まあ、生活もかかってるので文句言ってもしょうがないんですけどね:1
「なるっほど、概ね把握したわ」
ファルナを引き留め、おおよその現状を話した。
「あの、イストサインに来た騎士は貴女だけなんですか?」
「もう一人、ゾディアって奴が来てるわよ」
会話の最中にも周囲に傀儡が寄ってくる。
先程まで生きていた死体が傀儡によって貫かれ、体が影に覆われ物言わぬグラドミスの私兵になる。傀儡が人を殺し、死体が新たな傀儡を増やす、なんて冷酷な力なのだろう。
「駅に着いたら破壊音がするわ気味の悪い人形と鎧供が闊歩してるわでね、ややこしい話はゾディアに任せて私は街の様子を見に来たの」
ファルナが剣を一閃振るうと、傀儡供は地面に散らばる染みとなった。
「アンタ、支部に行くんでしょ?きっとアイツがそっちの方に向かってるから無事だって伝えておいて。それと」
ファルナが私の持つ原石銃を指差す。
「期待してるわよ、一緒にグラドミス討っちゃいましょ。じゃあ私はこの辺の住民助けてくるから。また後でね!」
颯爽とファルナが去っていく。
(支部、どうなってるのかな)
彼女が潰した自動鎧を見やった。
(少しずつ、動こうとしてる)
漆黒鉄で覆われた傀儡は完全には停止してはいなかった。
イストサイン騎兵隊支部の周囲は酷い有様だった。辺りの建物は崩れ、傀儡と自動鎧達が闊歩している。
(誰も残ってない、なんて事はないよね)
響くのは砲撃か爆薬の音、複数人が戦っている様子だ。
(支部は緊急時に避難先になってるはず……)
遠くから眺めた支部は避難先というより激戦区といった有様だった。
「次、来たぞ!」
「爆弾は鎧に向かって投げろ!怪物供には閃光弾を喰らわせるんだ!」
騎兵隊の隊員がバリケードを作り傀儡共を進ませないよう奮闘している。
大声で彼らに呼びかける。
「誰かそこに居るのか!?」
「レガリア、イストサイン騎兵隊員です!」
「レガリアか!こっちへ来い!」
土煙と血の匂いが立ち込める中、私は目的地へたどり着いた。




