なんだか思ってたのと違うけど、私の人生はまだ続いているみたい:1
グラドミスがロス達へ追撃をかけようとした時、彼の身体に無数の糸が絡み付いた。
「アンタがグラドミスね」
声と共に糸が引き絞られる。グラドミスの肉体を引き裂き、鎧すら軋ませる鋭い糸が。
「……!……何だと!」
「よくもレガリア虐めてくれたわね」
レガリアの姿をした彼女は強気に言い放つ。
「アンタの人生、ちょっとだけ覗かせてもらったわ」
「貴様、誰だ……あの女ではないな」
「なかなか面白かったよ、自由で、前向きで、でもやっぱり私もアンタが嫌い」
糸がグラドミスの左腕を引きちぎった。黒い肉片と血が辺りに飛び散る。
「やれ!」
グラドミスの傀儡、原石銃を持った鎧が構える。
「ばーか」
「なっ……!」
だが、銃を構える前に鎧の腕には糸が巻きついている。
「凄いねこの糸、腕が何本もあるみたい」
糸は腕に巻かれただけでなく、鎧の関節に入り込み内側から鎧をばらしていく。
関節を破壊された鎧の腕から原石銃が落ちる。
「小娘が!」
怒りの声と共にグラドミスが肉片を身体に迸らせ、巨大な質量を持つ塊をレガリアに投げつけようとした。
「グァっ!?」
その瞬間、支部の方角から一発の火炎弾が撃ち出され、巨体となったグラドミスを穿つ。
(これは……ゾディアの……)
「え……何今の?マリオの最後の切り札?」
グラドミスの身体、鎧が剥げた左腕は焼け焦げ傷つきながらも未だ再生と増殖を続けていた。
「ググ……ウウ……ハ……」
呼吸が苦しくなったのか、兜を剥がしレガリアを睨む。
「……もう終わりよ、鎧たちを止めなさい」
苦しそうに息を吐くグラドミスの顔は白い化粧が完全に剥がれていた。
「……アンタ、本当はそんな顔だったんだ」
日中、化粧で隠していた顔、眼、鼻、口となる部分に輪郭はあるが、その大部分を赤黒い肉片が覆っておりおよそ人の顔には見えない。
彼の生まれつきの顔なのか、原石武器に侵食されてからこうなったのかはわからない
「ま……だ……まだだ……私……たちは……ま……だ……」
グラドミスが言葉を続けようとした時、彼の背後に立った人物が物言わずに彼の首を刎ねた。
「──っ!」
断頭された首から鮮血が迸り、辺りに血の煙を撒き散らした。
「…………っ……うぷ…………ゲェェェェ」
レガリアはあまりの光景に地面に突っ伏し嘔吐していた。
「……無事ですか、レガリア……ちゃん?」
グラドミスの首を切った本人が声をかけてくる。
いつもの杖──どうにも内側に刃を仕込んでいたそれと未だ不自然に蠢くグラドミスの首を持ちながら。




