仕事辞めたい……:2
(困った……することが無い)
牢に入れられてわかったのはこの場所は果てしなく退屈であるというだけだ。
流石の原石の糸も鉄は裂けないらしくぼんやり漂っている。
頭の中で不安なことリストを作るのにも飽きたので寝ようかと思った時だった。
(足音……)
鉄の足音、鎧を着た誰かがやってくる。
身を固くしていると黒い鎧が歩いてきた。
(昼間の……?いや、手脚がちゃんと付いてる)
グラドミスが操っているのは間違いないであろうその自動鎧は
牢の扉を乱暴に開けた。
そのまま私を掴み引きずるように暗い廊下を進む。
(ここもグラドミスの隠れ家なのかな)
少なくとも昼に忍び込んだ建物ではない。
鎧が書斎のような部屋の床に私を下ろした。
「ご苦労」
灯りが一つ、机の上にしか無い部屋で椅子に腰掛けたグラドミスが鎧に声をかけた。
「……鎧しか話し相手がいないの?」
顔面に黒い槍が飛んできた。怪我は負わないが衝撃が頭と首にかかる、けっこう痛い。
グラドミスは虚な目で私を見ている。
「貴様の頑丈さは常軌を逸しているな」
立ち上がったグラドミスは病人怪我人を通り越し死ぬ寸前といった様子だった。
「死なない人間というのは……なんとも厄介だ」
服も顔も焼け焦げた後が残り、影で形作った右腕は今も崩れていっている。
「へぇ、原石銃はよく効いたみたいね」
机の上に置かれたもう一本の原石銃も漆黒鉄の外装が剥がれていた。漆黒鉄でさえ原石銃の反動を殺しきることは出来なかったようだ。




