒されたなんて話初めて聞いたわ」
「え?知らなかったの…いやそうか、マナは世界新聞なんて読まないからね」
俺も今初めて知ったなんて言えない。
そもそも世界新聞って…。新聞なんてあったのか。
「で、バルザックはいつまであそこにいるのかしら」
バルザックは少し離れた場所にある大きな木にもたれかかっている。
休憩場所を見つけた後、バルザックは「少し落ち着かせてくれ」と言い、あの木の所まで移動した。
あの時あそこまで怒ってたのは、そのガンダスという人はとても親しい人物だったのだろうか。
「……」
するとバルザックは無言のまま俺たちの方へ戻ってきて、どさりと岩に座った。
彼の顔はやや不機嫌そうだった。
「数週間前の事だ」
と、突然バルザックが話し始めた。
「言わなくてもいいわよ」
遮るようにマナが言った。
「いや、言わせてくれ。
ある日、スキャル…五大魔将軍の1人だ。そいつから連絡があった。
『魔王城から秘宝が奪われた。その際犯人を捕えようとしたガンダスが殺された』とな」
「…」
「ガンダスはオレの元部下だ。
オレの…大切な部下だ。
あいつが殺されたという連絡をもらったときは、犯人を今すぐ見つけて殺してやりたいと思った。
けど、グルバルタから遠く離れたここにいるんだ。そんなことできないし、今から戻ったところで数年はかかる距離だ。戻っても犯人はグルバルタを出て、どっかの国に隠れているに違いないさ。
だが、まさかこんなところで犯人の情報を知ることができるとはな…」
「…」
「よし、んじゃそろそろ行くか」
「え?」
先程までの暗い雰囲気が無かったのように、バルザックは立ち上がった。
「どうした?」
「いや、急に…その…さっきまでの暗い雰囲気は…」
「気にすんな。オレはなんか辛いことがあったら、誰かにその内容を話してスッキリさせるタイプだからな」
「真面目に聞いて損したわ…」
マナが額に手を当てため息を吐いた。
「あ、そうだ」
バルザックはこちらを向き、自身の鞄から筆と紙を取り出した。
「ロストマグナの顔教えてくんねぇ?」
「???」
ーー魔族の国『グルバルタ』 マーダハ城ーー
「…ャル!スキャル!」
廊下を歩く1人の騎士を、黒のローブを身に纏った男が呼び止めた。
「アズライル、どうしました」
「先程バルザックから連絡があった。侵入者の情報を見つけたと」
「…本当ですか」
「これを」
アズライルは手に持っていた一枚の紙をスキャルに手渡した。
その紙には1人の男の顔が描かれていた。
「バルザックが送ってきてくれました。その男が犯人です。名前はロストマグナというそうです」
「…分かりました。すぐにこれを全兵士達に知らせてください」
「了解しました」
アズライルは先程来た道を引き返した。
「ロストマグナ…か」
スキャルはグッと手を握り、歩き出した。
(待っていろ、すぐに見つけ出して殺してやる。
魔王軍を敵に回したことを必ず後悔させてやる)
第3章 元五大魔将軍 完
 




