もっと休んでたかったです:3
幾つかの騎兵隊屯所を回り、駅や港、イストサインの要所を訪れる。
「こんなもんだな、そろそろ戻ろうぜ」
「そうね」
時刻は昼前、異常なし。雨天もあってか人通りも少ない。
(今日は隊長に弁当持って来てるのよね)
以前、隊長に手料理を食べてもらう約束をしていたのだ。
(ちょっと待ってよ……あんな事件起こった日に食欲なんて湧くの?)
考えないようにしていた事がつい頭に浮かび、死体がフラッシュバックする。
「……なんか昼食って気がしないわね」
「そうだよな、俺もだ」
現在地は駅。私たちの気持ちを反映してか空は曇天、そして雨。
「あ!ちょっとそこの騎兵さーん」
雨よけの外套を被り直した時、駅から来た人物に声をかけられた。
「はい、どうかしましたか?」
「道案内を頼みたいんだ。ここの騎兵隊支部に連れて行ってくれない?」
単なる案内とわかり少しホッとする。
「良いですよ、私達も今から戻る所なので案内しますね」
「本当?助かるよ」
鮮やかな金色の髪を短く切った少年──パッと見判断しにくいが女の子だろう。
雑誌で見たことのある流行のシャツとズボンを着こなし、綺麗に光る緋鉄の鎖を腰から提げている。一目して裕福な家庭で育ったとわかる。
「旅行か?……お嬢さん?」
「女で合ってるよ、勝手気ままな一人旅さ」
見たところかなり若い、成人しているかも怪しい少女が列車で一人旅などするだろうか。
「そんじゃ戻ろうか、エドガーちょっとこっち」
エドガーが顔を近づけ耳打ちする。
「どう思うエドガー……家出?」
「だったら騎兵なんかに話しかけるかよ……見た目より歳いってるんじゃねぇの?」
「でもあんな格好で一人で歩いて……身包み剥いでくださいって言いながら歩いてるようなもんじゃない」
「聞こえてるんだけど」
内緒話を聞かれてしまった。流石に失礼だ。




