毎日思うんですよ、職場に私なんて必要ないって。居てもいなくても変わらないって:3
イストサインの大通りを走り、騎兵隊支部へと向かう。
道中動くグラドミスの傀儡を見つけては腕から伸ばした原石糸で切り裂き動きを止める。
もう何体の傀儡を潰しただろうか、いくら潰しても潰し足りない気がする。
(……子供が死んでた)
逃げ遅れ、踏み潰されたのだろう。
(街中から、助けを求める声が聞こえる)
声を聞く度、痛ましい現場を見る度に足が遅くなる。だけど私は止まってなんていられないのだ。
道中逃げる住民達を襲っていた集団を糸で切り払った。
「ひっ……ああ、騎兵さん……?」
「騎兵隊に保護を求めてください。支部か屯所の場所はわかりますね?」
住民の何人かが頷く。できれば行動を共にしたいが人数が多い。
(せめて他に騎兵が居れば……)
焦る私の眼前に、鉄の鎧を着た一団がやってきた。
私の背で住民達が後ずさる。
「邪魔なのよ……!この忙しい時に……!」
普通の傀儡と違い、糸で薙ぐだけでは倒れず、光も避けない傀儡達。
焦りと怒りを感じるままに原石糸を振るう。
糸を飛ばし、鎧の手足を捥ぐが、一体を潰す間に二体、三体と徒党を組んで私を抑えにかかる。
「ああもうっ!クソッ!腐肉人形共っ!」
糸に指令を飛ばし、細い糸を爪に整形させ鎧を直接切り裂く。熊か何かになった気分だ。
七体は居た鎧達を潰し終え、住民達を先に行かせる。
その時、原石銃が私の頭に鼓動を響かせた。
(何か、危険なものが来る)
この感覚は今日グラドミスが私を襲いに来る時に感じた。原石銃が私に伝えてきた感覚だ。
(グラドミス……?)
警戒を促すように原石糸が素早く浮遊する。
(孤立した私を狙ってきたの?)
銃を構える。感覚は路地の方を指している。
(相手がグラドミスなら……)
手元には原石銃、路地から来るなら撃つチャンスは一瞬、弾は一発。
もう、泣いても笑っても最後のチャンスだ。
外さないよう、意識をその瞬間のみに集中させる。
その路地から、小さな人影が姿を現す。
『…………何よアンタ』
高い声が二つ響き合った。




