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ヒーローズ•オブ•アルメリアス  作者: とりぷるとろわ
第3章 元五大魔将軍
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第16話 バルザック


 「さぁ! やろうぜ!」


 バルザックと言う名の男は拳を握りしめて、かかってこいと言う風にファイティングポーズをとった。


 「いやいやいや。ちょっと待ってちょうだい」


 マナが慌てて止めた。


 「どうした?」

 「なんで私たちがアンタと戦わなくちゃいけないの」

 

 マナの言う通りだ。

 知らないやつから急に戦ってくれとか意味が分からない。

 

 「オレは強い奴と戦うことが好きだ。

  お前と隣の騎士の兄ちゃんからは強者の匂いがする。

  だから戦ってくれ」


 なるほど。それなら納得…かな?

 ていうか俺省かれてる?


 「安心しろ。

  素手でやるし、殺しもしない」

 「いやいや…」


 マナはため息をついて顔に手を当て、どう断ればいいのか…と呟いた。


 「OKしてもいいんじゃないかな?」


 アルスさんが声を小さめにしてそういった。


 「断っても面倒なことになりそうだし、それに相手は素手でやってくれるし…」

 

 確かにここで断っても、「そこをなんとかー!」って言いながら無理に頼んできそうだ。

 ならいっそのことOKにした方がいいかもしれない。


 「はぁ…。分かったわ。戦ってあげるわ」

 「よっしゃぁ! ありがとな!」


 マナはポキポキと手を鳴らし、アルスさんは剣を抜いた。

 俺もすかさず剣を抜く。


 「おっと、黒髪の坊主はやらなくていいぜ。

  オレが戦うのはそこの2人だけだからよ」


 やっぱり俺は省かれてた。

 

 「イズミ。私達2人でやるから別にいいわよ」


 マナにそう言われて俺は剣を納めた。

 戦闘に巻き込まれないよう、少し離れた場所へと移動する。

 木に隠れながら戦闘を見守りたいが、残念なことにこの場所に木は生えていない。

 あるのは草原と道だけだ。


 「準備はいいな?それじゃあ…」


 バルザックは腰を低くし、脚に力を入れる。

 マナは棒立ちの状態、アルスさんは盾を正面に向け防御に入る。


 「まずは…騎士の兄ちゃんからだぁ!」


 バルザックは地面を思い切り踏み抜く。

 地面が抉れたと同時に、アルスさんの目の前にバルザックが現れた。


 バルザックは右ストレートを放った。

 一瞬の事だったがアルスさんはすぐに反応して、攻撃を盾で受け止める。


 だが。

 

 バキッ!


 「なっ!?」


 黒い巨体から放たれた剛拳は盾を粉々に砕き、同時に1人の男を吹っ飛ばした。

 アルスさんは地面に3回転がり、倒れた。


 「次はお前だ!」


 バルザックは左手を高く上げ、マナに向けて手刀を放つ。

 しかし、その手刀は止まった。


 「お…!?」


 マナは手刀をパシッと、まるで紙のように軽々と受け止め、ぬるりと視線をバルザックに向けた。

 その眼は獲物に恐怖を与えるような、冷たく恐ろしく…そして冷静な眼だった。


 マナはバルザックの左手をグイッと引き寄せる。

 左手を急に引き寄せられたことにより体勢が崩れたバルザックの顔面を、マナはガシッと掴み、


 「今度はこっちの番よ!」


 バルザックの腹に思い切り拳を放った。


 「ぐほあぁぁ!!」


 バァン!とまるで巨大な風船が破裂したような音がした。

 バルザックは吹っ飛び、アルスさんと同じように地面に3回転がり、倒れた。

 

 「えぇ…」


 俺は驚いた。

 魔術を放つのかと思ったらまさかの拳だった。

 

 「いやー、凄いね。

  マナの全力の身体強化から放たれる拳は」

 

 すると、さっき殴られて吹っ飛んだアルスさんがいつの間にか俺の隣に来ていた。

 アルスさんは左腕を押さえていて、大量に汗をかいていた。


 「えっと…アルスさん、大丈夫ですか?」

 「折れちゃったね、左腕。

  でもあの時…盾が壊れた瞬間後ろに下がろうとしていなかったら、左腕が折れるどころじゃすまなかったかもね」


 バルザックの拳はどれだけ強かったのだろうか。

 もしこれが俺だったらと思うと体が震えてしまう。


 「アルス、これ」


 マナはポーチから赤い液体が入った細長いガラス瓶を一つ取り出し、アルスさんに放り投げた。アルスさんはそれを右手でキャッチした。

 マナが投げたのは回復薬だ。


 回復薬には三つの種類がある。

 軽傷を治す緑色の回復薬。

 緑色の回復薬よりもさらに高性能の赤色の回復薬。

 毒や麻痺などの状態異常を治す青色の回復薬。


 赤色の回復薬は他の二つより高額だが、マナはそれを沢山持っている。

 確かポーチに10本、バッグには30本ほど入れていた。

 マナはどれだけ金持ちなのだろうか。

 羨ましい。


 アルスさんは瓶の蓋を開け、中の液体をごくごくと飲む。

 飲んでから数秒後、アルスさんの折れた左腕は治った。

 

 「あとは私がやるわ」

 

 マナはそう言うと正面を向き、うずくまって嘔吐するバルザックを睨んだ。


 「はぁ…はぁ…うっ、おえぇぇ!」

 「まだ続ける?」


 バルザックはよろめきながら立ち上がり、目を細める。


 「はぁ…はぁ…よく見たら、とんでもねぇ魔力量だな。

  それほどの魔力量、初めて見るぜ。

  そしてさっきの拳は…身体強化か。

  今の一撃、スキャルや黄金騎士のジジイ並みだな」


 ズボンについた土をパンパンとはたき、バルザックはニヤリと笑った。


 「やめだ。オレの負けだ」

 「そう。なら私達はもう行くわ」

 「いや待て」

 「何?まだ用があるの?」


 マナは嫌そうな顔をしながらそう言った。


 バルザックは手を合わせて頭を下げた。


 「オレをお前らの仲間に入れてくれ!」

 「嫌」

 

 マナは即答で断った。


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