第18話 武器
サハカ国まで後少しの距離。
特に問題がなければ明日の朝には着く。
今は夜。
時間は大体21時ぐらい。
アルスさんはもう寝てしまい、マナは何か本を読んでいる。
バルザックは
「ふっ! はっ! よっ!」
大剣を振り回しながら色々と動き回っている。
攻撃を避ける動き、大剣で何かを斬る動き、防御をする動き。
シャドーボクシングのようだ。
「おらっ!」
自身の身長と同じくらいの大きさの大剣をあんなに軽々と振り回している。
俺だったら待つことさえできないだろう。
「ぐは! やられた〜!」
と突然、バルザックは棒読みで叫び、その場に仰向けで倒れた。
あんなに真剣に動き回っていたのに突然のやる気のない動き。
「急にどうした?」
俺は首を傾げて聞いた。
「いや、なんかじっと見てるからちょいとふざけようかなと」
バルザックは起き上がり、こちらを向いた。
「気になるか?」
「まぁ、凄い軽々と大剣を振り回すなぁ、と」
「凄いだろ? 身体をここまで鍛えれば、お前もいけるかもな」
と、バルザックは力こぶを自慢げに見せてきた。
「そういや気になったんだがよ。
お前の武器はそれだけか?」
バルザックは俺の腰についてる剣を指差した。
「そうだけど」
「他の武器は持たないのか?」
「う〜ん、剣だけで十分だと思うけどな」
「もったいねぇぜ。
剣の他にも槍、弓、棍とかいっぱい武器あるんだから、色んな武器を使ってみた方がいいぜ。
剣よりも得意な武器が見つかるかもしれないし、自分に不得意な武器が分かるかもだぜ」
「そうだな…。他にも使ってみようかな…」
「サハカ国には武器屋が沢山あるんだが、その中で1番いい店知ってるから、着いたら教えてやるぜ」
ーーー
次の日。
朝食を食べ終え、出発した。
俺は歩きながら剣以外の何を使うか考えた。
槍なら剣よりもリーチがある、弓を使えば遠くにいる相手を倒せる事だってできる。
けど、槍はリーチの長さを活かした動きをしなければならないし、弓は矢の本数に気をつけなければならない。
そこをよく考えて決めないとな。
『サハカ国に知り合いの魔術師が店を開いてて、そこにも寄るわ』
あ。
マナが言っていた知り合いの店。
武器になる魔道具があるかもしれない。
魔力はマナに頼めばなんとかなる……いや、いちいち頼むのも手間がかかってしまうな。
…。
……。
………。
そうだ。
自動で魔力を回復する魔道具があれば問題ない。
ただ、それがあるかどうか。
店に着いたら聞いてみるか。
「皆止まれ」
すると、バルザックが突然立ち止まった。
一体なんだろうかと俺は立ち止まる。
アルスさんはなんだ?という顔でバルザックを見つめている。
マナは何やら正面を睨んでいた。
俺は前を見る。
「…?」
少し先に大きな岩があるだけで、誰もいない。
その岩は道のど真ん中にあって、少し邪魔だと感じる。
「バルザック、気づいた?」
「ああ、ちょっと待ってろ」
バルザックは足元に落ちていた小石を拾い、それを
「ふん!!!!!」
全力で大きな岩に投げた。
ブォンという音が鳴り、ゴォンという音が響いた。
「急にどうした!?」
俺は驚き、バルザックに聞いた。
「見ろ」
バルザックは顎をクイっと前に動かした。
俺は再び前を見る。
「…え?」
先程の大きな岩を見て、俺は思わず背筋が凍った。
岩はモゾモゾと不気味に動いていたのだ。
まるで生き物のように。
すると、その岩から手が現れ、足が現れ、そして怪物の姿に変わった。
その怪物はアルマジロのような姿で、両手には短剣を持ち、こちらを鬼のような形相で睨んでいた。
「わしに気づくとは流石だ」
「殺気がダダ漏れだ。
で、誰だお前」
怪物は叫んだ。
「わしの名はドラハママ! ロストマグナ様の配下が1人、ドラハママだ!」
「友の仇、討たせてもらうぞ!」




