毎日思うんですよ、職場に私なんて必要ないって。居てもいなくても変わらないって:5
煉瓦造りの石畳から作られた剣は材質も同じようだ。
ファルナは二本、三本と新たな剣を地面から抜き出し、漆黒鉄の自動鎧にぶつけていくが、どれも決定打にはならない。
「頑丈ねえ」
宙に舞う剣は彼女の意志で操作されているらしく、鎧の周囲を牽制するように舞っている。
煉瓦の剣を物ともしない鎧は斧を振り回し、周りの剣を全て砕く。
「じゃあこれはどう?」
ファルナが腰に下げた剣を抜く。現れたのは紅い刃を持つ長剣だ。
(原石武器だ)
直感が私に告げてくる。私の原石銃はあの剣に反応したのだろう。
鎧が斧をファルナに叩きつけようとした。
瞬間、彼女が剣を打ち払う。
鉄のぶつかり合う轟音の後、ファルナが相対していた自動鎧の腕がひん曲がっていた。
「なによ、腹立つくらい頑丈ね」
彼女の握る剣、先程まで紅く光っていたその刃は漆黒に染まっている。よく見ると腕に付けた籠手から漆黒鉄が刃へ広がっていた。
(周りから剣を作り出すってのがあの子の力、なのかな)
まだ自動鎧は止まっていない。
バランスを崩した身体を振り回し戦い続けている。
「はいはい、もうわかったわ」
ファルナは投げやりな様子でさらに手足を打擲する。鈍い音が辺りに響き、鎧は表層を潰され動けなくなった。
「ふー、弱いのに時間かかるわね。レガリアさん無事?」
(グラドミスの傀儡を倒したって事は、敵じゃないのかな)
私も少し警戒を解いた。
そのまま一仕事終えた様子でファルナが歩み寄って来た瞬間──
私たちの前にもう一体の鎧が降ってきた。同じ漆黒鉄の自動鎧だ。
「なっ──!」
「もう一体だね!」
自動鎧がファルナに剣を振り下ろす。再び剣戟が始まる。
私も原石銃を鎧に向けた。胴体に照準を合わせ、引き金を引く。
(弾は一発だけ──これで砕けて!)
轟音が響き、目の前には胴体から赤黒い液体が溢れる鎧の残骸が倒れている。
腕が灼けた、骨の髄まで焦げた気がする。
「ふわあああ!!すっごいわ今の!何なの?イストサインの新技術!?それとも貴方が編み出した必殺技?もう一回やって!」
(もう一回……?冗談じゃないわ!)
キンキン痛みに響く声でファルナに質問責めされた。応じようにも歯を食いしばっているので答えられない。
原石糸が腕を覆うと痛みが少し和らいだ。
「そういえばレガリアって名前……確か報告書で見たわ。じゃあアンタがグラドミスが狙ってるって子?そうだよね!」
「……そうです、合ってます」
「そっかそっか!じゃあ今すぐグラドミスの所行くよ!その間色々教えてよ!」
ファルナは今にも明後日の方向へ走り出して行きそうだ。
「ちょっと……待ってぇ……」
彼女こそ私たちが待ち侘びていた存在──中央から応援に来た騎士のようだった。




