実は明日から休みなんですよ:3
「とりあえず座って、まずは銃を見せてもらおうか」
グレイマンに原石銃を差し出す。
(義手だこの人)
銃を受け取ったグレイマンの両腕は黒い鉄の塊だった。
「どれ……ふむ、材質は緋鉄に見える」
鉄の指を操り銃を手に取っている。見た目は普通の鋼鉄のようだが、指まで自由に動く所を見ると内側には色鉄を利用した機構が備わっているのだろう。
(それともその手が原石武器……?)
「ねえレガリア、その銃に名前ってあるの?」
「え……名前?」
「そう名前」
ファルナが腰に提げた剣を指して言う。
「私の剣はファランって名前なのよ、
「武器に名前付ける趣味は無いんだけど」
まず原石銃は元々官給品の銃が変化した物だ。そのせいか自分の物という気がしない。
「そんなのダメ、原石武器には名前がいるのよ、せっかくだから私が付けてあげるわ」
しばらく唸っていたファルナが顔を上げた。
「よし、アガサって呼びましょ!良い?その銃は今日からアガサよ!」
なし崩し的に名前を決められた。
「アガサ、ね。了解」
「いいかな?レガリア君」
「は、はい!」
グレイマンの方に目を向けると机の上にはシリンダーを剥き出しにされた原石銃──アガサが置かれていた。
「これはオリジナルではなく普通の銃が君に侵食されてこうなった、それで合ってるかね?」
言われて思い出す。普通の銃が私の手の中で熱を持ち、色を帯びていった時のことを。
「はい、合ってます」
グレイマンは考え込んでいる様子だ。
「レガリア君、原石武器についてはどれほど知っている?」
「それが全く知らなくて……」
「そうだろうな……」
原石武器については基本的に秘密事項だと隊長から伝えられている。アガサに触れる前まで私も存在を知らなかったのだ。
「まあ軽く説明しておくと、原石武器とは所有者と共に生きている武器だ。ファルナの剣にグラドミスの鎧、君の銃」
グレイマンが義手を鳴らす。関節に白輝鉄が見える。
「原石武器は二種類がある、武器そのものに原石が宿る物か所有者の身体の中に原石が宿る物だ。ファルナ君とグラドミスを比べてみてくれ」
ファルナが剣を少し引き抜いた。彼女の剣の柄の部分には極彩色に輝く装飾が施されている。
「ファルナ君はあくまで武器としてその剣を使える。対してグラドミスは自らを器とし、鎧は媒介にして武器や兵士を作り戦っていた」
ここでグレイマンが興味深げに私と銃を見た。
「だが君の銃は……どちらなのかわからない」




