第13話 マナVSケマガ
マナは杖をケマガに向ける。
(さてと…姿が変わったわね。あの馬鹿みたいに長い脚…警戒しておくべきね)
攻撃はせず、ケマガの様子を見る。
ケマガもその場から動かず、マナの様子を見る。
「……ん?」
すると、マナは気づいた。
ケマガの目線が、時々イズミに向いている事を。
ケマガは警戒している。
イズミが持っている黒い球を。
(よし…狙い通り)
先程イズミに渡した黒い球。
あれは『縛れ』という言葉で拘束魔術を発動する魔道具。
あの魔道具でケマガの動きを封じ、アルスが一撃を入れて倒す。
そしてロストマグナの情報を聞き出す。
それがマナの作戦。
マナがするのは、イズミがあの魔道具を使える状況を作ること。
だが、相手が自分に集中していれば、迂闊に攻撃はできない。
その為、隙ができるよう、イズミに言った言葉がわざとケマガに聞こえるようにした。
(…よし)
強化魔術で全身を強化し、タイミングを見計らう。
(攻撃してくる前に決める)
ケマガの目線が魔道具に向いた瞬間、マナは動いた。
「ーーふっ!」
強化された両足で地面を思い切り踏み抜く。
ドゴン、と大きな音がなり、地面が抉れる。
その音と同時にマナは勢いよく飛び出る。
「…!」
ケマガは驚き、マナの方へ目線を向ける。
マナは拳に力を込め、ケマガの腹目掛けて拳を突く。
「チッ!」
ケマガはその場で高くジャンプして回避した。
高さは約20メートル。
普通の人であれば、あんなに高くは飛べない。
普通の人であれば
「ふははは!どうだこの高さ!流石のお前も…グハッ!?」
マナはケマガが空中へ飛んだと同時に『炎球』を放った。
「お前のその馬鹿みたいに長い脚を見れば、高く飛びそうなことくらい誰でも気づくわ」
「グッ!」
ケマガはクルリと回転し、体勢を整えて着地しようとする。
だが、マナがそれを許さない。
「草縄!」
杖から草の縄が発射され、ケマガの左脚に巻きつく。
「くそっ!」
ケマガはすぐに鎌で縄を切ろうとする。しかし。
「そらっ!」
それを阻止しようとマナは思い切り縄を引っ張り、ケマガを地面に叩きつける。
その威力は地面が凹むほど。
ケマガは血をガハッと吐く。
左脚に巻きついている草の縄を切り、よろめきながら立ち上がる。
「クソ…ガキがぁ!」
ケマガは殺意の目を向ける。
そして、今度はこちらの番だと言うふうに、ギラリと光る鎌を向ける。
「……お前…弱すぎない?」
「…何だと?」
呆れた声で発せられた言葉に、ケマガは眉をピクリと動かす。
「私が使った魔術、そんなに強くない魔術よ。それを避けられないなんて…笑っちゃうわ」
「……」
「ロストマグナの配下って言うから警戒していたけど、無駄だったみたいね」
「…れ」
「なに?聞こえない」
「…黙れ」
「聞こえない。もう一回言ってちょうだい」
「黙れと言ってーー
「縛れ!!」
ケマガは声がした方向を振り向く。
見えたのは黒い球とそれを投げたイズミの姿。
次の瞬間黒い球が光り、数十本の鎖となってケマガを縛る。
両足を縛られ、両腕を体ごと縛られ、体勢を崩した。
「こんなもの…!」
ケマガはすぐに鎖を壊そうと力を込める。
だが、アルスがそれを阻止する。
「くらえっ!」
勢いよく飛び出たアルスは、ケマガの顔面を思い切り殴る。
顔面を殴られたケマガは吹き飛び、地面に転がり倒れる。
「分かり易い挑発に乗ってくれてありがとう」
マナはフッと笑い、ケマガの所まで歩く。
「さて、ロストマグナの情報を吐いてもらうわ。
拷問してでも聞き出してやるわ」
「くそが…」
ケマガはマナを睨みつける。がーーー
「……!」
突然、ケマガの顔が青ざめる。
「待っ、待っ、待って!」
「何? 今さら…ーー!」
怖気ついたのかとマナはそう思ったが、あることに気づいた。
ケマガは自分に怯えてはいない。別の何かに怯えている事に。
「待ってください! ロストマグナさーー」
瞬間、ケマガの全身が石に変化した。
「……!?」
マナは驚き、後ろへ飛び下がり、杖を構えて攻撃の体勢に入る。
ピシッ
すると、石に変化したケマガの身体にヒビが入り、バラバラに崩れ落ちた。
「……チッ」
バラバラに崩れ落ちたケマガを見つめ、マナは舌打ちをする。
「ロストマグナ…」




