今日休みますとか言い出しとけばよかったな……そんな勇気ないけど:1
「起きろ、オリンピア」
ファルナがオリンピアに蹴りを入れる。
「うう……」
どうにか生きているらしいオリンピアが腹部を押さえながら半身を起こす。
「今日は一段とダメダメだったわね、鎖が無いタイタニアってそんなに弱いんだ」
「うるさい……」
「……ファルナ殿、そいつの扱いは騎兵隊に任せていただいてもよろしいか?」
赤熱している籠手から空弾倉を引き出しつつ隊長が尋ねる。
「ん?ああー、そうねぇ……グレイマンに確認取りたいけど……今アイツもお楽しみ中だからねぇ」
ずどん、と。掘削用の爆薬を点火したような轟音が響いた。
件のグレイマンとロスが戦う騎兵隊支部の方からだ。
「グレイマン、何かやったわね」
蒼い鎧を着たグレイマンの姿を思い出す。
(……ロスさん、負けたのかな)
「ところでオリンピア、よくも私の友達いたぶってくれたわね?何か言い残すことある?」
「……なんだよ、聞いてくれるの?甘ちゃんだなぁファルナレギアは」
オリンピアがタイタニアを支えにして立ちあがる。
「まだやる気……?らしくないわね」
起き上がるオリンピアを見るファルナは少し怯んだ様子だ。
「ああ……最近目標が出来たんだ……」
オリンピアは笑みを浮かべている。
「私に合ってる目標でさ……目指してる限り、力が湧いてくるんだよ……」
何が彼女を支えるのか、思えば戦っている最中も彼女は笑顔だった。
「ねえファルナ、お前にそんな目標はあるの?」
笑うオリンピアの正面に何かが突き立った。
「……何!?」
その場に居る全員が驚いていた。
空から突然降った一本の『それ』はイストサインの石畳を砕き、辺りに砂煙を巻き上げる。
「うわぁ!!」
風圧でエドガーが吹き飛ばされた。
「エドガー……!」
私は原石糸が身体を支え、吹き飛ばされることはない。
「う……痛た……何よ?」
ファルナはすぐ近くまで飛んできていた。
砂煙の先にはオリンピアの他もう一つの人影がある。
「うむ、ピッタリの場所だ。オリンピア、目標は達成できそうですか?」
ロスの声だ。
「今は無理」
「では逃げましょう」
煙越しにオリンピアの鋭い視線を感じる。
「……レガリアって言ったな……その銃壊すなよ、絶対だぞ」
「待てオリンピア!」
「タイタニア……お姉ちゃんに力を貸して」
タイタニアを抱えるオリンピアの腕を色鉄──緋鉄のような装甲が覆っていく。
「うりゃ!」
ファルナが原石剣を持ち、飛びかかった。
だがその瞬間、オリンピアを中心とした紅い光が辺りを覆っていく。
(何……!?身体が重い……)
「ぐは……」
ファルナは地面に叩きつけられていた。
中心部にいるオリンピアとロスには影響がない様子だ。
「では失礼」
「ちょっと……待ちなさいよ……!」
ロスがオリンピアとタイタニアを抱え、その場を後にする。
辺りの騎兵達も動けずにいたが、力場が離れると身体の重さが消えていく。
「……アイツら……好き放題暴れて帰りやがって……!」
ぼやきながらファルナが私の方に来る。
「レガリア、大丈夫?」
私の頭はまだ脳震盪を起こしたままだ。
「ファルナ……ありがと」
脳が揺れる、吐き気もする。
気持ち悪い感覚から逃げるように私の意識は失われた。




