仕事辞めたい……:1
声が聞こえる。
「もしもし、聞こえますか」
誰の声だろう、聞き覚えがある。
「聞こえていますね、レガリアさんと塔子さん、それと──」
聞き覚えのある声は私たちに呼びかけているようだ。
「お二方のようですね、時間がないので手短に。そちらで想定外の事態を観測しました」
イライラしているような早口の語り。
「先刻貴女を傷付けたのは回収を免れたこちらの遺物です。本来破壊しておくべき物が貴女の前に現れてしまった。お手数ですが貴女の世界に残った……原本……原石?を全て破壊していただきたい」
妙な夢だ。嫌に意識がはっきりしている。そろそろ起きたい。
声が少しずつ遠く、ぶつ切りになっていく。
「確認したところ残り……にじゅ……残っているようで……全て壊し……」
目が開いた、いやまだ夢だろうか。
「……て破壊していただけ……ば願いを……つ……」
(寒……)
夢と現実の境目、寒さが私の意識をはっきりさせる。
(ここ……どこ……)
地べたに座らされているようで膝が冷たい。
意識が明瞭となるにつれ、腹部から痛みが広がりだした。
痛みと同時に思い出す。
(そうだ私、グラドミスに撃たれて……)
そして今居場所が地下牢めいた場所であること、手足を鎖で繋がれている事に気付いた。
「おーーい!誰か居ないの!」
声を張り上げてみるが大して意味がある行動とは思えない。
(……お腹痛っ!)
グラドミスに原石銃で撃たれた場所から鈍い痛みが響いてくる。
どういう訳か傷は塞がっている。
(原石銃の糸……)
暗闇だがぼんやりと視認できる。腹部から原石の糸が出ていた。
(そういえば隊長の手当をしてたな)




