第1話 異世界
「◼️◼️◼️◼️!!」
突然耳に入ってきた謎の言葉。
何を言っているのか分からない。そもそもここが何処か分からない。俺は母とデパートで一緒に買い物をしていたはずなのに何故か今は木の床で尻もちをついている。
分からない。
分からないことだらけで焦る。
突然起こった不思議な出来事で心臓がバクバクと鳴っていてうるさい。
いや、落ち着こう。落ち着いて状況を整理するんだ。
俺は母と買い物していて、突然足元に光が現れて、吸い込まれるような感覚が起きて、謎の場所で尻もちをついている…。
いや意味が分からん。
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!◼️◼️◼️◼️!」
目の前にいる女は誰だ…?なにかはしゃいでいるが…。
女はファンタジーゲームに出てくるような服を着ていた。
辺りを見回すと分厚い本がいっぱい積み重なっていて(何個かは崩れ落ちるいるが)、人が4、5人は入るんじゃないかと思うくらい大きな鍋が部屋に隅に置かれている。
そして下を見ると床には紙が敷かれていて、魔法陣のようなものが描かれていた。
「もしかして…これは…」
異世界召喚ってやつか…?
マジかよマジかよマジかよ。
ヤバい、心臓の鼓動が更に激しくなった。
「◼️◼️◼️◼️」
「◼️◼️◼️」
「◼️◼️◼️◼️◼️」
ていうかさっきから目の前にいる女は何を言っているんだ。さっきまではしゃいでいたのに気がついたら俺に何か話しかけている。
今状況を整理しようとしてるのに気が散ってしまう。
「貴方、この言葉分かる?」
「あぁ!もう!ちょっと静かにしてくれ!今状況を整理しようと…………?!」
日本語…日本語…!?さっきまで訳の分からない言葉を喋っていたのに突然日本語を喋ったぞ…!?
「あっ、もしかしてこの言語が正解かな。ニホン語だっけ確か」
ヤバい、さらに混乱してきた…。なんなんだいったい…!
「よし!」
女は笑顔になって、手を差し伸べてきた。
「一階に行こうか。こんな散らかった部屋で喋るのもなんだし」
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「ここに座ってて、今水を持ってくるから」
「ああ…はい…」
よく分からないまま、一階に連れてこられた。
とりあえず椅子に座る。
女は水を持ってきて机に置く。
「ま、突然不思議な出来事が起きて頭が混乱してるでしょ。一旦水を飲んで落ち着いて」
「はい…いただきます…」
ゴクゴクと水を飲む。
飲み終えた後は深呼吸をして質問した。
「あの…ここはどこですか…?貴方は誰なんですか?ていうか俺はなんで―」
「ストップストップ。落ち着いて。今から説明するから」
「私の名前はテラス・メイ・リメイス。魔術師よ」
「魔術師!?」
「そう、魔術師。ここはアルメリアスという世界で貴方は私が作った召喚の魔法陣によってこの世界に来たの」
「えっ、なんで俺を呼んだんですか…?」
「実は異世界から人を召喚する魔法陣って今まで誰も作ることができなかったの。私はある日考えたわ。もし異世界から人を召喚できれば魔術師の歴史に名を残せる、とね」
「へ、へぇ…」
「それに、もしかしたら師匠に褒められるかもしれないの!」
「師匠?」
「そう!私の師匠!師匠はね、魔術師の中では1番っていうほどの知識と強さを持ってるの。私が1番尊敬する人。師匠に褒められたらもう私は喜びのあまり爆発するわ!」
「そ、そうなんですか」
「あっ、まだ貴方の名前を聞いてなかったわね」
「和泉仁です」
「いい名前ね」
「あの、所でなんで日本語がわかるんですか…?」
俺は1番気になっていたことを聞いた。何故異世界なのに日本語が分かるのだろうか。あっ、もしかしたらここは異世界に見えて実は数千年後の地球…!?
「ふふん、私はね、特殊な能力を二つ持ってるの。一つ目は異世界を視ることができる能力。これを使って、どこの世界から召喚しようかな、と適当に視て、最初に視えたのが貴方がいた世界」
「そして二つ目は視界に入った文字を自動的に解読する能力。これを使って貴方がいた世界の色んな言語を学んだの」
なにそれすごい。
「そしてある程度学んだ後、異世界召喚の魔法陣を作ったの。貴方の世界とアルメリアスを繋ぐ魔法陣をね」
さっき、何度も俺に話しかけていたのは世界中の国の言語で喋りかけていたのか…。
俺は英語苦手だし、それ以外の国の言語を学ぶ機会なんてなかったからなぁ…。
「イズミくん、他に聞きたいことはある?」
聞きたいことか…。他に聞きたいことは………あっ。
「すみません…一つ聞きたいのですが、俺って元の世界に帰ることってできます?」
「えっ、あっ…その…えっと…」
テラスさんの目が突然泳いだ。
「一応帰りの魔法陣は作れるのだけれど、多分完成するのに30年はかかるかも…」
「えっ」
俺の視界は真っ白になった。
「完成するのに30年…………?」




